2022.7.8
EC・D2Cのダイレクトマーケティング担当者で「LTV向上」をミッションとしている人も多いのではないでしょうか。
LTVは昨今、数多くの企業で重要な指標だと位置づけられています。
この記事ではLTVに関する基礎知識や、重要視される理由を解説します。
LTV向上のためにはUGC活用が有効策の一つであり、実際に取り組んだ結果、ビジネスの成果が上がった企業事例も紹介します。
サンスターの健康食品事例をご紹介 ✓ F2転換率を5%アップさせたLTV向上施策とは?
✓ 広告出稿量400%伸長に貢献した新規顧客獲得施策とは?
5年間でどのようにオンライン売上を飛躍的に向上させたのか、ダイレクト施策を統括しているご担当者に詳しく語っていただきました!
「LTV(Life Time Value=ライフタイムバリュー=生涯顧客価値)」は、顧客が企業・ブランドに対してどれだけの利益をもたらすかを算出するための指標です。
あるブランドで一人の顧客が初回購入に至り、その後、ブランドに対する好意度・信頼度が高まって何度もリピート購入を行うことで、「LTV」がどんどん高くなっていきます。
つまりLTVとは企業・ブランドにとって、長期的な顧客維持を図る上で欠かせない指標だと言えます。
LTVは、大きく分けて以下二通りの方法で計算できます。
基本の計算式です。
(LTV) =(顧客数)×(平均単価)ー(コスト)
<例> |
---|
顧客 1,000人 平均単価 1,000円 コスト 20万 |
(LTV)= 1,000 × 1,000 − 200,000 = 800,000(※単月) |
(LTV) = (平均単価)÷(解約率)
<例> |
---|
総顧客数 1,000人 総売上 1,000円 平均単価 1万 解約率 10% |
(LTV)= 10,000 ÷ 0.1 = 100,000 |
なぜ昨今、多くの企業がLTVを重要指標だと位置付けるようになったのでしょうか。
EC・D2C参入企業が急増したことで、企業が出稿するWeb広告の総量自体が増加しました。
加えて近年のCookie規制の影響で、Web広告を介して潜在層にリーチし、新規顧客を獲得するハードルが上がっています。
例えばSNS広告(Instagram、Facebook等)のCPM(インプレッション単価)はここ数年、継続的に上昇しています。アライドアーキテクツの調査によると、2019〜2021年にかけて、CPMは平均で約1.6倍上昇したことが明らかになりました。
「広告を打てば集客できる」とは必ずしも言い切れない時代を迎え、企業のマーケティング施策は「脱・広告依存」を迫られている状況だと言えます。
そこで、「新規獲得よりも、リピーターを強化しよう」という発想からLTV向上を重視する企業が増えているのです。
前述のとおりEC・D2C参入企業は年々増加し、経済産業省の調査(※1)によると、2019〜2020年の1年間で、物販系ECだけでも20%伸長しています。ところが世の中の商取引全体で見れば、EC化率はわずか8%です。今後のEC市場においては、さらなる新規EC・D2C事業者の参入、そして、顧客獲得競争の激化が想定されます。
また、「1:5の法則」というマーケティング用語があります。これは、新規顧客を獲得する場合、既存顧客の5倍のコストが掛かることを意味しています。ハードルの高い新規獲得を目指すより、顧客をできるだけ長期間維持し、リピーター育成を図るほうがROIが高いマーケティング施策だ、と捉える企業が多くなっているのです。
加えて、現代社会においては日々、モノ・情報が溢れて生活者の目が肥え、「環境問題への配慮」「SDGs」など一つ一つの消費に意義を見出してブランドを選ぶ動きも広がりつつあります。消費者の価値観もまた、日々刻々と変化しているのです。
そのような中で、ブランドに対する生活者の好意・信頼を育み、今後も選ばれ続けるブランドであるためには、より価値の高い顧客コミュニケーションが重要になってきていると言えます。
それでは、LTVを向上させるマーケティング施策として、具体的にどのような打ち手が考えられるのでしょうか。
少なくとも一度は購買履歴があり、既にブランドとつながりを持っている人との間で、接点を強化する取り組みです。
<例>
顧客維持のためには、世の中に数ある競合ブランドの中から、「次もまた、あのブランドで買おう」と顧客に想起してもらい、選択してもらわなくてはなりません。「メルマガ」「SNS」「LINE」「アプリ」等の手段で日頃から顧客にアプローチすることで、ブランド想起の大きなきっかけになります。「購買」以外の顧客接点において、商品・サービスの活用ノウハウや、開発のバックグラウンドストーリーなどを継続的に見せることで、ブランドに対する理解・好意度が高まる側面もあります。
各顧客接点におけるコミュニケーション強化によって、リピート購入を促す(F2転換率を上げる)、クロスセルやアップセルを促す、サブスクなら契約期間を伸ばし解約率を下げていく戦略です。
また、「ポイントプログラム」「アンバサダープログラム」など、顧客がブランドと繋がるメリットを打ち出す企業も数多く見られます。単に企業側から一方的に情報発信するだけではなく、ユーザーとブランドが双方向につながる関係を構築し、ブランドロイヤルティを高めていく策です。
「カスタマージャーニー」とは直訳すると、「顧客の旅」といった意味合いです。
顧客の目線に立ち、「ブランド認知・接触」「比較検討・初回購入」から「リピート購入」までの各タッチポイントで取るべきアプローチを具体的に描き出す際に活用できます。
各タッチポイントで的を射たコミュニケーションができれば、快適な顧客体験が実現し、その結果として、より多くの顧客を維持することにつながります。
引用:コスメD2C企業DINETTE株式会社のカスタマージャーニー例
顧客にとって、いつでも心地よいコミュニケーションや購買体験を提供することもまた、顧客を維持し、LTVを高めていくための重要なポイントです。
<例>
ポイントは、顧客の中で「もう買わない」「解約したい」と思う理由を一つ一つ無くしていき、契約期間を伸ばし、解約率を下げる方向にサービスを改善していくことです。商品自体の顧客満足度が高くても「サービス周りの煩わしさ」「痒いところに手が届かない」といった小さなストレスが、ユーザー離脱の一因になります。
顧客体験の改善プロセスにおいては、顧客の「生の声」を活かし、徹底的にユーザー視点に沿う姿勢が不可欠です。顧客の行動・声と定量的・定性的に向き合うことで、企業側が全く想定しなかったような新たなインサイトが見つかるからです。
前項で、顧客の「生の声」を活かすことで、CX向上につながり、結果として顧客の維持・継続に影響すると述べました。
アライドアーキテクツが2022年5月に実施した調査では、「UGC活用で施策成果が向上した」と答えた企業が96%、そのうち、具体的な成果として「LTV向上」を挙げた企業が62.5%に上ることが明らかになっています。
出典:EC事業者の約85%が市場変化に伴いマーケ施策をアップデート、リーチ施策は「インフルエンサー活用」、リーチ後の施策は「UGC活用」に積極投資 | アライドアーキテクツ株式会社
なぜ、UGC活用がLTV向上に役立つのでしょうか?その理由を解説します。
昨今、LPやメルマガ等、販促フェーズにおいてUGCを活用している企業が数多く見られます。理由は、転換率向上につながるからです。
例えば、一人のユーザーとして何らかのECのLPや、メルマガを見ているシーンを想像してみてください。購入を検討している場面で、愛用者の声を詳しく読むことで、その商品を取り入れた生活についてリアリティを持って想像できるはずです。
つまり販促フェーズにおいてユーザーにUGCを見せることで、生活者目線での説得力が増し、自分ごと化できるため、購買行動に移行しやすくなるのです。
顧客の声を収集・蓄積し、定性的な分析を行うことによって、顧客を深く理解することにもつながります。
顧客がブランドに対して何を求めているのかを鮮明に把握できれば、商品・サービスの新規開発や改善の大きなヒントになります。
「顧客満足度を高める源泉」「さらに一歩先の打ち手を繰り出すための源泉」と位置づけ、UGC収集・活用を重視する企業が増えているのです。
ハブラシやハミガキなどのオーラルケア商品で有名なサンスターは、健康食品の通販事業も展開しています。通販事業における現在の主力商品は特定保健用食品「緑でサラナ」で、2017年頃からはオンライン販売も強化。「緑でサラナ」のオンライン売上は5年前と比較し飛躍的に成長しています。特に2020年以降はCPA主義からLTV思考に転換し、改めてCRMを見直すことでF2転換率の改善に注力しています。
<課題>
新聞広告を中心に通販売上を伸ばすと同時に、デジタル施策にも取り組んでいたが、ECは2016年ころまで苦戦。
<施策>
顧客に対して、どのタッチポイントでどんなコミュニケーションを行っているかを改めてすべて洗い出し、優先度が高いと考えた打ち手を実行。
画像出典:オンライン売上が飛躍的に成長。サンスターの健康食品通販「緑でサラナ」マーケティングの裏側
<結果>
定期顧客とのタッチポイントにUGCを活用したことで、定期顧客向けLPのCVRが120%改善。
UGC活用ツール「Letro」を使ってInstagramの投稿をそのまま埋め込む見せ方を取ったことで、より「生の声」であることが伝わり、信頼性を補完できるようになった。
LPで効果の良かったUGCは、メルマガやオフライン制作物にも利用するなど、さまざまなタッチポイントで活用。
有機野菜や自然食品などの定期宅配を展開する「大地を守る会」。
「お試し購入」した人が「定期コース」に転換するフェーズに課題がありました。
そこで、お試しセット到着後の顧客に向けた「定期コースへの引き上げ用LP」にUGCを掲載。
顧客の「定期コースを取り入れた生活」の自分ごと化を促進し、「引き上げ用LP」のCVRが1.15倍に改善しました。
<課題>
一度「お試し商品」を購入したユーザーを、もっと「定期宅配コース」へ引き上げたい。
<施策>
「食材の定期宅配の利用イメージを持てない」というユーザーの心理ハードルを下げるべき、と仮説を立案。
UGC活用ツール「Letro」を使って、新規お試しセット到着から14日以内の顧客に向けた定期コース引き上げ用のLPにUGCを掲載した。
画像出典:お試しセット購入後の「引き上げ用LP」にUGCを活用、CVR1.15倍に【大地を守る会/オイシックス・ラ・大地株式会社】
<施策>
UGC掲載後「定期コース引き上げ用LP」のCVRが1.15倍に改善。
UGCは「顧客体験を可視化」できる、なくてはならないコンテンツとなった。
事例で紹介した通り、近年「CPA主義」から「LTV思考」に転換を図る企業が増えています。CRM展開を見直して、F2転換率の改善に注力することが一つのポイントだと言えます。
業界のトップランナーたちがCRM戦略の中で重要視しているのが、UGCの「運用」です。
UGCの「運用」とは、収集・蓄積したクチコミやレビューを、販促物などにただ掲載することではありません。戦略的かつ継続的にUGC生成を促し、本当に効果の良いUGCを動的に出し分けするといった活用方法です。
以下のリンクにて、UGC運用について詳しく解説した無料のお役立ち資料をご用意しています。新規顧客の獲得が頭打ちになり、従来のマーケティング手法に限界を感じている方は、ぜひこちらの資料もご覧ください。ダウンロードは無料です。
記事公開日:2022.07.08