2022.7.15
いま、多くの企業が重要視している業務指標は「LTV」です。その理由は、長期的な顧客維持・継続を測るうえで欠かせない指標だからです。
しかし、「自社ビジネスの現状把握のために、LTVを算出したい」という時に、パッと計算式が浮かぶ人は、どれぐらいいるでしょうか?
この記事では、LTVを算出するうえでの基礎知識を解説します。あわせて、算出時に陥りやすい「落とし穴」や、サブスクビジネスの場合の考え方についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
サンスターの健康食品事例をご紹介 ✓ F2転換率を5%アップさせたLTV向上施策とは?
✓ 広告出稿量400%伸長に貢献した新規顧客獲得施策とは?
✓ どのようにして5年間でオンライン売上を飛躍的に向上させたのか?
サンスター株式会社でダイレクト施策を統括しているご担当者に詳しく解説いただきました。
LTV(Life Time Value=生涯顧客価値)は、いま多くの企業が重要視する指標で、「顧客が企業・ブランドに対してどれだけの価値をもたらしたか」を数値で表すものです。
近年のCookie規制の広がりや、CPM高騰を背景に、広告に頼った新規顧客獲得が年々難しくなっています。そこで新規獲得よりも「顧客の維持・継続」「リピート強化」に施策の軸足を置き、その進捗を表す指標としてLTVを重視する企業が増えているのです。
前項で「LTV=顧客が企業・ブランドに対してどれだけの価値をもたらしたかを数値で表したもの」と述べました。
ここで「一人の顧客によるリピート利用回数が、増えれば増えるほど良いのでは?」という考えが思い浮かぶかもしれませんが、KPIを把握する場合には、「顧客単価」×「購入回数」などと、単純化しすぎないようにしましょう。その理由を詳しく解説します。
LTVの計算式には諸説ありますが、算出のプロセスで「限界利益」を考慮に入れることをおすすめします。
(限界利益)=(売上高)ー(変動費) です。
売上を上げるためには、原価のほか、顧客を獲得・維持するためのさまざまなコストが掛かっているはずです。
<例>
顧客を獲得・維持するためのさまざまなコスト(=変動費)をすべて、売上から差し引いて考えなければ、一見してLTVが高くても、決して儲かっているとは言えないケースも出てきてしまいます。
よってLTVは長期的な「限界利益の累積」であると捉えるのがおすすめです。
この考え方を取ることで、たとえ顧客獲得の時点で施策のROIが悪くても、後々でLTVが良くなる場合も出てきます。
長期・継続的なLTVをあらかじめ概算できれば、「今回、広告施策に投資すべきか?」といった個別施策に対する判断材料にもなります。「最初の顧客獲得効率が悪くても、長期・継続的に見て、結果的にLTVが高くなる施策を投入した方が良いよね」といった判断ができるようになっていきます。
ここからはビジネスモデル別のLTV計算方法を紹介します。
基本の計算式です。
(LTV) =(顧客数)×(平均単価)ー(コスト)
<例> |
---|
顧客 1,000人 平均単価 1,000円 コスト 20万 |
(LTV)= 1,000 × 1,000 − 200,000 = 800,000(※単月) |
(LTV) = (平均単価)÷(解約率)
<例> |
---|
総顧客数 1,000人 総売上 1,000円 平均単価 1万 解約率 10% |
(LTV)= 10,000 ÷ 0.1 = 100,000 |
▼サブスクの平均単価
ARPU(Average Revenue per User、ユーザー1人あたりの平均収益)
= ( 全顧客(もしくは全アカウント)の総売上) ÷ (総顧客数)
▼解約率(チャーンレート)
解約率 =(単月あたりに解約した顧客数) ÷ (月の顧客全体数)
▼コスト面の考慮
CAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得単価)とLTVを照らし合わせて見てみましょう。少ないCACで高いLTVを生み出すことができれば利益が大きくなり、安定した事業を展開できていると言えます。
CAC = (新規顧客獲得のために費やした費用)÷ (その期間に獲得した総顧客数)
LTVを向上させるには、前出の計算式の中の「変数」を理解し、それぞれの変数を伸ばすために適切な施策を打っていくことが必要です。
状況に応じて、集客施策の強化を検討してみましょう。
広告施策を打つ場合には、CPAよりもLTVを最重要指標と位置づけ、その投資効率から実施の可否を検討しましょう。
あくまでLTVが伸びる前提で、顧客数を伸ばすことが大切です。闇雲に「顧客獲得数」だけを追いかけ、無理なキャンペーン施策投入等でコストを掛けすぎても、長期的に顧客全体の質が低下し、顧客当たりの平均単価が下がってしまう事態は避けるべきです。
ブランドと親和性のある潜在層から理解を得られる露出方法を考え、定着につながる策を厳選しましょう。
クロスセル・アップセルを促す、あるいは、継続利用の回数を増やす策も考えてみましょう。
例えば大枠で
といった取り組みが挙げられます。
「次もあのブランドを選ぼう」と顧客からの信頼度・好意度を高める工夫を地道に積み重ねていくことで、リピート利用につながります。
原価(例:原材料費、送料、梱包資材費など)を下げる策を考えてみましょう。
顧客の維持コスト(例:ポイント施策、ロイヤルティプログラムなど)はLTVと照らし合わせて費用対効果を考えていきましょう。
サブスクの場合は、解約率をできるだけ抑えることが重要です。
ブランドに対する好意度・信頼度を高めていくことが、解約率を抑え、顧客の継続・維持につながります。
前項で「顧客からの好意度・信頼度を高める取り組みも重要」と述べました。
しかし、このような「顧客との情緒的なつながり」とは、数字で定量的に表しづらい、質的な要素だと言えます。「企業努力によって改善することは、難しいのでは?」と捉える方もいるかもしれませんが、いくつかのやり方はあります。実際に企業が行った成功事例を基に、有効な対策を紹介します。
各顧客接点におけるコミュニケーションを見直すことでブランドへの好感・信頼度が高まり、結果的にクロスセル率が改善し、売上が上がった事例です。
<企業>
サプリメントや美容製品のD2Cブランド「natural tech(ナチュラルテック)」
<課題>
クロスセル率の改善
<施策>
ターゲット顧客(妊活期の女性)の購買プロセスに合わせて、最適なコミュニケーションを取り続ける。
既存顧客に対するコミュニケーション戦略を策定。妊活期の女性の「購入前」「購入後」「解約後」までの気持ちの変遷を細かく分類し、タイミングに合わせて同梱物の内容を変更。ターゲット顧客の気持ちの変化に寄り添って、各段階でのコミュニケーションを展開。
<結果>
クロスセル率が大幅に改善
UGC施策は、LTV向上につながります。
これは、アライドアーキテクツが2022年5月、EC事業に携わる企業のマーケティング部門の責任者101名を対象に実施した調査から得られた答えです。
UGCを活用する96%が施策成果向上を実感、そのうち「LTVの向上」を実感している割合は62.5%に上ります。
[出典]EC事業者の約85%が市場変化に伴いマーケ施策をアップデート、リーチ施策は「インフルエンサー活用」、リーチ後の施策は「UGC活用」に積極投資 | アライドアーキテクツ株式会社
UGCを販促物等の顧客接点に活用することで、企業側からの一方的なメッセージでは伝えきれない、商品・サービスの価値(第三者の客観的な評価)を表現することができ、訴求力が高まります。UGCを通して、ユーザーは「自分にとっての、少し先の未来」「その商品・サービスを継続して取り入れた生活」を具体的にイメージできるようになります。その結果、「自分にフィットする提案だ」と自分ごと化できて信頼を抱きやすくなり、結果的に購買行動に移行しやすくなります。
<企業>
サンスター
(歯ブラシ・歯磨き等オーラルケアのほか、通販で健康食品を販売)
<課題>
F2転換率を上げ、LTVを上げたい。
<施策>
メールコミュニケーションにUGCを活用。
F2転換を促すメールを見直した(件名/配信フォーマット/コンテンツ)。
コンテンツには、UGCを活用。
既存顧客向けと新規顧客向けでは、効果の良いUGCが異なることが分かった。
商品を「自分ごと化」してもらうために必要な情報は顧客のフェーズによって違うため、 UGCを出し分けて運用。
<結果>
F2転換率が上昇。
UGC活用とは、販促物にクチコミやレビューを掲載することだけではありません。
収集・蓄積した顧客の声を定性的に分析することで、商品・サービス改善の大きなヒントになります。
商品改良に向けた気づきを得るだけではなく、「顧客はサービスについて、本音ではどう感じているのか?(ストレスはないか?)」まで洞察することがポイントです。
「注文」「配送の受け取り」「返品」「問い合わせ」「休会」といったすべてのタッチポイントにおいて、顧客にとって、いつでも心地よくストレスのない体験を提供できているかどうか、ユーザー視点を交えて検証してみましょう。
CX改善もまた、好意度・信頼度を育むうえで大切な要因です。
▶VOC(Voice of Customer)とは?クチコミがクチコミを呼ぶ好循環につなげよう
▶【最新】カスタマーエクスペリエンスとは?今注目される理由・取り組み方をわかりやすく解説
LTVを向上させるためには、さまざまな要因を考慮しなければならないことを解説してきました。
昨今、顧客接点のマルチチャネル化など、コミュニケーションが非常に複雑化してきています。
そのような中で、コミュニケーションの「量(接触回数・頻度)」だけではなく、「質」も非常に大事です。
モノや情報が溢れ返る現代社会において、生活者は「本当に自分にとって意義がある」「自分に合う」「自分にとって価値が高い」情報を求め、素早く取捨選択をしているからです。
生活者から繰り返し、長きに渡って選ばれ続けるブランドになるために、「LTV思考」は今後ますます重要になっていくでしょう。
ぜひ、今後のマーケティング施策展開に役立てていってください。
「CPA主義→LTV思考に転換を図りたい」
「ファン化を促進し、事業を拡大するマーケティング設計をしたい」
今、このようなポイントに関心をお持ちの方に向けて、お役立ち資料をご用意しています。
ダウンロードは無料です。ぜひ、お気軽にご活用ください。
記事公開日:2022.07.15