ステルスマーケティング(ステマ)とは?NGの理由と事例を解説

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ステルスマーケティング(ステマ)とは?_ogp

いま、EC・D2C事業者を中心にUGC(クチコミ)施策を重要視する企業が増えています。アライドアーキテクツが2021年にマーケターを対象に実施した調査では、UGC活用の重要性を感じている企業の割合は93.8%という結果が明らかになりました。(※1)今後、UGC施策の取り組みに本腰を入れようとしているマーケターは多いのではないでしょうか。

その際に十分に注意しなくてはならないのが「ステルスマーケティング(ステマ)」の問題です。

「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、一般の生活者を装って宣伝と気付かれないように、商品・サービスを宣伝することです。これは顧客をあざむき、EC・D2C業界全体のイメージ悪化にもつながりかねない行為だと言えます。

今まで日本には明確な法規制がありませんでしたが、消費者庁は2023年10月1日から正式に「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を景品表示法上の不当景品類及び不当表示防止として取り締まることを告示しました。

この規制を受けて、「UGC施策において、どこまでがOKで、どこからがNGライン?」を理解したいと思っている担当者も多いはずです。

そこで本記事では、「ステルスマーケティング(ステマ)」とは何かを改めて示すとともに、してはいけない行為とその理由、NG事例を具体的に挙げて解説します。

(※1)アライドアーキテクツ株式会社|「企業のUGC活用における実態調査 2021」

ステルスマーケティング(ステマ)とは?

「ステルスマーケティング(ステマ)」とは、第三者的な立場をよそおって、宣伝と気付かれないように特定の企業・製品について宣伝したり、商品に関するクチコミの発信・伝播を図る行為のことです。

「ステルス=Stealth」という言葉には、「隠れる、こっそりする、隠密」という意味があります。

例えば、SNS投稿でインフルエンサーなどの第三者に報酬を支払って商品を紹介してもらう場合に、「#PR」と付けずに投稿することは、ステルスマーケティングに該当します。

企業側からPRの対価を提供されているにも関わらず、中立的な第三者のような体裁をとって宣伝行為を行うステルスマーケティングの問題は、繰り返し発生している状況です。

ステルスマーケティングイメージ図
ステルスマーケティングの概念図

ステルスマーケティングは違法?やってはいけない理由

ステルスマーケティングとは、違法行為なのでしょうか?企業がやってはいけない理由について、詳しく解説します。

ステルスマーケティングをやってはいけない理由

①生活者をあざむく行為だから

やってはいけない理由の一点目は、生活者をあざむく行為だからです。

アライドアーキテクツが2022年に1,100名の生活者を対象に実施した調査では「商品やサービスを購入する際に、クチコミやレビュー(UGC)を信頼しますか?」との問いに対し64.6%の方が「UGCを信頼する」と回答しました。(※2

(※2)アライドアーキテクツ株式会社|「生活者のUGCに対する意識調査2022」

新たな商品・サービス購買の参考材料として「クチコミ」を重視する人は6割以上にのぼります。クチコミやレビューとは本来、生活者にとって「第三者の立場から、良い点も悪い点も正直に述べられているから、信頼できて、購買の参考になる」という意味があります。

しかし、クチコミが実は「購入者による正直な感想」ではなく、「正直な感想の体裁に見せながらも、実は裏でPRの対価を支払って制作してもらった広告文だった」と、何かのきっかけで発覚してしまったとしたら、生活者はどう感じるでしょうか?

生活者は「購入者のレビューやクチコミに見せかけて、実は企業側にとって有利な情報だけを切り取って述べている宣伝だったんだな」と、裏切られたような気持ちになるのではないでしょうか。

ステルスマーケティングは、純粋なクチコミや評判を参考にして商品を検討している生活者を裏切る行為だとも言えます。

②自社だけでなく、Web広告や通販業界全体でイメージが悪化するから

二点目は、自社だけでなくWeb広告や通販業界全体のイメージ悪化につながるからです。

ステルスマーケティングによって生活者をあざむいた結果、生活者から「この通販サイトのクチコミ、実は広告文かもしれない。この企業に限らず、そもそも通販サイトのレビュー欄自体が全体的に信用できないな」といった疑念を持たれてしまう可能性も。

「通販サイトのクチコミって、いまいち信用できない……」といった疑念が一度生活者の中に芽生えてしまうと、どこの通販会社のサイトを見ても「この会社もそうかもしれない」と同じような疑念を招くことになり、EC・D2C業界全体としてイメージダウンが懸念されます。

一度このような状況に陥ると、企業側がコツコツとUGC施策に取り組んでも、生活者からの信用を得られなくなってしまうでしょう。

ステルスマーケティングは違法?

ステルスマーケティングは、違法行為に該当するのでしょうか?

諸外国においては、かねてよりステルスマーケティングに対する法規制が存在していましたが、日本においては法規制の整備が不完全でした。

しかし、昨今の世の中の急速なデジタル化を背景にステマの問題がより顕著になってきていることから、消費者庁は2022年より「ステルスマーケティングに関する検討会」をスタート。

関係者へのヒアリングや実態調査を行いながら、複数回に渡って「ステマを法規制するべきか」を含めた議論を重ねた結果、2023年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を景品表示法上の不当景品類及び不当表示防止として取り締まることを告示しました。

今後、10月1日以降に規制で定められている方法に従った記載を行わない場合は、景表法の違反に該当するため注意が必要です。

参考:令和5年内閣府告示第19号

ステルスマーケティングとみなされる対象と、実際に起きたNG事例

ここからは、ステルスマーケティングとして過去に問題になった事例について解説します。

過去の問題例①一般の生活者になりすまして、クチコミや記事を書く

まずは「一般の生活者になりすまして、クチコミや記事を書いたこと」が問題となった事例です。

●食べログ

飲食店のクチコミやランキングを掲載するサイト「食べログ」は、2012年に「やらせ業者」がランキングを不当に操作していたことが明らかになり、「ステマ騒動」を招きました。

一般の生活者のクチコミ投稿をよそおいながらも、実は業者が報酬と引き換えに、特定の店舗に対する好意的なクチコミを投稿し、不当にランキングを釣り上げていたことが発覚。

対価と引き換えに、特定の店舗に対する好意的な書き込みを行うことは「宣伝行為」に当てはまります。

レビュー欄の評価内容を参考にする一般の生活者をあざむいていた、という点が問題となりました。

[参考]
「ステマ」法規制へ 消費者庁、広告主を行政処分 - 日本経済新聞
「ステマ」法規制へ、暗躍する「食べログブローカー」の実態

過去の問題例②芸能人やブロガー、インフルエンサーに宣伝を依頼し、広告主との関係性を明示しない

「芸能人やブロガー、インフルエンサーに宣伝を依頼し、『広告』『PR』と明示しないケース」もステルスマーケティングに該当します。

●ペニーオークション

2012年、オークションサイト「ペニーオークション」は、複数の芸能人に報酬を支払って、ブログでの宣伝を依頼していました。

ところが「広告」「PR」といった明示が無く、ブログ読者から見ると、「宣伝」と気づかないまま、宣伝行為がなされている状態が発生していました。

後に「実は、対価と引き換えの宣伝行為だった」ということが明らかになると、ステルスマーケティング(ステマ)に加担した芸能人、そしてオークションサイトは世間から批判を浴び、「ステマ騒動」に発展しました。

[参考]
ニュース「ペニオク詐欺の被告に判決、ステマは今後どうなるか」

今後、ステマ規制の対象となるか否かの線引きとは

では、今後具体的にどのような場合がステマ対象となるのでしょうか?

消費者庁は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準を公開しており、そこにはこのように記されています。

  • ・告示の対象となるのは、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に該当することが前提となる。
  • ・事業者が第三者をして行わせる表示が事業者の表示となるのは、事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合である。
  • ・事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば、事業者の表示には当たらない。

簡単にまとめると、「事業者が表示内容の決定に関与したと認められるもの=ステマ規制の対象になる」、そして「事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき第三者の自主的な意思による表示と認められるもの=ステマ規制の対象とならない」と言えます。

つまり、著名人やインフルエンサー、モニター体験者などによる自主的な感想の投稿で、広告主が投稿内容の決定に関与していない場合は、規制対象ではありません。

ただし、ギフティング施策であったとしても、依頼の仕方によっては「広告主が表示内容の決定に関与した」とみなされる場合がありますので、消費者庁が公表している運用基準を参照しながら慎重に判断することが必要です。

なお、広告主が投稿内容の決定に関与している場合であっても、関係性を明示(「広告」「宣伝」「A社から商品の提供を受けて投稿している」など明記する)すればOKとされています。

詳しい内容は、具体例と共に、消費者庁の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準に記載されていますので、こちらを確認してください。

ステルスマーケティングはなぜ繰り返されてしまうのか?

これまでに複数の「ステマ騒動」「炎上」事例が発生している中、なぜステルスマーケティングは繰り返されてしまうのでしょうか?

①「ステルスマーケティング」と認識せずやってしまう場合があるから

一つ目の理由は、ステルスマーケティングと認識せずやってしまう場合があるからです。

例えば、「クチコミ施策に取り組みたい」と考えている企業が、ステルスマーケティングについてよく理解しないまま、インフルエンサーなどにPR投稿を依頼している場合です。企業側が投稿内容の決定に関与している案件にもかかわらず、企業との関係性を明示しないままクチコミ投稿を行うことは、ステルスマーケティングに該当します。

ただし、インフルエンサー施策への取り組みそのものは、まったく非難されることではありません。

取り組みの際には、企業側も、企画に協力するインフルエンサー側も、お互いに「ステルスマーケティングに該当するNGライン」を明確に理解し、ルールを厳守して施策を実行することが不可欠です。

②リスクを分かりつつやってしまう企業もいるから

二つ目は、「ステマについて理解していながらも、手軽に取り組める施策としてやってしまう事例」が存在することです。

例えば「食べログ」の過去のステマ騒動では、頻繁にクチコミ投稿を行っていた一般の会社員の元に、「1万円の報酬を払うから、クチコミを書いて」などと「飲食コンサル業者」から打診があったと報じられています。

飲食店側から見れば、大規模な広告施策と比較してそれほど高額なコストを伴うこと無く、手軽にレビューサイト上で自店舗に関するクチコミを広げ、ランキング上位を狙える取り組みだと言えます。そこに「飲食コンサル」といった支援業者が漬け込んでいる構図になっており、飲食店のモラルの問題と、そこに漬け込む支援業者の問題の両面があると言えそうです。

しかし、生活者をあざむいていることが明るみに出て、世間の批判を集め、いわゆる「炎上」状態に陥ってしまうと、自社の評判低下のみならず、業界全体でのイメージダウンにもつながります。

SNSなどで生活者から支持され、拡散していく情報とは、本来「質を伴っていること」が重要だという大前提を忘れないようにしましょう。

クチコミ施策運用時は、法規制の理解が必須

この記事では、具体的にどんなケースがステルスマーケティング(ステマ)に該当するのか、やってはいけないNGラインについて事例を挙げて解説しました。

ステルスマーケティング(ステマ)に対して十分な理解が必要である一方で、今やUGC施策はEC・D2C事業者にとって、購買促進に欠かせない要素になっています。

生活者の正直なクチコミであれば、次に購入を検討する人にとって、良質な商品を自ら選び取るための良い判断材料となります。企業側からの一方的な訴求だけではなく、第三者の正直な評価を確認することは、生活者の多くが購買時の重要な判断材料だと捉えています。

景品表示法などの各種法規制にも留意しながら、UGCを活用することは企業にとって欠かせない取り組みになっていると言えます。

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