2021.7.21
ダイレクトマーケティングとは、主にEC通販で用いられているマーケティング手法で、近年はこの手法を活用し売上を伸ばすEC通販企業が増えてきました。一方で、ダイレクトマーケティングという言葉が一人歩きをし、その正確な定義や意味を把握しないまま利用されている場面も散見されます。
そこで今回は、WEBマーケティングご担当者様に向けて、ダイレクトマーケティングの定義や手法からなぜ近年多くの企業が用いているのか、そのメリットをわかりやすく解説します。
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アメリカのDMA(Direct Marketing Association)は、ダイレクトマーケティングの定義を「ひとつまたは複数の広告メディアを使い、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成できる双方向のマーケティングである」としています。
またダイレクトマーケティングの第一人者である、アメリカのレスター・ワンダーマンが、ダイレクトマーケティングの中心思想を「主役は製品ではなく、消費者でなければならない」と紹介したのは、半世紀以上前のことです。(※2)
これは具体的にはどういったことなのでしょうか?次にこの内容をもう少しわかりやすく説明してみます。
DMAによるダイレクトマーケティングの定義、レスター・ワンダーマンの思想をかみくだくと以下のように整理することができます。
まず前提として、ダイレクトマーケティングは顧客を施策の中心におき、
というマーケティング手法です。
まずダイレクトマーケティングでは直販と呼ばれる販売方式をとります。これは、企業が自ら企画、生産した商品を卸・小売業を挟まず、生活者に直接販売する販売方法を指します。
中間流通を介さないため、企業側は生活者を特定し、その個人に対して双方向(1対1)のコミュニケーションを取ることが可能です。
その特徴をより理解するには、ダイレクトマーケティングの対義語であるマスマーケティングという手法を見てみるとよいでしょう。マスマーケティングとは、マスメディアを通じて不特定多数の消費者に対して画一的なマーケティング活動を行うことを指します。
マスマーケティングと対比して考えると、ダイレクトマーケティングの特徴がはっきり見えてきます。
特徴①の通り、ダイレクトマーケティングは中間流通を挟まないマーケティング手法となるため、自社で広告や各種メディアを活用したコミニュケーション戦略を立てる必要があります。具体的にはSNS、DM(ダイレクトメール)、インターネット広告などを活用してコミュニケーションを行います。
また、ダイレクトマーケティングにおいては、ただこうした広告やメディアを利用するだけでなく、そのコミュニケーションを介して生活者に特定の行動を働きかけることも特徴です。具体的には、「商品購入」「問い合わせ」、「メルマガ登録」「資料ダウンロード」、SNSで言えば「アカウントのフォロー」なども含まれます。
そして、ダイレクトマーケティングでは、生活者に働きかけた行動の成果を計測し、そのデータを活用することが求められます。データ活用には、販売面でのデータ活用と戦略面でのデータ活用という2つの活用方法があります。(※3)
販売面でのデータ活用では、コミュニケーションを行う生活者ひとりひとりの評価します。具体的にはその生活者から望む行動が発生したか、コミュニケーションの内容や、行動までの過程などのデータを見ていく活用方法です。その結果によって、ひとりひとりにとるべきコミュニケーションの改善などを行うことができます。
一方、戦略面でのデータ活用では、顧客リスト全体を見ていきます。顧客はは新規顧客や一般顧客、優良顧客、離脱顧客など状態に合わせて分類することができます。これらの顧客リスト全体をみて、新規顧客から一般顧客、一般顧客から優良顧客へうまく成長させられているか、そのうち離脱顧客はどのくらい発生しているかなどを分析し、全体の戦略策定に生かすものです。
こうしたダイレクトマーケティングにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
1つ目は費用対効果を高めやすいこと。ダイレクトマーケティングは、コミュニケーションを行うターゲットを絞って情報発信を行います。そのためターゲットに合わせた広告媒体の選定や訴求内容の設計を行うことができるため、少ない投資で高い効果が期待できます。
ダイレクトマーケティングでは顧客の反応が数値化できることが特徴と前述しましたが、そのデータをもとにしてPDCAを回しその施策改善を行い、施策効果を高めていくことができるのもメリットです。
同時に、改善だけでなく計測したデータは、新商品の開発、キャンペーンの企画など、新たな施策に生かしていくことも可能です。
ダイレクトマーケティングには、このようなメリットがあるため少ない初期投資で事業成長に繋げやすく、近年この手法を取り入れる企業が増えているのです。
メリットの多いダイレクトマーケティングですが、一方でデメリットもあります。
ダイレクトマーケティングはデータを活用しPDCAを回すことができるというメリットがありますが、裏を返すと検証のためのデータが必要であり、施策の最適解を見つけるために何度もPDCAを回す必要があります。そのため、継続性を持って粘り強い検証を行う姿勢が必要で、効果がでるのに時間がかかります。
ダイレクトマーケティングの肝となる生活者とのコミュニケーション。ここでは代表的な手法を4つご紹介します。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用して行うマーケティング施策を総称してSNSマーケティングと呼びます。具体的には、以下の4つの施策を行うことができます。
・公式アカウント運用施策
ーSNS上で自社の公式アカウントを開設し、運用する施策
・SNS広告施策
ーSNSでユーザーが閲覧するタイムラインなどに広告を出稿する施策
・SNSキャンペーン
ーSNS上でユーザーに特定のアクションを促してコミュニケーションをはかる施策
・UGC活用施策
ーユーザーがSNSに投稿した自社のサービスや商品に関する画像やコメントを活用する施策
インターネット環境の改善や、スマートフォンの普及により、SNSの利用率は年々増加。企業にとって、SNSは生活者と直接つながることができるチャネルの1つとしてその重要性が増しています。生活者と直接つながるダイレクトマーケティング行う企業にとっては、極めて重要度の高い手法といえるでしょう。
インターネット広告とは、文字通りインターネット上(WEBサイトやスマートフォンアプリ)に掲載される広告のことで、低コストでターゲットを絞った配信が可能です。具体的な特徴としては以下2点が挙げられます。
・費用対効果が高い
ーセグメント項目をもとにターゲティングして広告を配信することで、より広告費用効果を高めることができる
・効果測定が可能
ー広告のインプレッション数(表示回数)、クリック数、クリックした後の成果数(CV)などが計測ができる
インターネット広告には様々な媒体があり、トレンドは常に変化しています。アライドアーキテクツが2020年10月、ダイレクトマーケティング担当者に対して行なったアンケートでは、近年獲得効率の良い媒体として、アフィリエイト広告・Instagram広告・YouTube広告・LINE広告などが挙げられています。(※4)
インターネット広告を利用する際には、こうしたトレンドに柔軟に対応していくことが求められます。
引用:ダイレクトマーケ担当者に聞いた! EC通販現場の”裏バナシ” ~新規顧客獲得向け広告・LPのリアル~
生活者にEメールを配信して情報を届ける方法。具体的には、メールマガジン、ステップメール、セグメントメールなどが挙げられます。
Eメールマーケティングは、比較的低コストで導入・運用ができます。一方で、配信には生活者のメールアドレスを取得する必要があります。そのため見込顧客・既存顧客に対してのコミュニケーション手法になります。
また、配信回数が多いと悪印象をもたれやすいなどの注意すべき点もあります。
テレマーケティングとは、電話を利用し、生活者に対して、商品・サービスの販売促進を行う手法のことです。テレマーケティングには、生活者から連絡を受けるインバウンド方式・顧客リストに対して販売促進を行うアウトバウンド方式があります。
続いて実際にダイレクトマーケティングによって成功している企業事例を2つご紹介します。
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションとし、「栄養のインフラ」を目指す「BASE FOOD」。同社が展開する「完全栄養の主食のサブスクリプション」は、忙しい現代人のニーズにマッチし、販売開始から約3年で、完全栄養の麺「BASE NOODLE(ベースヌードル)」と、完全栄養のパン「BASE BREAD(ベースブレッド)」の日本国内累計販売食数が100万食を突破しています。(2019年9月末時点)
「BASE FOOD」では、マーケティングにおいてSNSを積極的に活用し、同時に既存顧客で構成された独自コミュニティ「ベースフードラボ」の運用も行なっています。これらの施策を通じ、生活者と対話を繰り返し、対話の中で生まれた生活者の声を元に商品開発をなどを行うことなどによって事業の成長につなげています。(※5)
引用:https://phoebebeautyup.com/
ビューティー特化型動画メディア「DINETTE」を運営している株式会社DINETTE。同社では、メディア運用を通して得られたメディアユーザーの声を参考に、2019年、コスメブランド「PHOBE BEAUTY UP」をローンチしました。
「DINETTE」および、「PHOBE BEAUTY UP」のマーケティングの鍵を握るのがSNS(Instagram、Twitter)を通じたコミュニケーション。同社のSNSアカウントでは、フォロワーに対して質問を呼びかけ、その声を傾聴したり、フォロワーから寄せられたDMなどにも丁寧に返信をしています。
こうしたコミュニケーションは、メディアやブランドと、生活者との距離を縮め、さらに愛着や好意度を育てることができます。DINETTE社は、このようにして得られたメディアやブランドの「ファン」を大切にし、ファンの声を商品開発に取り入れたり、ファン自ら商品について投稿してもらうことなどに成功しています。
PHOEBE BEAUTY UPとDINETTEのInstagramアカウントでは、ストーリーズの質問機能を利用してフォロワーから質問や疑問を募集。寄せられた質問や疑問には丁寧に回答し、フォロワーの「美容の相談ができる相手」となることに成功している。
ダイレクトマーケティングは、顧客と直接的な接点をもってコミュニケーションを行う施策です。そのため顧客視点をもたずに企業の都合によるメッセージ訴求を行えば、顧客に嫌悪感を与え、かえって企業やブランドについて、マイナスイメージをもたれることにもなりかねません。
同時に、ダイレクトマーケティングでは、常にその成果を数値として可視化して施策を運用していきます。数値の分析は大切ですが、数値のみにとらわれて、「顧客がこのコミュニケーションを取られたらどう思うだろうか」という視点が欠ければ、思うような成果にはつながっていきません。
ダイレクトマーケティングでは、コミュニケーションの受け手である顧客視点を持ち続けて施策設計を行うことが大切です。
期待する成果(コンバージョン)につながった一点だけでなく、その過程を細かく分析して、施策への貢献度を測る「アトリビューション」という考え方が注目を集めています。
ダイレクトマーケティングでは直接顧客とつながることで、顧客軸でコミュニケーションによる態度変容を見ていくことも可能です。1回の施策で成果を出そうとせず、顧客のフェーズに応じて長期的な視野で施策設計を行うこともポイントです。
事業をスケールさせるためには新規顧客を常に獲得していくことは重要ですが、同時に、一度獲得した顧客が繰り返し商品やサービスを利用してくれたり、他の商品やサービスを利用してくれるような働きかけを行うこともまた重要です。特に昨今はインターネット広告における新規顧客獲得のためのCPCが高騰しているという傾向もあるため、特にこうした顧客の「LTV」を高めていく施策の重要性が増しています。
また、ベースフード社やDINETTE社の事例には、両社が自社のファンの声を生かして商品開発を行なったり、ファンからの情報発信によって効果的な「クチコミ」を生み出しているという共通項があります。これからのダイレクトマーケティングでは、こうした「ファンの声」を積極的に取り入れる姿勢もまた求められていくでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回は、ダイレクトマーケティングの定義やメリットデメリット、成功事例をご紹介してきました。
生活者のメディア接触環境や、消費購買行動に変化が起こるなかで、ダイレクトマーケティングに取り組む企業が増えています。一方で、これまでますマーケティングを中心にマーケティングを行なってきた企業が、そのマインドセットのまま施策を行ってしまえば、期待するような成果につなげていくことは難しいでしょう。
ダイレクトマーケティングで成功するためには、まずダイレクトマーケティングの思想を理解し、「顧客と直接つながる」というその特徴を最大限にいかした施策設計を行なっていく姿勢が求められるのです。
(※1)Reference for Business|DIRECT MARKETING
(※2)「売る広告」への挑戦―ダイレクトマーケティングの父・ワンダーマン自伝 単行本 – 1998/3/1
(※3)マーケティング分野における分析システム|日本ユニシス株式会社
(※4)ダイレクトマーケ担当者に聞いた! EC通販現場の”裏バナシ” ~新規顧客獲得向け広告・LPのリアル~|SMMLab
(※5)【施策の中心にはいつもお客様の声】BASE FOODから学ぶ、顧客との繋がりを生かした「運用型マーケティング」のススメ|SMMLab
(※6)D2Cは原価度外視の初期投資がカギ。DINETTE尾崎氏が語る新しいコスメブランドの形とは?|SMMLab
記事公開日:2021.07.21