2023.6.13
この度、2023年9月に、W2株式会社が提供するECプラットフォームと運用型UGCツール「Letro」がAPI連携する予定です。それにより、購入者からのUGCを自動的に収集して掲載から改善まで一気通貫で実施することで、EC売上向上をより効率的に支援できるようになります。
そこで今回は、W2株式会社 代表取締役CEOの山田大樹氏と、アライドアーキテクツ株式会社 代表取締役社長 CEOの中村壮秀が対談。両社がAPI連携することで目指す世界観、そして「これからのEC成功に欠かせない要素とは何か」について語りました。
中村:今日は対談できることを大変楽しみにしてきました。W2さんも弊社アライドアーキテクツも2005年に創業し、この約20年間変化の激しいEC市場でソリューションを提供してきたという共通項があると思っています。まずは改めて、W2さんの事業概要を教えていただけますか?
山田:W2株式会社は、国内市場に最適化されたオリジナルのECプラットフォームを提供しています。社員の70%がエンジニアで、100%内製で開発しています。その強みを活かし、売場構築に必要な多彩な標準機能から、サイト分析や広告分析、SEOをはじめとしたマーケティング機能、高度なリピーター施策を実現できるCRM機能まで、1,000以上の多彩な機能を揃えていることが特徴です。
多くの機能や業種に合わせたサービスラインナップを揃えることで、多数の商品点数を取り扱う総合ECサイトから、健康食品・美容・食品などの単品通販サイトまで幅広い業種・規模の企業様にご利用いただいており、2005年創業時から現在までの累計サイト導入数は750超になりました。現在は、OMO/オムニチャネル対応ECプラットフォーム「W2 Unified」とD2C/リピート通販向けECプラットフォーム「W2 Repeat」を展開しています。
月額数万円でご利用いただけるSaaS型のプランから、顧客ごとに独自カスタマイズをするエンタープライズ向けプランまでご提供しており、お客様の実現したいECサイト構築を支援しています。
中村:山田さんがもともとW2を創業したきっかけは何だったのでしょうか?
山田:大学生の頃、ITバブルに沸く中で、「ITでこれからの時代が変わる」と感じていました。しかし、この頃のIT業界はまだまだ「システム開発は高くて遅い」と絶えず不満を抱えている状態で…。最低限のコストで最大の機能を求めるお客様の無理難題に対し、開発側はリスクヘッジのための書類づくりばかりに時間を費やし、本来の開発に時間を割けないという負のスパイラルが生まれており、まるでITとお客様が戦っているようでした。
W2は、EC業界においてそんな課題を解決するためにスタートしました。テクノロジーで新たな未来を切り開くことで、お客様とともに私たちも成長し、システムを利用する消費者にも喜んでもらえる世界。そんな「Win-Win」の関係性を創りたいという想いが、社名の由来にもなっています。
W2株式会社 代表取締役CEO 山田大樹氏
上智大学入学と同時に起業、国内外に複数の会社・事業を立ち上げ経営に携わる。2005年にW2株式会社を創業し、現在同社 代表取締役社長 CEO。NPO法人78会の創設メンバーの1人。EO Japan所属。2015年グロービス経営大学院MBA修了、2016年アルムナイアワード受賞。
中村:実は、私は2005年のアライドアーキテクツ創業前に、ゴルフ用品のECサイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」の立ち上げをやっていたんです。当時はまだまだECの黎明期で、カートシステムもほぼスクラッチで一から作るような状態でしたから、山田さんがおっしゃる状況はよく分かります。当時から比較すると、ECの分野はこの20年で本当に変わりましたよね。
山田:そうですね。我々が提供しているようなECサイト構築の仕組みはもちろん、EC成功に必要な条件も大きく変化しました。
ECサイトさえ用意しておけば誰かが来て買ってくれる時代もありましたが、ECに参入する企業が増え、自社サイト、楽天、Amazonなど販売のチャネルも増え、マーケティングの手法も増えて…。今は、ただサイトを用意しておくだけでは買いに来てもらうことができません。個人の購買行動も大きく変化しており、ECサイトやリアル店舗を行き来したり、広告だけでなくSNSなどを通じて色んなルートから買い回りしたりする流れがあります。この時流を捉えないとEC成功に繋げることは難しくなっています。
中村:私たちは現在、運用型UGCツール「Letro」をはじめとしたSaaS型マーケティングプロダクトを複数展開し企業様のマーケティングを支援していますが、実は、山田さんがおっしゃった「個人の購買行動の変化」がまさに、私がアライドアーキテクツを創業した原点につながってくるんです。
2003年から2004年頃、ゴルフダイジェスト・オンラインで日々ECショップの運営に向き合う中で、ある時からファンのクチコミで物が売れていく様子を目にするようになりました。それが私の「ソーシャルメディア」との出会いで、その可能性に大きな衝撃を受けたんです。それまでは情報の受け手だった一般の生活者が、発信する側に回ることでこんなに力になるのかと。
お客様がファンとなり、その方たちの発信を味方に付ければ広告に依存しない体制が作れる。さらにファンとインタラクティブに交流できれば、商品展開やマーケティングの失敗も少なく無駄のない社会が作れるのではないかと考え、「UGC(※)」に着目し始めました。
(※)UGC(User Generated Contents)とは企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを言います。 最近はInstagramやTwitterなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されています。
アライドアーキテクツ株式会社 代表取締役社長 CEO 中村壮秀
住友商事株式会社、株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン創業参画、上場を経て、アライドアーキテクツ株式会社を創業。2013年東証マザーズ上場、現在同社 代表取締役社長 CEO。慶大理工卒。
中村:「オフラインとオンラインを超えた購買行動」「広告だけでなくSNSを含めた様々な媒体をまたいだ情報収集」などの変化に、W2のプラットフォームではどのように対応していますか?
山田:我々W2が掲げている「これからのEC成功」のキーワードは「ユニファイドコマース」です。どこで買うか?をユーザーに感じさせない、シームレスな購買体験を意味しています。例えば、EC/リアル店舗を問わずどのお店で買っても当たり前に共通のポイントを使えるようにしたいですし、つい先ほどリアル店舗で商品を買ったのに「これ買いませんか?」とウェブで広告が出てくるような体験は望ましくないですよね。
ECプラットフォームとしては、これらの顧客接点を全てシームレスにつないで、どこでも便利に買えるし、どこでもスムーズにコミュニケーションが取れる世界を作っていきたいと考えています。先ほど中村さんがキーワードに挙げていた「ファンを作る」「UGCを生み出す」という意味でも、こうしたシームレスな購買体験は欠かせないものになるはずです。
中村:同意です。「商品が良かった」はもちろん、「カスタマーサポートの対応が良かった」「商品が届いたときの体験にワオ!があった」、そして「スムーズに買い物ができた」など全ての要素が重なり、お客様が「買い物体験そのもの」に満足するからこそUGCが発生するんですよね。
物や情報が溢れる時代において、企業がその商品の機能価値を訴求するだけでは他社と差別化することが難しくなります。これからのEC成功に欠かせない要素は、「ここで買いたい」を訴求できて「好き」を醸成できる情緒的価値であり、UGCはまさにそうした情緒的価値をファンの言葉で伝えてもらえるものだと思っています。
中村:今回、W2さんのECプラットフォームと運用型UGCツール「Letro」がAPI連携します(※)。
(※)W2と運用型UGCツール「Letro」のAPI連携とは?
W2のECプラットフォーム利用企業は、購入者に対してUGC投稿を促すフローを自動化することができる(商品やサービス購入のタイミングでUGCの投稿を促すメッセージが自動で送信されるため、購入が発生するたびに継続的にUGCが生成される機会を創出できる)。さらに、収集されたUGCはLetroに同期され、サイト上への表示から成果の計測、最適化まで一気通貫で行うことが可能となる。
シームレスな購買体験から自然な流れでUGCの生成を促し、さらにそれを新たな顧客獲得に活用する循環がよりスムーズに回るようになると期待しています。
山田:ECで物を買うときに、クチコミやレビューを見るのは当たり前の行動として定着していますよね。今回のAPI連携によって、お客様からのUGC生成を自動的に促せるようになるだけでなく、買い物をする際にサイトから離脱することなくその場でUGCを見られる状態にすることで、より顧客体験を進化させられると期待しています。
中村:ECサイトに訪れたときに、購買の判断に必要なクチコミ・レビューの情報がすでにそこにあることで、面倒なく納得してご購入いただけると思います。実は、購買判断におけるUGCの影響は年々高まっているんです。その裏には、生活者はもはや企業からの一方的な情報は信用していない背景があると思っています。実際に商品を利用している方からのリアルな声こそが、購買を検討している生活者の背中を押すのです。
出典:生活者のUGCに対する意識調査(2022年8月)|Letro
ニールセンデジタルの2019年発表の調査において「購買の際にUGCを信頼する」と回答した30代の生活者は33%(2017年)から45%(2019年)に増加していたが、2022年のLetroの調査では69.9%まで上昇しており、UGCの信頼度が年々高まっていることがわかる。
中村:Letroを利用してECサイトにUGCを掲載することで、多くの企業様がCVRの改善に成功されていますが、実はこうした「購買の背中を押すUGC」の中身にも変化があります。今は、ただインフルエンサーやパワーブロガーが商品を持っている写真ではなく、本当にリアルな顧客体験が伝わるUGCこそが成果につながっていることがデータからも明らかになっています。
リアルな感想をいきなりInstagramに投稿するのはハードルが高いですが、実は皆さん商品に対しては色々な想いを持ってくださっていて、こちらから聞けば教えてくれることが多いんです。今回のAPI連携を通じて、そうしたお客様の声を自然に集める流れを作っていけるのではないでしょうか。
また、UGCは購入を後押しするコンテンツとしてだけでなく、商品改善や事業見直しにつなげる顧客のインサイトを知る上でも貴重な情報源となるはずです。
これから他社と差別化して自社の商品・サービス・マーケティングそのものを磨き上げていくためには、とにかくあらゆる面におけるPDCAを高速に回せる仕組み作りが重要です。顧客の声であるUGCは、商品開発・売り場づくり・販促・CRMなどあらゆる要素をブラッシュアップし、顧客体験を向上するための軸となるでしょう。両社のテクノロジーを通じて、このような世界観を実現していきたいですね。
中村:最後に、今後の展望をお聞かせください。
山田:W2は「コマースを前へ、生活を前へ、世界を前へ」をステートメントとして掲げています。買い物体験をより進化させることで、生活を変え、世界を変えていきたいです。そのためには、我々一社だけでなく、物流、決済、セキュリティ、そしてアライドアーキテクツさんのようなマーケティング支援を行うパートナー会社との協力が欠かせません。異なるシステム間であってもデータをシームレスに連携させることで、業務を分断することもなく大規模な初期投資も不要となり、ROIを最大化できる。そんな最先端のエコシステムを共に創り上げていきたいと考えています。
中村:コロナ禍によりデジタル化が急速に進んだとはいえ、日本はまだ世界に比べてEC化率がかなり低い状況です。そのギャップは今後全てのEC企業にとっての伸びしろであり、これからどれだけ伸ばせるかは私たちのようなテクノロジーを用いた支援を行う企業にとってのミッションと言えると考えています。今回の御社との連携は、「理想的な顧客体験」をより速く実現するための大事な一歩であり、コマース進化の一端を担えると強く信じています。本日はありがとうございました!
記事公開日:2023.06.20