【2022年最新版】薬機法改正のポイントを分かりやすく解説!企業は何を対策すべき?

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「薬機法改正」のニュースを耳にするが、イマイチ何が変わったのか分からない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、マーケティング担当者が押さえておきたい2021年8月施行の改正薬機法の内容をご紹介。改正薬機法のもとで企業が何を対策すべきかについても、分かりやすく簡単に解説していきます。

(※)本記事は2022年10月3日時点の各種情報に基づいて作成しています。

薬機法(旧薬事法)とは

①薬機法の目的

薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言い、具体的には医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具などについて製造・販売・安全対策まで規制し、その適正化をはかることを目的としています。

医薬品や医療機器等、この法律で規制の対象となっているものは、人の健康や生死に密接に関わってきます。国で認められていない成分が入っている、または販売会社の誇大広告で効果・効能を消費者が誤認し使用してしまった場合、人体に影響がでる可能性があります。

そうした事を事前に防ぎ、消費者の安全を守るために薬機法というルールが存在しています。

②薬機法の規制対象

薬機法の規制対象は以下5つが該当します。

  • ・医薬品
  • ・医薬部外品
  • ・化粧品
  • ・医療機器
  • ・再生医療等製品

健康食品・サプリメント、健康・美容器具などはこの5つに該当しないため、直接的な法律による制限は受けません。しかし、医療品のような効果を訴求するなど、薬機法に抵触する表現をすることは禁じられています。

③広告における薬機法

薬機法の第66~68条に、広告についての規制が記されています。ポイントは以下の2点です。

  • ・虚偽・誇大広告の禁止
  • ・未承認の医薬品等の広告の禁止

医療品等の効果・効能、性能についての虚偽・誇大な広告、また医師が保証したと誤認を与えるおそれのある記事の広告が禁止されています。

規定の対象については、「何人も」と記載されています。つまり、広告主だけではなく、広告代理店・媒体社・アフィリエイターなどの個人も対象となることに注意が必要です。

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2021年8月に施行された改正薬機法では何が変わったのか?

2021年8月に改正薬機法が施行され、課徴金制度が導入されました。具体的には、第75条の5の2に、以下の記載が追加されています。

(課徴金納付命令)

第七十五条の五の二 第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

2 前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日(同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)をいう。

3 第一項の規定にかかわらず、厚生労働大臣は、次に掲げる場合には、課徴金対象行為者に対して同項の課徴金を納付することを命じないことができる。

一 第七十二条の四第一項又は第七十二条の五第一項の命令をする場合(保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合に限る。)

二 第七十五条第一項又は第七十五条の二第一項の処分をする場合

4 第一項の規定により計算した課徴金の額が二百二十五万円未満であるときは、課徴金の納付を命ずることができない。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

改正薬機法における課徴金制度の詳細

①課徴金制度の概要(課徴金の対象行為、対象期間など)

今回の改正薬機法で課徴金制度が導入されたことにより、第66条の1項(誇大広告等に関して定めた条項)に違反した人は、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額 × 4.5%を課徴金として納付命令が下されることになります。

(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

先述した通り、第66条の対象は「何人も」とされていることに注意が必要です。つまり、広告主だけではなく、広告代理店・媒体社・アフィリエイターなどの個人も対象となります。また、誇大広告の内容が明示的か暗示的かを問いません。

直接的な法律による制限を受けない健康食品・サプリメント、健康・美容器具などであっても、医療品のような効果を訴求するなど、薬機法に抵触する表現をすると医薬品であるとみなされて、課徴金の対象となる可能性があることに注意が必要です。

課徴金の金額は、期間中における対象商品の「利益」ではなく「売上額」の4.5%ですから、その影響は非常に大きいといえます。そして、万が一期限までに課徴金を支払わなければ、年14.5%の延滞金が付加されます。

(納付の督促)
第七十五条の五の十一 厚生労働大臣は、課徴金をその納期限までに納付しない者があるときは、督促状により期限を指定してその納付を督促しなければならない。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による督促をしたときは、その督促に係る課徴金の額につき年十四・五パーセントの割合で、納期限の翌日からその納付の日までの日数により計算した延滞金を徴収することができる。ただし、延滞金の額が千円未満であるときは、この限りでない。

3 前項の規定により計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

ただし、保健衛生上の危害の発生又は拡大に与える影響が軽微であると認められる場合や、課徴金の額が225万未満の時は課徴金の納付を命ずることができないとされています(その他にも課徴金が減額対象になる場合などもあります。詳しくはこちらをご覧ください)。

②措置命令とは

改正薬機法では「措置命令」も定められています。第66条1項(虚偽・誇大広告等の禁止)または第68条(承認前医薬品等の広告の禁止)に違反した者に対して、違反広告の中止や、その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示、その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置が命ぜられます。

(違反広告に係る措置命令等)※一部のみ抜粋
第七十二条の五 厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十六条第一項又は第六十八条の規定に違反した者に対して、その行為の中止、その行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。

一 当該違反行為をした者

二 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人

三 当該違反行為をした者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人

四 当該違反行為をした者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた者

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

③行政処分の流れ

では、どのような流れを経て「課徴金納付命令」や「措置命令」が下されるのでしょうか。以下は、厚生労働省が公表している「行政処分の流れ」についての図です。

いきなり「課徴金納付命令」や「措置命令」が下されるわけではなく、調査や弁明の機会を与えられながらふるいにかけられ、最終的にその対象かどうかが判断される流れとなっています。

行政処分の流れ図

出典:課徴金制度の導入について|厚生労働省

改正薬機法において、企業は何を対策すべきか

最後に、改正薬機法において企業が何を対策すべきかを解説します。

①薬機法の理解と、薬機法を遵守できる体制づくり

当たり前ではありますが、まずは改めて薬機法の内容を理解すること、そして常に薬機法を遵守できる体制作りが大切です。

厚生労働省が定めているガイドラインを確認し、自社の商品が訴求可能な効能範囲を正しく理解してください。そして、組織としてきちんと薬機法を遵守した運用ができるよう、体制づくりを行うことが大切です。必要に応じて専門家への相談を検討することもお勧めします。

②「何人も」に改めて注意。自社内だけでなく関連パートナーも含めて法令の遵守を。

第66条の対象は「何人も」ですから、広告主の知らないところで広告代理店やアフィリエイターなどが違反した場合でも、責任を追及されます。「知らなかった」では済まされません。

代理店、制作会社、アフィリエイター等が違反しないように、社内でNG事項を洗い出し、広告ガイドラインを作成し共有することが大切です。

以上、今回は改正薬機法のポイントについて簡潔に解説しました。措置命令や課徴金命令が下された場合、金銭面での影響が大きいだけでなく、会社への信頼も低下し、大きなリスクになります。改めてしっかり内容を把握し、対策していきましょう。