ヤッホーブルーイングは「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、画一的な味しかなかった日本のビール市場に多様性を生みだし、新しいビール文化を創出するために活動しています。
同社は、製品に興味をもった消費者の”熱量を高める”活動を推進しています。そして、その結果生まれた強力なクチコミ(UGC)をオンラインショップに活用することで売上を高めています。
今回はコンシューマー事業部門で事業統括をされている望月氏と通販事業ユニットのユニットディレクターを務める桂馬(けいま)氏にお話をお伺いしました。
課題
解決策
成果
ー他のビールメーカさんはお取引先との関係でオンラインでの販売が難しかったり、定期宅配には取り組んでいなかったりしますが、御社は創業間もない1997年からオンライン販売に取り組まれ、公式通販サイトでもクラフトビールの定期宅配サービス「ひらけ!よなよな月の生活(以下、「月の生活」)」の販売数を伸ばされています。マーケティングにおいて店頭流通と自社ECそれぞれの役割をどう捉えていますか。
望月氏:最初にお客様に認知していただくタッチポイントは、全国のコンビニや小売店などの店頭がほとんどです。そこで、看板製品である「よなよなエール」を手に取ってくださった方のうち大体1割~2割の方がクラフトビールの味を気に入ってくれるという経験則があります。ただ、そこから他の種類のビールを試したいと思っても、実は店頭で取り扱いがあるのは多くて2~3アイテム程度なんです。
当社では常時10種類以上のクラフトビールを製造・販売していますので、限定醸造品など色んな製品を試したいと思ってくださるロイヤルティの階段を上がっていただいた方には、必然的にECでお買い上げいただくことになります。弊社のミッションとしても「ビールに味を!人生に幸せを!」を掲げており、多様で個性的なビールを楽しむ「新しいビール文化」を日本につくりたいという想いがありますので、ビールのバラエティを体感していただくという観点からも、ECは欠かせないタッチポイントとなっています。
商品の公式通販サイト「よなよなの里」。クラフトビールの楽しみ方などを紹介する「よみもの」もあるほか、オンラインストアから定期宅配サービス「ひらけ!よなよな月の生活」の申込みができる。
ーロイヤルティの高いお客様が訪れるECにおけるコミュニケーションで工夫されていることはありますか。
桂馬氏:弊社の公式通販サイト「よなよなの里 本店」に来て下さる方は既に弊社のビールを試されて好きになっていただいている方が多いので、「どうしたらクラフトビールを楽しめるのか」を伝えるコミュニケーションを大切にしています。クラフトビールの種類を解説したよみものやクラフトビールに合う料理のレシピなどの記事を定期的に出して、多彩な楽しみ方を紹介しています。
ー自社ECである”よなよなの里 本店”を強化するために注力した施策を教えてください。
桂馬氏:現在、EC全体の中で一番売上規模を占めているのは、クラフトビールの定期宅配サービス「ひらけ!よなよな月の生活」です。今後、このサブスク型サービスの新規入会数をどのように増やすかが重要課題でした。「月の生活」は、一度ご入会いただくと1年後の更新時にさらにもう1年続けてくださる継続率が90%を超えています。その一方で、一年間のサービスであるという性質上即断で入会しにくく、時間をかけて検討されるお客様が多いと推測しています。より多くの方にこのサービスの楽しみ方を知っていただき、新規入会数を増やすことが一番のポイントだと考えました。
ーUGC活用以前から、サービスの魅力を会員に語ってもらうインタビューや、製品の楽しみ方を紹介したコンテンツを自社制作して掲載していたと思いますが、改めてUGCを活用しようとなったのはなぜでしょうか。
桂馬氏:「実際にお客様がどのように楽しんでいるのか」というのは絶対外せない視点です。ECサイト上でビールの楽しみ方を伝えるために、お客様がSNS上に投稿しているクチコミ(UGC)を活用したいと考えました。以前より、月の生活の会員様へのインタビュー記事を制作し、サイトに掲載していたのですが、それだと「ヤッホーブルーイングからの提案」という風に見えてしまい、企業発信のメッセージ色を払拭しきれないのが気になっていました。コンテンツの更新にも時間とリソースがかかるので、その時の旬をとらえた内容を出し続けるのが難しいと感じていました。
望月氏:「このビール美味しい!」とか「こんなビールを飲んでいます」という感想など、お客様が自分の気持ちや感想を発信される場所も、もうすっかりSNSが中心です。以前はEC店舗宛にいただいたレビューをサイト上に掲載していましたが、最近ではSNS投稿のキャプチャを切り抜き、了承をもらってサイトに掲載したりしていました。いずれもなかなか大変な作業ですよね。SNS上のUGCを、システムを使ってもっと楽に掲載する方法を探していました。
(左)通販事業ユニット ユニットディレクター 桂馬氏(右)コンシューマー事業部門 事業統括 望月氏
ーUGC施策に取り組む際、Letroの導入に至った一番のポイントは何でしょうか。
桂馬氏:成果にこだわれる点です。ツールを導入して「UGCを掲載しました」というのではなく、UGCを掲載した効果を見ながら、さらに良い見せ方に改善していくというプロセスの方が大事だなと思っていました。ただ掲載するだけなら他のツールでもできると思うのですが、Letroは掲載したものを更新したり、同じゴールまでのプロセスをコンサルタントの方が一緒に伴走してくれます。ここは大きな魅力でした。
ー実際の成果はいかがでしたでしょうか。
桂馬氏:Letroを導入したことで「月の生活」のCVRが1.16倍に向上しました。Letroに投資することによって、「月の生活」の新規入会数を増やすことができています。
ー「月の生活」の販売サイトには、既に御社の製品をある程度飲んだことがあり、好印象をもたれているお客様が多く訪れていると思います。UGCをECサイトに掲載し運用をする中で、そのような温度感の高いお客様の反応としてどのような傾向がみえてきましたか。
桂馬氏:検証を進める中でみえてきたのは、「月の生活」への入会を検討するお客様は「製品が届いた先の生活」に魅力を感じていただいるということです。例えば、豪華な晩酌がイメージできるUGCや、アウトドアでビールを楽しんでいるUGCがよく見られています。最初は、自宅に箱が届き、開封したばかりのビールを並べた様子を撮影したUGCをサイトに掲載してみたのですが、Letroを通じてUGC掲載有無のABテストをしたところ、あまりCVRに差が見られませんでした。その後、改善を進める中で、”秘密基地”のような自分だけのクラフトビールの楽しみ方を見つける面白さが伝わるようなUGCに変えたところ、CVRが改善しました。
ー良いUGCの傾向がみえてきたことは、御社にとってどのような意味がありましたか。
望月氏:弊社は、ECに限らずコンシューマー系の事業全体で「お客様の熱量を上げるためにどのような事が効くのだろうか」を考えながら、さまざまな施策を行っています。その中で、段階ごとのお客様の行動に着目すると、「この段階ではこんな記事・情報にすごくフックしてくれている」というのがだんだん分かってきたんです。例えばその中のひとつに「アウトドア・料理」など、趣味性の強い記事群があります。今回Letroを導入し、趣味や食事、ペットが一緒に映ったUGCが成果につながりやすいという傾向が出て、私たちが考えていた「熱量を上げてもらうため、こういう打ちだしをすべきなんじゃないか」という仮説と、成果につながりやすいUGCの特徴が合致しており、仮説の実証できたという事が大変意義深かったです。
オウンドメディアやSNS、醸造所見学ツアーや数千人のファンが集まるイベント「よなよなエールの超宴」などを通じて、製品を手に取った消費者の熱量を高めてもらう工夫している。今回、Letroを活用し熱量の高いファンのクチコミ(UGC)をオンラインショップに掲載している。
ー御社のように、密なコミュニケーションの結果生まれたファンによる推奨(UGC)が新しいお客さんを呼び込み、ECの売上をも高めているというこの流れを一気通貫でできている企業は多くありません。お客様がロイルリティの高いファンとなり、さらにUGCの投稿もしてくださる、そのような理想的な状況を作るために、どのような工夫をされているのでしょうか?
望月氏:例えば、SNSのチームでは「どれだけ多くのUGCを生み出せるか?」を最上流KPIのひとつにしています。そして、お客様向けに「自社製品に絡めたSNS投稿をお願いする」ようなイベント・キャンペーンを定番的によく行います。そして、お客様からの投稿(UGCの発生)があった際、SNS上で直接コミュニケーションを取る行動をとても大切にしています。「美味しいです」と言ってくださったお客さんに、公式アカウントからコメント返しをすると大変喜んでくださる。さらに「ヤッホーさんがコメントしてくれた!」という具合に、キャッチボールが発生する事でさらにUGCが増えていく。いわばUGCが2倍、3倍に増加し、ポジティブな認知の機会がそれだけ広がっていくのです。今後は、これをECのメインのページだけでなく、同梱物や広告のクリエイティブにも使っていければ、さらに素晴らしいサイクルを加速していける可能性があると思っています。
株式会社ヤッホーブルーイング コンシューマー事業部 責任者 望月氏
ー最後にLetroを検討している企業様向けにアドバイスをお願いします。
株式会社ヤッホーブルーイング オンラインショップ担当 桂馬氏
桂馬氏:「UGCを活用したいけれどリソースが足りない」と中々踏み切れていない企業様も多いかと思いますが、Letroは改善プロセスに伴走をしてくれます。なかなかCVRが上がらない時もあったのですが、それも一緒に乗り越えていただけました。個人的に一番良かったのは、結果に対してロジカルに「なぜだめだったと解釈しているのか」の意見をいただけて、「次にどういうことをやるべきか」というPDCAのサイクルの提案に納得感があったことです。しっかり成果につながる施策だと評価しています。同じ悩みを抱えている会社さんはもちろんですし、PDCAをどう回したらいいかわからないと悩まれている方にぜひお勧めしたいです。
記事公開日:2021.10.07