「BOTANIST」「YOLU」「SALONIA」など、大ヒットブランドを複数展開する株式会社I-ne。その圧倒的なブランド創出力とマーケティング力で業界をリードし続けています。
そんな同社が展開するエイジングケアメイクアップ&スキンケア ブランドが、WrinkFade(リンクフェード)です。
今回は、株式会社I-ne ダイレクトマーケティング本部 サブスクリプションハック部 部長の足立 謙二氏に、同ブランドの運営やマーケティングの裏側、その中で「UGC」はどのような役割を果たしているのか?についてお話を伺いました。
ーWrinkFade(リンクフェード)薬用リンクルカバーファンデーションの商品の特徴を教えてください。
足立氏:WrinkFade 薬用リンクルカバーファンデーションは、薬用有効成分「ナイアシンアミド」の働きでシワ改善と美白(※)を叶えながら、どんな肌質でもメイクがきまるW美容液ファンデーションです。さらに、「忙しくてもスキンケアに手を抜きたくない」という想いに応える、1本11役のオールインワン設計になっています。EC通販による定期購入を前提としたモデルで展開している商品で、メインターゲットはアラフィフ世代の女性です。
(※)メラニンの生成を抑え、日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ
ー処方のこだわりのポイントをお聞かせいただけますか?
足立氏:商品がローンチしたのは、ちょうどコロナ禍の真っ只中でした。世の中の流れとしてECによる購買が進む一方で、ファンデーションにはオンラインだと色が分かりづらく買いづらいという事象があることに着目し、どんな肌の方にも馴染みやすい「カラーアジャストテクノロジー」を採用しました。また、マスクによるメイクよれをブロックする独自の「マスクガードテクノロジー」も取り入れています。薬用有効成分のナイアシンアミド を配合し、メイクをしながらシワ改善×美白が叶えられるのもこだわりのポイントです。
ー通販による定期購入を前提としたブランド立ち上げで重視しているポイントはありますか?
足立氏:「BOTANIST」や「YOLU」のように小売店を中心として展開するブランドと、「WrinkFade」のようにEC通販による定期購入を前提としたブランドでは異なる開発基準を設けています。定期通販モデルの商品において重要なのは「ユニットエコノミクス」の観点です。広告による初期投資をし、その後に定期購入でどれだけ回収できるかを、市場や競合の調査もしながらかなり綿密に設計した上で商品開発しています。
ー商品設計の段階で、広告クリエイティブはどこまで想定しているんですか?
足立氏:極端な話、LPのデザインラフを一本先に作るくらいのところまでしっかり設計します。広告で商品をどのように訴求できるか、どんなパフォーマンスがあげられるか…広告クリエイティブからの逆算思考での商品を設計し、その価格や内容が広告の訴求と見合っているのかを定量/定性の調査をして調整することで商品パフォーマンスを高めていくやり方を取っています。
ー広告・販促施策において御社が軸としている考え方はありますか?
足立氏:1つの媒体に依存せず、できるだけ安定したポートフォリオを組む事を意識しています。他社の出稿状況や媒体のレギュレーションに応じて月毎に広告のパフォーマンスは変わるものなので、特定の媒体のみに力を入れるのではなくその時々で使い分けられるようにしておくことが大事ですね。
広告の運用は、自社によるインハウス運用と代理店さんでの運用の両形式で行っています。インハウス運用においては、とにかく量を回してPDCAの中から勝ちクリエイティブを見つけていくことが大事だと考えているので、一定のクリエイティブ数を担保できるよう、体制を構築して運用しています。代理店運用では、クリエイティブの方向性やレギュレーションを社内で設定し、ブランドとして一貫したコミュニケーションが取れるように意識しています。
ー直近の広告・販促施策に見られるトレンドがあれば教えてください。
足立氏:最近の傾向でいうと、静止画よりも動画クリエイティブの方がパフォーマンスが良い傾向にあります。商品の特性として、静止画よりも動画の方がUSPやベネフィットを伝えやすいからだと分析しています。
ー広告・販促施策で重視している指標は何ですか?
足立氏:重視している指標は「F2転換率」です。広告で当たりの訴求を見つけて低いCPOで初回獲得ができても、商品への期待値と実際の内容が異なってしまうとLTVは低くなってしまうため、CRM施策を通じて「正しい商品の使い方」をお伝えし、使用満足度を上げることが非常に重要です。
そこで、「メイク系の商材は人によって使用方法が違うため、弊社が意図しているような商品の便益を体感いただけないことがあるのでは」という仮説の元、リキッドファンデーションに慣れていない方でも無駄なくきれいに仕上げていただけるようにパフを同梱し、使い方のハウツーを伝えるチラシも添えたところ、F2転換率が3パーセントも上がりました。こうした改善はユニットエコノミクスの観点でも非常に重要だと捉えています。
ー御社は長らくUGC施策に取り組み続けています。その理由を教えていただけますか?
足立氏:Letroを導入したのは2018年です。それ以来、ずっと継続して利用しており、今ではUGCはマーケティングに欠かせないMust Haveコンテンツになっています。
2018年の開始当初は、まだLPや広告クリエイティブにUGCを活用することそのものが目新しい状態で、インフルエンサーが商品を持って顔を映しているUGCを掲載するだけでも、ある程度CVRが上がるような状況でした。
ただ、UGC活用はもはや誰もが取り組む施策となり、今はもう従来のやり方では通用しません。今必要なのはLPに訪れた方が本当の意味で自分ごと化できる見せ方であり、それを見つけるためにはUGCの運用が欠かせないと考えます。現在は、Letroさんと一緒にUGCエリアの見出しや掲載するUGCの内容を検証しPDCAを回すことで数値の改善を図ることで、LP上のCVRが1.3倍となる改善に成功しています。
足立氏:また、新規獲得のみならずCRMの領域でもUGCの活用を進めており、ロイヤルカスタマーにレビューを投稿いただいたり、それをCRMのクリエイティブに反映したりしています。
日々の広告・販促施策において足元のKPI改善はもちろん大変重要ですが、そうしたギミックは長続きしないこともあります。マーケティングにおいて重要なのは本質的な部分に目を向けた設計であり、UGCは商品やサービス内容の改良といった本質的な取り組みにも欠かせないものだと捉えています。
ー最後に、今後の展望をお聞かせください。
足立氏:市場全体で新規顧客獲得コストが高騰しています。生活者のニーズや行動が多様化する中で、マーケティング施策の成功の再現性は難しくなりつつあると感じています。今後も出来る限り新しい施策や領域にチャレンジし、まずは打席に立つことで成功のノウハウをためていきたいと考えています。また、今後も商品やブランドを通じて、より多くのお客様に幸せな体験を提供できるよう、新D2Cブランドの立ち上げやスケールを牽引できるダイレクトマーケター人材の育成にも注力していきたいと考えております。
記事公開日:2023.06.02