株式会社エアークローゼットは、2015年に月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』をスタート。日本で初めての普段着のレンタルサービスとして会員数を拡大し続け、2023年には100万を突破しました。
同社は「これまでにない感動するお洋服との出会い」を届けたいという想いからサービスを設計し、マーケティング施策においてもサービスの特徴や仕組みといった「機能的な価値」を伝えるだけでなく、「お客様がどのような体験を得られるか」といった「体験価値」を伝えていくことを大切にしています。そんな同社が取り組んでいるのがお客様の声=UGCの活用です。
今回は、執行役員/社長室長・マーケティンググループ長 石川 桂太氏にインタビュー。
「洋服レンタルのサブスクリプションビジネス」という新たなマーケットの創造に成功した同社のマーケティング戦略や現在注力されている「UGC運用」について詳しく伺いました。
課題
解決策
成果
ーまず最初に、御社のサービスの特徴について教えてください。
石川氏:
airCloset は2015年2月にスタートした普段着のレンタルサービスで、国内最大級のファッションレンタルプラットフォームです。お客様がネットで登録するだけでスタイリストが選んだお洋服が届き、返却期限もなくクリーニングも不要です。そして気に入ったら購入することも可能という月額定額制のサービスになっています。
airClosetは「これまでにない感動するお洋服との出会い」を届けたいという想いから生まれています。「この体験価値を作りたい、そのためにはどうしたらいいんだろう」というのを考えてサービスやマーケティングの設計をしています。
株式会社エアークローゼット 執行役員/社長室長・マーケティンググループ長
石川 桂太 氏
ー無形商材だからこそのマーケティングの難しさはありますか。
石川氏:
プロダクトそのものを販売していないので「良い香りのシャンプーですよ」とか「すごく伸びるパンツですよ」とか、そのような売り方ができないのが難しい点です。
だからこそ、私たちはお客様の便益、体験価値をいかに感じていただけるか、サービスに魅力を感じていただけるのかを徹底的に考えてきました。お客様がどのようなインサイトをもたれていて、どのように便益を届けていくべきかを考えるために、年間100本程度お客様にインタビューし、お客様の声をできるだけ多く聞くようにしています。
ー近年、販促環境が大きく変化していますが、御社ではどのように捉えていますか。
石川氏:
インターネットが出てきた当初は、「欲しいものを便利に買える場所」としてのデジタルという側面が強かったと思います。その後、デジタル上のプロモーション手法も増え、「商品やサービスとの出会いの場所」としてのデジタルに変化していったと思います。商品やサービスを知る最初のきっかけもデジタル上になった今、店舗スタッフが存在しないところで、お客様に商品やサービスを魅力的だと思ってもらえるのか、体験価値をどのように伝えていくのかが大きなテーマになってきています。
具体的には、airCloset がどういう仕組みのものなのかをきちんと説明すること(左脳的なアプローチ)だけでなく、「いかに感情的に好きになってもらうか」という観点で伝えていくこと(右脳的なアプローチ)も重要だと思っています。
ーデジタル上のコミュニケーションで御社が行っている工夫を教えてください。
石川氏:
「左脳的なアプローチ」では、誰のどういった課題を解決するサービスなのかだったり、「あなたはこういうお洋服のタイプなのでこちらを提案します」といったパーソナライズを意識した情報提供をしています。「右脳的なアプローチ」では、お客様に「おしゃれで素敵だなぁ」「自分もこうなってみたいなぁ」と思ってもらえるように、いかにお洋服が素敵に見えるかという”シズル感”を大切にしています。
ーairClosetが、UGCの活用を重視している背景を教えていただけますか?
石川氏:
UGCは、「左脳的なアプローチ」「右脳的なアプローチ」の両方を補完するコンテンツだと思っています。
例えば、お客様が本当に自分に合うサービスなのかを調べている時に、自分と似たような属性の方のレビューは「これは自分にハマるんだ」と思ってもらえる材料になります。これがUGC活用における「左脳的なアプローチ」です。
一方で、ネットではリアル店舗と違って話題になっているかが感覚的にわかりづらい中で、UGCがたくさん並んでいると「皆が使っているから使ってみよう」と話題性を感覚的に伝えられると思います。これがUGC活用の「右脳的なアプローチ」です。さらに、お客様の利用シーンのUGCは「この着こなし、おしゃれでいいな」というのを雰囲気で感じてもらえるような、印象づけができるコンテンツになっています。
このような2種類のUGCは、いずれもサイトにいれています。実際に、テストした結果を見ても、どちらかだけを入れていた時よりも、両方いれていた時の方がCVRが高いです。「左脳的なアプローチ」としてのUGCと、「右脳的なアプローチ」としてのUGCが両方必要だというのは、こういったテスト結果からも言えます。
ー現在行っているUGC活用の具体的な内容を教えてください。
石川氏:
UGC活用ツール「Letro」を使って、中間LPの後に遷移するサービスサイトにUGCを掲載しています。届くお洋服を着こなしている様子などサービスの利用イメージをもっていただけるようInstagram投稿のUGCを掲載しているのと、「どういう理由でお客様が購入されているのか」「なぜ継続しているのか」という細かい情報をレビューで見られるようにしています。
-改めてLetroを導入された理由をお聞かせください。
石川氏:
Letroであれば、UGCで得られる成果をより伸ばせると感じたからです。具体的には、同じサブスクリプションサービスを展開する事業者様が多く導入されているという実績、ただUGCを掲載するだけでなく、A/Bテストから計測、最適化まで簡単にできるシステム自体の使いやすさ、そして実際に一緒にPDCAをまわしてくださるダイレクトマーケティングに精通した運用担当者がいることが決め手になりました。
ーLetroのUGC運用で得られた具体的な成果を教えてください。
石川氏:
UGCを掲載しない場合と比較して、CVRを1.44倍にすることができました。お客様のリアルな声を通じて体験価値が表現され、サービスを検討されるお客様の自分ごと化を促すことができていると感じています。
このような成果を出せたのも、Letroの運用担当者に非常に真摯に向き合っていただけたからだと思っています。日頃から検証結果や他社事例をもとに、さらなる改善提案をくださり、それに沿った運用をすることで成果が出せています。
-成果をあげるべく、具体的にどのような検証を行いましたか。
石川氏:
UGCの中身やデザイン、置く位置などについて仮説を立てて検証を行い、結果をもとに最適化するサイクルを回しています。レビューにおいても同じような検証を行い、サイトのコミュニケーション内のどのタイミングで活用するのが最善か見出しています。
UGC運用の一例。UGCの中身のパターンをテストし、もっとも成果がよいものに最適化していった。
ー最後に、今後UGC運用において取り組んでいきたいことを教えてください。
石川氏:
私たちは、「ファッションの力で日常の生活が豊かになる体験をお客様に感じていただきたい」と思っております。その中心となるのが、お客様一人ひとりにあわせたパーソナルスタイリングです。
今後は、お客様にサービスのイメージを膨らませていただけるよう、お客様のなりたい、近づきたい、似合うイメージにフィットするUGCをインタラクティブに出し分けられる状態を作っていきたいと考えています。具体的には、スタイリング提案のページにお客様のご回答結果にあわせたUGCが表示される仕組みづくりなど、お客様にサービスのイメージをもっていただく活用を試していきたいです。
記事公開日:2023.10.02