2021.12.22
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近年、様々な業界において企業のDX化が謳われており、DXを支援する企業も多く出てきています。
一方、「DXとデジタル化は何が違うのだろうか」「DXの進め方が分からない」などの疑問も同時に生まれているのが現状です。
そこで今回は、本質的なDXとはなにか、そもそもなぜDXを推進する必要があるのかについて、事例も交えて解説します。
DX (ディーエックス) は「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を活用してビジネスを変革し、顧客に新たな価値を提供することを指します。
英語圏では「Transformation」の接頭辞「Trans」を「x」と略すことが多いため、DXと表記されています。
DXは、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が、2004年に「Information Technoligy and Good life」で提唱した概念です。
ストルターマン教授は、DXを「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義しています。
DXのビジネス例は「Amazon」などのEC (Eコマース)です。
我々はインターネットを介して、自宅にいながら世界中の商品が購入できるようになりました。
企業側は購入者のデータを活用することで、さらに良い商品の開発やプロモーションに経営リソースを投じることが可能です。
IoTやSaaS (クラウドで提供されるソフトウェア)、AIなどの新しいテクノロジーを導入するだけでなく、ビジネスモデルや就業環境など企業全体を変革させることが本質的なDXだと言えるでしょう。
「DX白書2021」-情報処理推進機構によるDXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
DXとよく混同されるのが「デジタル化」です。
デジタル化とは
デジタル化には「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。
デジタイゼーション は、AIやクラウドなど新しいデジタル技術の導入によって、効率化やコスト削減をする施策です。
例えば社員の個人情報を管理するクラウドシステムを導入したり、印鑑を電子印鑑に置き換えたりといった施策が挙げられます。
デジタライゼーションとは、局所的なツール導入とは異なり、業務のプロセス全体をデジタル化していく施策です。
例えば、営業活動のオンライン化が挙げられます。
このように、業務プロセスをオンラインに置き換えていくことをデジタライゼーションと呼びます。
デジタル化はDX化に含まれますが、デジタル化=DXではありません
DXという言葉が日本国内で注目を集めたきっかけの一つは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」です。
このレポートによると、2025年以降もDXが実現できない場合、最大で年間12兆円もの経済損失が起きると予測されています。
参考: :DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
▼DXについてさらに知識を深めたい方はこちらの記事もおすすめです。
【DX特集】2025年の崖とは?経産省のレポート抜粋で分かりやすく解説!
年間12兆円はどのくらいのインパクトがあるのでしょうか。
参考までに、第4回緊急事態宣言 (2021年7月12日~9月30日)の経済損失は5.70兆円で、失業者は22.1万人増加すると計算されています。
参考: :緊急事態宣言延長で成長率はマイナスに|野村総合研究所
DXが進まない場合、単純計算でその2倍以上の影響が出る可能性も考えられます。
デジタルディスラプション (digital disruption)とは、デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーションを指します。
例えば、音楽ストリーミングサービスのSpotifyや動画配信サービスのNetflixです。
以前は、音楽を楽しむためにCDをレンタル / 購入しなくてはなりませんでした。
今では、Spotifyを始めとする音楽ストリーミングサービスの登場によって、誰もがスマートフォンで手軽に音楽を楽しめます。
DXを推進するスタートアップ企業により、大企業が倒産するケースも起きています。
Netflixなどのデジタルディスラプションへの対処が間に合わなかった例として、アメリカのBlockbusterというビデオ・DVDのレンタルショップチェーンが挙げられます。
2003年には従業員6万人、売上550億ドルという規模の同社でしたが、2010年に倒産に追い込まれました。
こういったデジタルディスラプションに浸食されないためにも、企業はDXを推進し、競争力を上げなければなりません。
BCP (Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、昨今のコロナウイルスによる緊急事態宣言や災害など不測の事態が発生した場合に、事業を継続していくための計画を指します。
大雨や台風、地震などによって日本の企業はたびたび被害を受けています。 業界・職種によって異なりますが、DXを推進しておくことで有事に対応しやすくなるでしょう。
例えば、リモートワーク環境の整備です。 リモート体制で仕事が円滑に進むようにチャットツールを導入したり、社員全員にノートパソコンを支給したりといった具体策が挙げられます。
今後も様々な有事のリスクが考えられるため、BCP対策の一貫としてDXを進めていきましょう。
DXは話のテーマが大きいため、「何からどうDXを始めればよいか分からない」という声も少なくありません。
業界・業種によって細かい進め方は異なりますが、「短期で実践できるDX施策」と「中長期で実施するDX施策」に分けて説明します。
① DXへの理解を深める
DXを成功させるには、部署間の連携を深めつつ、経営陣が強いリーダーシップを発揮して主導する必要があります。
DXに限らず、変化が生まれる際は、現状を変えたくないという反発が想定されます。
現場社員と経営陣のDXに対する理解が深まることで、施策をより円滑に進められるでしょう。
③ 現状を把握する
目的を設定した後は、目的と現状の間のギャップを把握しましょう。
企業規模が大きい場合は、部署や事業単位で「老朽化しているレガシーシステムはないか」「アナログからデジタルに移行できる作業はないか」からチェックするのがおすすめです。
複雑かつ特定の人しか触れないレガシーシステムは、保守・運用に多大なコストがかかり続けるため、DXやIT人材への投資の足かせとなります。
④ デジタル化する (デジタイゼーション)
アナログな業務をデジタル化することで、業務効率を上げてコストを削減し、新しいテクノロジーや人材に投資しやすい環境を作りましょう。
デジタル化やDXへの投資判断について、経済産業省は以下のような意思決定のあり方を提示しています。
⑤ 老朽化したレガシーシステムの刷新
レガシーシステムとは保守運用のコストの高い既存の基幹システムを指し、複雑で扱いにくい点や技術者の退職によってノウハウが失われることが問題点として挙げられています。
DXを進める上で大切なのは、リアルタイムで更新されるデータを全社横断的に活用できる状態を作ることです。
例えば、顧客管理をしているシステムが部署ごとに異なる場合、部署をまたいだデータ活用は進みにくく、DXの推進を阻むでしょう。
一方、ただ単に新しい基幹システムを導入することも逆効果です。 扱いにくいシステムの導入は、レガシーシステムを新たに生み出す可能性があります。
既存のシステムの問題点をリストアップし、要件を定義してから導入を進めましょう。
導入する際は、特定の人しかカスタマイズできない状況を避けるため、情報をオープンにして誰でも使いやすい状態にしておくことがポイントです。
複数の部署で使うシステムを刷新する際は、各部署とのコミュニケーションも頻繁に行うようにしましょう。
例えば、ある一部署でシステムの提案を受けた場合は、他の部署の責任者にも同席を呼びかけてみるなどが挙げられます。
⑥ DX人材を採用 / 育成する
経済産業省はDX人材を以下のように定義しています。
一口にDX人材といっても、その役割や職種は様々です。
見切り発車でDX人材の採用を始めるのは避け、自社のDXの段階に合わせて最適な人材を採用しましょう。
例えば、老朽化した基幹システムを違うシステムに変える際は、ツール選定は勿論、導入に向けて各部署を巻き込む推進力が求められます。
ビジネスモデルを変革する段階になれば、データの活用に長けた人材やビジネスを具現化するエンジニア / デザイナーも必要です。
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)は、DXに対応する人材を6つの職種に分けています。
プロデューサー | DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー各の人材 |
---|---|
ビジネスデザイナー | DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材 |
アーキテクト | DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 |
データサイエンティスト / AIエンジニア | DXに関するデジタル技術 (AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材 |
UXデザイナー | DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 |
エンジニア / プログラマ | 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材 |
新しく採用した人材が将来辞めてしまっても、DXを推進し続けられるように、デジタルに強い人材を育成することも重要です。
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▼DXにおける動画の重要性について知りたい方はこちら
動画を活用してDXを推進!成功のポイントと事例3選
⑦ 経営陣が主導して PoCを実行する
PoC (Proof of Concept)とは、新しいサービスやアイディア・技術に対して、本当に目的の効果を得られるのかどうか確認するために、実証実験を行うことを指します。
理論や計算での実験ではなく、実際に簡易版のサービスを作り、PDCAを回して検証する点が特徴です。 PoCをせずにプロジェクトを始めてしまうと、望んだ効果が得られなかった場合に大きな損失につながるリスクがあります。
効果的なPoCを推進していくためにも、サービスの設計やデザイン、事業の推進に長けたDX人材を採用・育成するのは必須です。
▼DXとマーケティングの関係性について知りたい方はこちら
マーケティングDXとは?成功のポイントと事例3選
DX戦略は、全社横断で取り組む中長期の取り組みのため、特定部署の利害や短期的な利益を追及すると頓挫するリスクがあります。
特にデジタルに強い人材の育成やDX人材の採用、PoC (新サービスの開発・検証)は、一朝一夕で実現しません。
失敗を許容し、短期的な成果でDX推進部署を評価しないようにしましょう。
DXを推進する部署やDXコンサルの外部企業に任せるだけでは、本質的なDXを進めるのは難しく、局所的なデジタル化 (デジタイゼーション)だけで終わってしまうリスクがあります。
経済産業省も「(1)DX 推進のための経営のあり方、仕組み」で次のような提言をしています。
《経営トップのコミットメント》
2.DX を推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミッ トメントを持って取り組んでいるか。
- 仮に、必要な変革に対する社内での抵抗が大きい場合には、トップがリーダーシッ プを発揮し、意思決定することができているか
家庭教師のトライ(トライグループ)は、基幹事業である家庭教師派遣事業で蓄積されたデータを活用し、2015年に無料の映像授業サービス「Try IT (トライイット)」をリリースしました。
従来のオンライン授業のように大きな教室を映すような映像授業ではなく、個別授業らしさを活かしたサービスとなっており、分からない箇所をすぐに質問できます (有料)。
中学から高校までカバーしており、約4,000本の授業を無料で視聴することが可能です。 授業時間も15分と短く、隙間時間にいつでもどこでも授業を受けられます。
その結果、教室に通うことのできなかった学生にもサービスを提供することができるようになり、新たな収益の柱を確立することに成功しました。
画像引用:Japan Taxi|Google Play|App Atore
「JapanTaxi」は2011年に日本交通グループがリリースしたアプリです。 このアプリがリリースされた当初、日本におけるスマートフォンの保有率は約3割でした。
参考: 数字で見たスマホの爆発的普及(5年間の量的拡大)|総務省
日本交通は今後のスマートフォンの普及やアメリカのUber社の台頭を鑑みて、自社に抱えているエンジニアでいち早くこのアプリを開発しました。
最近では、タクシーへのタブレット搭載も進んでおり、多様な決済に対応するだけでなく、タクシー広告という新たな収益モデルも確立しています。
DX推進 (デジタルトランスフォーメーション)を軸に、デジタル化との違いやDXが必要な理由、失敗しないためのポイントなどについて解説しました。
企業はDX化を通して、新たな価値を顧客・従業員に提供し、企業の競争力を高めていきます。
DXを推進する中で壁となるのが、DX人材の不足やレガシーシステムです。
アナログな作業や業務フローが多い場合は、まずは少しずつデジタル化を推進するのが良いのかもしれません。
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記事公開日:2021.11.04
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