縦型動画、AI、N1理解。広告代理店4社が語る、ダイレクトマーケティングの最新トレンド

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縦型動画、AI、N1理解_ogp

今日のダイレクトマーケティングを取り巻く環境は、広告コストの高騰や各法律の厳格化、クッキー規制によるターゲティング・計測の正確性への影響、生活者のニーズや行動の多様化など、様々な変化と困難の連続です。

そこで今回は、ダイレクトマーケティングの分野における広告代理店のトップランナーである4社(電通デジタル、セプテーニ・クロスゲート、ワンスター、オプト)をお招きし、さまざまな企業と向き合っているからこそ語れる現在のトレンドや、成果につなげるために理想的な広告主/代理店間のパートナーシップのあり方についてお伺いしました。

※本記事は2023年5月18日(木)にアライドアーキテクツ株式会社「Letro」が開催したカンファレンスイベント「Direct Talk Tokyo 2023 produced by Letro 【すごい通販のダイレクトマーケ現場に学び、繋がる】」の一部セッションの内容を編集したものです。

井手氏 岡本氏 中村氏 小久井氏

(向かって右から)
株式会社電通デジタル ダイレクトアカウントプランニング部門/事業部長 井手 柾志 氏
株式会社セプテーニ・クロスゲート デジタルマーケティング事業部 クリエイティブ課 マネージャー 岡本 智代子 氏
株式会社オプト クリエイティブ本部 シニアクリエイティブディレクター中村 将 氏
株式会社ワンスター デジタルDRM事業部 エリア事業本部 クリエイティブ局 局長 小久井 志織 氏
(インタビュアー:アライドアーキテクツ株式会社 取締役 村岡 弥真人)

認知から獲得まで、クリエイティブの一貫性を持たせるためにできる工夫とは

村岡(モデレーター/アライドアーキテクツ):
今日はダイレクトマーケティングの分野における広告代理店のトップランナーである4社をお招きしました。同業の皆さまがこうして一堂に会する機会はなかなかないことだと思いますので、今日は普段聞けないような深いお話を伺っていきたいと考えています。よろしくお願いします!

まずは、昨今のダイレクトマーケティングの環境変化についてです。ひと昔前までは、「媒体毎の攻略法」「広告運用のギミック」が話題の中心でしたが、昨今は「どうやって顧客とコミュニケーションするか」という、より本質的なところに話題がシフトしていると感じています。その背景には、法規制や媒体審査が厳しくなったり、クッキー規制でターゲティングや計測の精度も落ちたりする中、今までのやり方が通用しない局面が増えていること、そしてお客様の購買行動が非常に多様化していることがあると考えられます。

このように激しく変化する時代の流れに対し、各社様がどう立ち向かっているのかをお聞かせいただけますか。

井手(電通デジタル):
村岡さんがおっしゃるように、パフォーマンス広告の市場はCPMの高騰により各社苦戦している印象です。そのような中、電通デジタルが行っている新しい取り組みの一つが「ブランデッドダイレクト動画」です。今までのマーケティングは、どうしても認知と獲得でコミュニケーションが分断されがちでした。それを解決する一つのフレームワークとして、マーケティングファネルにおける認知フェーズから獲得フェーズまでを一括で促せる動画クリエイティブとして、この提案を行っています。

井出氏

株式会社電通デジタル ダイレクトアカウントプランニング部門/事業部長 井手 柾志 氏
WEB広告専業代理店を経て2017年より電通デジタルに参画。前職より、WEB/APP問わず様々な業種の広告主をプロジェクトマネージャーとして担当し、事業成長に向けた提案・実行・改善活動に従事。
現在は健康食品/化粧品などの通販事業の広告主を中心に金融/保険/人材/不動産といった幅広い業種に対して、メディアプランニング・ソリューション提供による事業支援に取り組む。

村岡:
お客様の行動が多様化する中で、一つの解として認知から獲得まで促せるコミュニケーション施策を提案されているのは大変興味深いです。

どの通販企業も、「認知施策は成果が見えづらいから投資判断をしにくいが、成果を図りやすい獲得施策ばかりに投資し続けるとCPAが合わなくなってくる」といった悩みを持っていますよね。認知から獲得まで、全ての施策が一貫・連動して行われるのが理想だとは言え、現実には、両施策を担当する部署や予算計上の仕方が分かれていたりと難しい面もあるかと思います。

中村(オプト):
そうですね。ただ、やはり「顧客は一人」であることを忘れてはいけないと感じます。これは認知施策や販促施策だけでなく各所で起こりうることです。例えば、ダイレクトマーケティングの現場では、デジタル広告用のクリエイティブを制作するデザイナーと、実際に広告を運用する担当者の認識が微妙にずれることで一貫性が失われてしまうことがあります。
戦略や企画を作る担当者も、デザイナーも、ディレクターも…全員がマーケターとして同じ視点を持つことが大切ですよね。

岡本(セプテーニ・クロスゲート):
弊社では、案件に関わる全員が数字を見るように徹底しています。もちろん各担当領域毎に少しずつ見る範囲は異なりますが、やはり数字を見ないと自分が立てた企画、作ったクリエイティブがターゲットに響いているかが分からないですから。当初は、デザイナー側から数字を見ることへの抵抗もありましたが、今は全員が当たり前に見るようになりました。

小久井(ワンスター):
弊社でもクリエイティブディレクターが運用の会議に出たり、運用担当者がクリエイティブディレクターと会話したりを日常的に行っています。役割をはっきり分けているというより、グラデーションで仕事をする組織体制を組んでいます。

話題の「縦型ショート動画」は、クリエイティブが面白ければ売れるのか?

村岡:
次に、オプトさんが現在注目しているトレンドや、変化するダイレクトマーケティングにどう立ち向かっているのか教えてください。

中村(オプト):
各広告媒体が注力しているフォーマットである「縦型ショート動画」に注目しています。縦型ショート動画の場合、つまらなければユーザーにすぐにスワイプされてしまうので、継続視聴してもらえる動画はなにかを日々研究し、発掘している最中です。一つのカギは、「自分がどれだけ面白いと思えるクリエイティブを作れるか」だと思っています。

中村氏

株式会社オプト クリエイティブ本部 シニアクリエイティブディレクター中村 将 氏
映像クリエイターを経て、動画広告専業代理店に入社。主にゲーム業界などの国内外アプリプロモーションを担当。制作から広告運用までを一貫して対応するクリエイターの育成に注力。2019年に映像会社IMAGICAの子会社設立に取締役/COOとして参画。現在は、これまでの実績を活かしてオプトの動画広告領域における新たな価値創出に取り組む。

村岡:
面白いクリエイティブを作ろうとすると、どうしてもセンスに頼ってしまうところがあり、組織としてそれを平準化して生み出す難しさがありそうですよね。また、そもそも「面白かったら売れるのか?論」が出ることもありませんか?

中村(オプト):
そうですね。「面白いって何?」は、ずっとある課題だと思っています。言語化するのが難しいのですが、やはり広告主様が言いたいことを、視聴者の求めている形に置き直すアプローチが重要なのではないでしょうか。ブランドを傷つけないかを踏まえたうえで、できるだけ視聴者が身近に感じられる要素を動画のエッセンスに入れていく。それが「面白い」につながっていくと思います。ですから、動画クリエイティブへのUGCの活用は一つのカギになると考えます。

N1理解をしてこそ、お客様への最適なコミュニケーションにつながる

村岡:
セプテーニ・クロスゲートさんが現在注目しているトレンドや、変化するダイレクトマーケティングにどう立ち向かっているのか教えてください。

岡本(セプテーニ・クロスゲート):
現在弊社が力を入れているのは、広告と商品LPの間に挟む、記事LPやアンケートLPといったクッションLPを活用した獲得施策です。広告からいきなり商品LPに遷移させるのではなく、まずはターゲットにしっかり刺さる内容のクッションLPに誘導し、そこで商品への理解を促すことで、最終的なCPAが大幅に改善する事例が生まれています。

この施策で成果につなげるための最大のポイントは、とにかくN1の理解を突き詰めて行うことです。ファーストビューやCTAなど各種要素のハイスピードな検証は当たり前に行いますが、それだけでなく、パーソナルインタビューを通じて徹底的にインサイトを深掘し、意識変容を起こすコミュニケーションプランを設計することで、実際に成果の出るクッションLPを生み出すことができています。

岡本氏

株式会社セプテーニ・クロスゲート デジタルマーケティング事業部 クリエイティブ課 マネージャー 岡本 智代子 氏
2014年より化粧品・健康食品通販を生業とする企業様の営業を担当。営業部門の統括経験を経た後、クリエイティブディレクターに着任。現在はクリエイティブユニットの統括として企画やライティング、デザインから検証まで運用検証に関する一貫した制作に携わる。

村岡:
ワンスターさんはいかがですか?現在注目しているトレンドや、注力している領域を教えてください。

小久井(ワンスター):
弊社もN1の理解を非常に重要視しており、直近特に力を入れています。商品の機能価値だけで差別化してお客様に買っていただくことが年々難しくなってきていると感じており、機能価値以外の意味づけをどう作るのかが重要になっていると考えます。そのヒントを探るために、改めて3C分析やユーザーインタビューなどを通じた顧客のインサイト理解を行っており、そこから発展させてお客様に個別最適化した導線を作る取り組みに注力しているところです。

最近成果につながったのはパーソナライズLPです。広告から記事LPやアンケートLPに流入したお客様の次の工程として商品LPに誘導するのではなく、クッションLPから直接チャットボットにつなぎ、会話形式で個々のユーザーが欲しい情報を提供することで、大幅なCVR改善につながった事例が生まれています。

小久井氏

株式会社ワンスター デジタルDRM事業部 エリア事業本部 クリエイティブ局 局長 小久井 志織 氏
2014年ワンスター新卒入社。 2020年よりクリエイティブ局 局長。 入社以来、化粧品・健康食品案件のクリエイティブ制作に従事。 法令や各ブランドのレギュレーション遵守を徹底しつつ、日々多くのA/Bテストを高速で実施。多くの改善事例と独自のノウハウで通販企業の売上拡大に貢献している。

村岡:
両社様とも「N1理解」をキーワードに挙げていらっしゃいますね。従来、N1理解は広告主側の仕事だったと思いますし、実際に広告主側でもN1調査をされているのではないでしょうか。そのような中で、広告代理店だからこそできるインサイト発掘の観点では、どのような工夫をしていますか。

岡本(セプテーニ・クロスゲート):
広告主様側では、基本的には「この商品をいいと思っているユーザー」にパーソナライズしてマーケティングしていくと思います。一方で、代理店は一歩引いた立場、あるいは広告主様と並列になりながらも別視点を持つことが重要です。例えば、「この商品は微妙だと思っていたけれど、使ってみたらよかったと感じているユーザー」など、ライトな層や、買わなかった層にまでアプローチする工夫ができると思います。

小久井(ワンスター):
同感です。N1の理解とはいえ、そのN1をどういった属性から持ってくるかで回答は変わってきます。まずはN1にどのようなラベリングができて、どこから持ってくるかのスクリーニングが重要だと考えます。

また、広告主様がいいと思っているものが素直に消費者に届いているのかは、第三者として代理店が進言していくべきだと思っています。「伝えたいことが、意外と伝わっていないですよ。」「だからちょっと表現を変えてみましょうよ」をご提案することが代理店のバリューではないでしょうか。

成果を出しやすい広告主と代理店のパートナーシップとは

村岡:
今、広告主と代理店の役割分担の話が出ましたが、成果を出しやすい理想的な広告主と代理店のパートナーシップとはどのようなものだと思いますか?

村岡氏

アライドアーキテクツ株式会社 取締役 村岡 弥真人
大手ガラスメーカー勤務を経て2012年にアライドアーキテクツ入社。2014年よりSNS広告に特化した広告代理事業を立ち上げ、自社最大の事業まで事業拡大を行う。2016年にUGC Centric Creative Platform "Letro"の提供を開始、Facebook及びInstagramのオフィシャルパートナーに。2017年より自社プロダクト事業全体の統括を行い、ベトナムの開発子会社2社の経営も兼任。2018年CPOに就任。2021年取締役就任。

中村(オプト):
何より大切なのは信頼関係だと考えます。簡単に構築できるものではなく、商材や顧客を深く理解し、一つ一つの施策にしっかりと向き合い、結果を分析して改善を積み重ねていくことでしか得られないと思います。

小久井(ワンスター):
私も信頼関係は大前提だと考えます。弊社もビジョンとして伴走型のD2C支援を掲げています。コンバージョンの件数やCPAが必達であることはもちろん、それ以上の事業成長にどれだけコミットしていけるか、広告主様と目線を合わせてビジネスを創造していけるかが重要だと思っています。

パートナーシップ

村岡:
一方で、代理店側もたくさんの案件を抱えており全ての広告主にコミットしきれない、どうしても広告予算が多い広告主が優先になってしまうこともあるのではと考えます。このあたりのバランスはどう取っていますか?

小久井(ワンスター):
今までの多数の広告主様の支援実績から培ったノウハウをもとに、少ないリソースながらも勝率の高い施策を提案できると考えています。

村岡:
昨今「インハウス化」もトレンドの一つとなっていますが、代理店はその中でどのようなバリューを発揮すべきでしょうか。

井手(電通デジタル):
広告主様がインハウス化しようとすると、企業文化や評価の仕方、人員の確保、オペレーション体制など考えなければいけないことがたくさんあります。代理店は従来のメディアスペンド(媒体への出稿)だけをやるのではなく、広告主様のインハウス体制づくりや戦略策定、調査、オペレーション支援などでもバリューを発揮すべきと考えます。以前は「CPAだけ合わせればいいよ」だった世界観から、代理店に求められる領域がむしろ広がっているのではないでしょうか。

村岡:
代理店自身のあり方にも変化が求められているということですね。そうした中、社内の体制作りで工夫していることはありますか?

岡本(セプテーニ・クロスゲート):
一人一人がカバーできる領域を増やしています。例えば、クリエイティブディレクターが戦略づくりにも入り、記事LPの原稿書いて、画像も手配して、クライアントへの納品もして…といったように、幅広い業務を担当したり。けっこう大変なところもありますが、皆がそれをできる筋肉質な組織を作れれば、サービスレベルは飛躍的に上げられますから、頑張り時です。

中村氏 小久井氏 岡本氏 井出氏

避けられないAIの潮流‥ダイレクトマーケティングではどう活用していく?

村岡:
最後に、AIの活用について取り上げたいと思います。chatGPTといったAIの飛躍的な発展によって、マーケターや代理店の業務が代替される危機も囁かれることがありますが、皆さまはこのAIの潮流をどのように捉え、どう活用していきたいと考えていますか?

中村(オプト):
AIに代替されるのではなく、AIを上手く活用することで、本来人間が行うべき領域に時間を使っていきたいです。オプトでは、ChatGPTと効果予測AIを活用し、多数の広告テキストから厳選することで効果的な広告クリエイティブを実現する「CRAIS for Text」を開発しました。消費者の属性や好み、趣味嗜好にあわせた広告テキストを短時間で何パターンも制作し、効果予測と組み合わせることで今後の広告運用の効率化に貢献できると考えています。

井手(電通デジタル):
電通デジタルは2022年に「∞AI(ムゲンエーアイ)」というサービスをリリースしました。クリエイティブ制作プロセスの4つの工程「訴求軸発見」「クリエイティブ生成」「効果予測」「改善サジェスト」において搭載された各AIが、一連の流れを途切れることなく支援することで、広告クリエイティブ制作プロセスを革新させるものです。AIがスケールするのはまだまだこれからですが、しっかり時代の流れを捉えてゲームチェンジを起こせればと考えます。

村岡:
皆さま、本日は貴重なお話をありがとうございました!