サンスター|オフラインからオンラインへ、「緑でサラナ」が切り拓いたメーカーD2Cの軌跡

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人々の健康の増進と生活文化の向上を社是として掲げるサンスター株式会社。同社はデジタル領域において多岐にわたるプロモーション活動を展開しています。特に、「緑でサラナ」における新規獲得および継続購入の施策は、健康志向の方々の生活をサポートする取り組みとなるように積極的に実施しています。

今回は、ダイレクト営業部企画グループの岸本氏に、大手メーカーがD2Cを始めたきっかけや、これまでのマーケティング施策の変遷、さらにメーカーならではのこだわりについてお話を伺いました。

※2025年4月10日に開催したセミナー「メーカーD2Cの戦い方〜顧客とつながり利益を生む直販モデルの実践手法〜」のサンスター株式会社 岸本様のお話の内容をもとに作成しております。

はじまりは「心身健康道場」で飲まれていた手作り青汁

ー「緑でサラナ」の立ち上げ背景や目的を教えてください

岸本氏:
「緑でサラナ」の立ち上げには、サンスターの歴史が深く関わっています。皆さんご存知かもしれませんが、サンスターは歯磨きやオーラルケアのイメージが強いと思います。でも実は、35年も前から健康食品ブランド「健康道場」があり、健康関連事業に取り組んでいます。そして、その成果の一つがこの「緑でサラナ」です。

実は、もともと私たちの社員の健康を考えて設立された「心身健康道場」という健康増進施設があり、そこで実践している健康法を広めたいという思いから商品が誕生しました。1995年には、「心身健康道場」で毎朝飲み続けられてきた手作り青汁を商品化した「おいしい青汁」が販売開始され、それが「緑でサラナ」の前身の商品となっています。

「緑でサラナ」は8種類の野菜と2つの果物が入っていて、その中でもブロッコリーとキャベツから取れる天然のアミノ酸(SMCS)が、血中コレステロールを下げる効果があります。それがトクホ(特定保健用食品)として認められたので、健康を意識している方にはピッタリの商品です。一缶で100グラム分の野菜が取れるので、日常で野菜が足りないと思っている方には嬉しいものとなっています。

そういった背景があって商品化された「緑でサラナ」には、健康を大切に考えるサンスターの思いが詰まっています。

緑でサラナ_1 緑でサラナ_2

オフラインからオンラインへ時代の変化に応じた施策

ー最初は社員向けだったんですね。消費者向けに発売されてから「緑でサラナ」はどのように新規顧客を獲得したのですか?

岸本氏:
発売当初、「緑でサラナ」は主にオフラインのマーケティングチャネルを活用していました。新聞や折り込みチラシを介したレスポンス広告を展開し、これにより多くの新規顧客を獲得することに成功しました。一時期は、これが売上成長の起爆剤となっていました。

しかし、コロナ禍を経て業界全体の流れが変わり、機能性表示食品やサプリメント市場の競争が激化しました。その結果、一時売上が伸び悩む時期もありました。この中で、「緑でサラナ」は、コレステロール対策ができるトクホ(特定保健用食品)の野菜ジュースというユニークな商品力と、顧客インサイトをもとにした訴求開発やプロモーションの改善を経て、さらなるプロモーションの軸を得ることができました。

以降、販売戦略としてはデジタルへシフトしていくことが不可欠となり、オンラインでの存在感を強めるために様々な試行錯誤を行ってきました。デジタルシフトが進む中で、現在は売上の約70%がデジタル経由となっており、特にMetaやYouTubeに対する施策を強化しています。特にアライドアーキテクツさんに企画から制作まで実行していただいた、通称「罪深いご飯訴求」といった特徴的なコンテンツが話題を呼び、消費者の共感を得ています。

※左:通称「罪深いご飯」訴求。ギルティーな食事が好き・食べたいけどコレステロールが気になる顧客の心理に共感する内容。
※右:顧客インタビューを通じて制作された「ブロッコリースムージー」訴求。

加えて、顧客インタビューを通じて得たインサイトに基づき、クリエイティブを展開することでさらなる改善を図っています。たとえば、1年前に出会ったお客様が「緑でサラナ」をママ友との間で「ブロッコリージュース」と表現されている話を聞き、広告でもその表現を活用してみました。世の中にある商品カテゴリとして「トマトジュース」などは一般的ですが、「ブロッコリージュース」というのは意外性があり、掛け合わせる動画で美味しさを強調し、視覚的に魅力的な要素を加えることで顧客の関心を引きつけています。

このように、オフラインからオンラインへと柔軟に施策を移行しつつ、顧客とのコミュニケーションを重視したマーケティングを推進しているのが現状です。

N1インタビューにこだわる理由

ー「顧客とのコミュニケーションを重視」とありましたが、施策について詳しく教えてください

岸本氏:
サンスターでは、特に、N1インタビューを重視しています。最近ではこのインタビューの取り組みが部内でも定着し、具体的な成果を上げていると感じています。

私たちはお客様の声を直接聞くために、社員がLINEのビデオ通話を使って、年間30人ほどの方と一時間半にわたる一対一の対話を行っています。これにより、プロモーション担当者自身が「この企画をしたら、どんな反応をもらえるだろうか」「この施策をしたら、お客様に喜ばれるかどうか」といった具体的な洞察を得ることができます。これを基にして、クリエイティブの制作やCRMの改善に役立てています。

岸本氏

ーインタビュー実施の前後にこだわりがあれば教えてください

岸本氏:
特にこだわっているのはインタビュー前に宿題として事前アンケートをお願いすることです。お客様の健康ヒストリーを教えていただくことで、人生の出来事や食習慣について教えてもらっています。これにより、お客様の価値観や商品選択に影響を与える要因を深く理解できます。

また、ある一日の食事をすべて写真で送ってもらうことで、どのようなシチュエーションで「緑でサラナ」をお飲み頂いているのかを把握しています。実際の飲み方や、どんな時に、何と一緒に飲まれてるのかがわかることで、より具体的なマーケティング活動へとつなげられます。

インタビュー後にはすぐに振り返り会を実施し、アイディアを出し合い、「このお客様ならこんなことを喜んでくれるかも」というインスピレーションを集め、ネクストアクションにつなげています。こうした積み重ねが、顧客理解を深め、より精度の高いターゲティングとパーソナライズされたマーケティング活動につながっていると思います。

事前アンケート

信頼を築くマーケティング施策のチャレンジとは

ー今後チャレンジしたいマーケティング施策はありますか?

岸本氏:
「緑でサラナ」は、薬やサプリメントではなく野菜のチカラでコレステロールを下げるという珍しい特徴を持っており、多くのお客様から実際にコレステロールが下がったといった満足度の高いお声を頂いています。商品担当者としても、緑でサラナの商品力の強さに驚かされる事も多いです。だからこそ、コレステロール対策といえば「緑でサラナ」といったポジションを業界で築くことが目標です。そのためには、デジタル領域だけでなく、プロモーションの領域をもっと広げ、認知度を上げていきたいと考えています。
とはいえ、トクホ(特定保健用食品)として認可されているため、商品の改良には慎重さが求められます。

そこで、ダイレクト営業部企画グループでは訴求価値の明確化に取り組んでいます。例えば、日本人間ドック健診協会や日本災害食の推薦を受けるなど、信頼性を高める取り組みを進めています。これらの権威ある機関と協力することで、商品への信頼性を高め、市場での地位をさらに強化していきたいと考えています。

こうした取り組みを通じて、「緑でサラナ」をより多くの方に知っていただき、高い顧客満足度を維持しつつ、新たなマーケティングの地平を切り拓いていきたいと思っています。

岸本氏

お客様と共に歩むD2Cビジネス

ーD2Cビジネスで今後も大切にしたいことはありますか?

岸本氏:
やはりお客様と直接つながることによって生まれる価値だと考えています。この直接的なつながりこそが、ダイレクトビジネスの最大の魅力だと思います。私たちは、お客様とのコミュニケーションを通じて、新製品のアイディアやプロモーションの効果を直に感じることができると思っていますし、新しいアイディアを試して、それがどのように受け入れられて売上に影響を与えるのか、すぐにフィードバックを得られるのは非常に面白いことであり、やりがいを感じます。

このようにお客様から直接得られる声や反応は、事業の方向を考える上で非常に貴重です。だからこそ、私たちは常にお客様が本当に求めているものを追求し、それに素早く応えることを心がけています。迅速に動いて柔軟に対応することが、D2Cビジネスで成功するためには欠かせない要素だと思っています。

これからもお客様との直接的な繋がりを大切にして、その声に耳を傾け、新しい価値を提供していくことを続けていきたいと考えています。