「敏感肌専門ブランド」としてポーラ・オルビスグループより2007年に誕生したDECENCIA(ディセンシア)。自分自身の本質を見極め、こだわりを持って生活する女性に向けたスキンケア製品を提供しています。
同社は、デジタル化が進む現代において一貫したブランドメッセージの伝達が難しく、SNS上での発話(UGC)を増やしたいものの不足していると感じていました。
今回は、ダイレクトマーケティング事業部広告宣伝グループの奈良澤氏と多田隈氏に、UGC増加施策の強化に至った背景や、Letroをパートナーに選んだ理由、そして具体的な成果についてお話を伺いました。
ーDECENCIAのブランドの特徴やターゲット顧客層を教えてください。
奈良澤氏:
DECENCIAはポーラ・オルビスグループですが、実は、新しい化粧品ブランドを展開したいという形で始まったのではありません。社員のなかに重度の敏感肌に悩む家族をもった研究員がおり、その研究員がスキンケアで前向きに生きられる日常を提供したいという願いから開発されたブランドでした。
敏感肌というのは生まれ持った特性ではなく、その時の体調や環境変化によっても影響されるものです。生まれつき敏感肌という方だけではなく、全ての方が敏感肌に悩む可能性があるため、このような理解のもとで、DECENCIAは敏感肌専門のスキンケアブランドとして進化してきました。
実際には肌の角層ケアに対するお悩みを解決できる技術を持っていることが自社の特性だと考えていますが、基本的には「敏感肌の専門ブランド」と認識いただいているお客様が多いと感じています。
ターゲットとする顧客層は、自分の日常や生き方に深いこだわりを持ち、自身の健康や美に対して慎重かつ確固たる意志を持った女性たち。本当に自分に必要なものを見極めようとする姿勢を持っているような方です。このような女性たちが求めているのは、安心して使えるだけでなく、その背後にあるストーリーやブランドの価値観だと捉えており、自信をもってご提供しています。
ーここ数年でスキンケア市場にどのような変化がありましたか。
奈良澤氏:
主要な変化としては、新しいプレイヤーの登場と、情報発信の多様性の増加が挙げられるのではないでしょうか。特に韓国コスメを代表とする新興ブランドの台頭は、市場に大きな影響を与えました。彼らは独自の成分や製法で、消費者に新しい価値を提供しています。
さらに、SNSの普及で情報発信者が増え、消費者は多様な意見やレビューを容易に取得できるようになりました。InstagramやTikTokなどのプラットフォームの成長により、これまで存在しなかった密度とスピードでの情報交換が可能となり、特定の製品やブランドが爆発的人気を博すことがあります。この新しいサイクルの中で、メーカーは消費者だけでなく、情報発信者に対しても魅力的な商品を開発することが求められています。
変化は消費者の購買行動にも影響を与え、高い価格帯の製品に対する信頼性はもちろん、持続可能性や倫理性も重視されるようになってきています。こうした消費者の価値観の変化に対して、DECENCIAとしてもどのように対応し、さらに革新を続けられるかが重要な課題だと考えています。
ーそのような市場の変化もあるなか、2022年にはブランドのリニューアルをされたのですね。どのような背景があったのでしょうか。
奈良澤氏:
元々、敏感肌に特化したブランドとして立ち上げ、市場に浸透してきましたが、市場の拡大の限界を感じ、変更の必要性を突きつけられていました。
従来のブランドでは敏感肌という明確なニッチ層をターゲットにしていましたが、リニューアルでは「誰もが敏感肌になりうる」という広い視点を取り入れました。これは、敏感肌の定義を再解釈することにより、より多くの人々に響くブランドメッセージを発信するというものでした。例えば、季節の変わり目や生活習慣、ストレスなど、さまざまな要因で肌が敏感になりやすいという事実を基に、すべての人に幅広く訴求する方針にシフトしました。
さらに今回のリニューアルにおいては、消費者が共感しやすいストーリーを内部カルチャーに含めることを重視しました。敏感肌というテーマを深掘りし、全ての人が自己ケアの重要性を再認識できるような発信を強化しています。
このように、リニューアルは単なるビジュアルやメッセージの刷新ではなく、市場戦略全体を見直す契機となり、将来に向けたブランドの新たなスタートラインを引く重要な手段だと考えています。今後もこの方向性を持ちつつ、新しい市場の開拓に邁進していくつもりです。
ー貴社が新しい価値提供をするうえで強化しているマーケティング施策について教えてください。
奈良澤氏:
最も強化していきたいのは新規顧客獲得です。それに対し長年続けてきたダイレクトマーケティングについては、メールやLINE、アフィリエイトを中心に一定の成果があがっていたのですが、マーケットやターゲットのニーズが進化する中で、現状のままでは成長が停滞する恐れがありました。
そこで、多様な意見やレビューに触れやすくなった市場やユーザーの状況に対応するための新しい手法として、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の可能性を模索し始めました。具体的にはSNS上での発信を創出し、それをLPに掲載する手法です。
多田隈氏:
UGC施策については明確な効果を実感しています。最初に驚かされたのは、UGCの有無による差分です。当初はそれほど変わらないと考えていましたが、設置場所や内容、具体的にはInstagram投稿やテキストの使い方などによって、数字が大きく異なることがわかり、今では運用することを楽しいと感じるまでになりました。
ーそもそもUGCの施策に取り組もうと思ったきっかけはあったのでしょうか。
奈良澤氏:
UGC施策に取り組むことを決めたきっかけは、消費者の信頼獲得やエンゲージメントを強化する必要性が高まったことでした。UGCという消費者視点のコンテンツを活用することでブランドの正当性を強調できます。他の施策と比較した際、UGCは消費者が自らの言葉で体験を語ってくれるため、自然な形での購買意欲を喚起します。
具体的なUGC創出のプロセスとしては、ギフティングや詳細なレビュー依頼などがあります。例えば、消費者に製品を試用してもらい、その体験をSNSで共有してもらうよう促しています。
ーパートナーとして「Letro」を選んでいただいた理由を教えていただけますでしょうか。
奈良澤氏:
Letroを選択したのは、単にUGCを活用するだけでなく、その創出プロセスを包括的にサポートしてくれることが決め手でした。UGCが少ないブランドにとって、ゼロからこれを生み出し、新しい価値を生み出すことができるLetroは理想的な選択でした。
またLetroは部内でも以前から知っているメンバーが複数おり、信頼のおけるパートナーであると感じていたこともあり、ご一緒させていただくことにしました。
ー具体的にはどのような運用を行っているのか教えてください。
多田隈氏:
運用のスタートは、既存のお客様からのテキストレビューの掲載でした。これはまず、商品への信頼を高めるためのファーストステップとして有効でした。
その後、UGCをさらに強化するためにA/Bテストを活用しました。具体的には、LPにおけるテキストレビューの「あり・なし」テストを行い、コンテンツがCVRにどのように影響するかを検証しました。これにより、テキストレビューを掲載することで、CVRが1.16倍に向上したことが確認されました。
さらにUGCの運用で強化していることとして、流入経路ごとの計測と検証も行っています。例えば、アフィリエイト経由からLPに訪れたユーザーにとってどのような訴求がインパクトがあるかなど、経路ごとに細かく分析しています。これにより、どの流入経路でUGCが一番効果を発揮するのか明確にすることができ、より効率的な活用方法が見えてきました。
ーUGC施策を進める中で、難しいことや大切にしていることはありますか?
多田隈氏:
難しいと感じていることは、UGCをどの段階で、どのように顧客体験と結びつけるかです。例えば、UGCを主要コンテンツとして前面に押し出し過ぎると、DECENCIAが大切にしているブランドメッセージが希薄になる可能性があります。そのため、運用の中ではUGCを「購買のアシスト」として、自然かつ効果的な配置を心掛けています。使用方針を見直しながら、慎重にトライ&エラーを繰り返している段階です。
一方で大切にしているポイントは、商品の信頼性を高めることです。
UGC施策は単なる広告ではなく、消費者とのコミュニケーションを深め、信頼を構築するための重要な要素となっています。「買いたい」と決意した消費者は早めに行動しますが、UGCが購買意欲をさらに引き出し、慎重な消費者層にもアプローチできることがわかりました。異なるメディアの流入経路ごとに最適なUGC配置を探り、より効率的に活用していきたいと考えています。
ー最後に、今後の展望をお聞かせください。
奈良澤氏:
スキンケア市場の変化を踏まえ、UGCを活用することは重要であると考えています。ペイド広告でタレントを起用してもUGCが増えないことを踏まえ、ブランドの信頼性を自然と高めるUGCは不可欠な存在です。特に敏感肌という文脈で、季節の変わり目や花粉の時期にお客様が共感するようなコミュニケーションを展開していきたいです。
多田隈氏:
Letroの担当者とは、常に連携を取り、各施策を包括的に考えることができています。「こういうことをしたい」という要望を汲み取っていただき、具体的な提案をしてくださるので、一緒に仕事を進めることが非常に楽しいです。
今後も、柔軟で創造的なアプローチを取り入れながら、UGCを通じてブランドのメッセージを広く浸透させたいと思っています。この方向性を持続し、市場での存在感をさらに高めていく意向です。
記事公開日:2024.12.20