キリンビール社に学ぶ!UGC施策の裏側とこれから【UGCディスカッション イベントレポート】

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UGCディスカッション

●登壇者紹介
キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部 加藤 美侑氏

ここ最近、SNS上で企業による様々なUGC(※)施策が増えています。そんな中、SNSマーケティング業界では「UGCは大事といわれているが、UGCをどう作るかはあまり語られていない」というのが現状です。

こうした背景の中、アライドアーキテクツでは2019年8月22日(木)に「UGC施策に力を入れている企業が大集合!生活者に語られるブランドのUGC生成施策」と題するセミナーを開催。当日は「マーケティング担当者が明日から実践できる知見を得られること」を目的に、多岐に渡るUGC生成施策を実践してきた企業の取り組みについて議論を交わしました。本記事は、その一部を抜粋したイベントレポートです。

(※)UGCとは:
UGC(User Generated Contents)とは企業ではなく、一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのことを言います。 最近はInstagramなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されています。

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キリン社が実感するUGCの効果とは

-キリンビールさんは、インスタグラムを中心にUGCをご活用されていますよね。UGCのどういうところに価値を感じたのですか?

加藤氏:UGCを活用する大きな理由が1つあります。それは、食卓テーブルにビールがあるシーンや、フェスや海などでの利用シーンをUGCを使って投稿することで、投稿を見た方に「自分だったらこうやって撮影しよう」「自分もいつも似たシーンでビールを飲んでるな」と商品を想起していただくことができるからです。

それに、キリンビールの商材は缶が中心なのでインスタ映えもなかなか難しいですし、エモい写真を投稿したところで、投稿を見ているお客様には刺さりにくいんです。そこで「じゃあ投稿用の画像は何がいいんだろう?」と考えたときにUGCにたどり着きました。

自分の投稿した写真がキリンビール公式アカウントで紹介された方は公式に紹介されることで更にファンになってくれますし、その周りの人たちも「自分も投稿してみようかな」となるような、うまい循環が回らないかなと思ったんです。

キリンホールディングス株式会社 加藤 美侑氏 UGCセミナー
キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部 加藤 美侑氏
2006年に国内食品メーカーに入社後、情報システム部を経て宣伝部デジタルプロモーション担当に。2015年よりキリン株式会社デジタルマーケティング部にてRTD(=ReadyTo Drink)ブランドとクラフトビールブランドのデジタルマーケティングを担当。産休育休を経て現在はキリンビール公式Twitterアカウント、Instagramアカウント、Facebookアカウントの企画・運用を担当。

-ありがとうございます。キリンビール社では全社共通で「UGCのようなコンテンツは大事だよね」という認識を持っているのでしょうか?

加藤氏:UGCの効果を明確な数字には出せていないですが、私個人としては絶対に購買に寄与していると思っていて。SNSで友達の投稿を見て「このケーキ買いに行こうかな」とか「このコーヒー飲みに行こうかな」と思うことって絶対にありますよね。

このように、少なからずマーケティング担当は「キリンビールのUGCも購買に寄与している」という認識を持っていますし、実感がある。なので、社内でもUGCに対しての理解はちゃんとあると思います。

【#きょうのキリン】UGCを生む「オリジナルハッシュタグの活用方法」

-では、本日のメインテーマでもある「どのようにUGCを作っていくのか」をお伺いしたいです。UGCを施策に転じていく中で、キリンさんはハッシュタグをどのように活用しているのでしょうか?

加藤氏:キリンビールでは「#きょうのキリン」というハッシュタグを通常投稿やお客様投稿を紹介するときにつけることを徹底しています。これはなぜかというと、ハッシュタグを1つに絞って活用することで、お客様も他の方がどういう投稿をしているのかを検索しやすくなるからです。例えば一番搾りだったら「日常のこういうメニューと合わせるといいんだ」とか、クラフトビールだったら「こういうおしゃれなテーブルコーディネートもいいかもな」とか。このリアルな情報がお客様の参考にもなりますし。

でも実は最初「#きょうのキリン」の投稿数はすごく少なかったんです。そもそもキリンという企業名が入ったハッシュタグをなかなか使いたくないと思うんですけど。なので、よくある「○○スタグラム」というようなハッシュタグを入れようかなという気持ちもありましたが、それはぐっと我慢しました。

投稿につけるハッシュタグをとにかく「#きょうのキリン」に絞って、お客様のUGCの紹介も続けていたら、だんだんだんだんハッシュタグをつけた投稿数も増えてきて。投稿数が増えると、今度はお客様の投稿にもハッシュタグを付けていただけるようにもなりました。

UGCセミナー 対談

-お客様の投稿数が増えた実感を持てたのは、公式アカウントを始めてどれくらいですか?

加藤氏:結構な時間がかかりました。たぶん、半年くらいはかかったと思います。やっぱり、最初は投稿数が少ないので「このハッシュタグって本当にいる?」という感じでだんだん不安になってくるんですけど、その気持ちもぐっとこらえて投稿して続けてきました。あとは、商品のブランド側が広告をかけたりインフルエンサー施策をかけたりをしているのですが、そこにも「#きょうのキリン」をつけていたので、その効果で増えていったというのもあります。

-ありがとうございます。「#きょうのキリン」と聞いたときに、まずパッと見てブランド名が分かるところと、間違えられないような適度な長さのハッシュタグだなと思いました。オリジナルハッシュタグのネーミングはすごく難しいと思うのですが、どのように考えられたのでしょうか。

加藤氏:ハッシュタグをつけ間違えないように個別のブランド名ではなく、共通の「キリン」にしたことと、「今日」をひらがなにしたのは漢字よりもひらがなのほうが目に留まりやすいからです。あとは時間軸があるハッシュタグのほうが、弊社の商品のように毎日飲んでくださる方が引用しやすいですよね。毎日のように接点を持てる商材なので、あえて「今日」をつけています。実際、毎日ように「今日の食卓は〜」と、毎晩投稿してくださる方もいらっしゃいますよ。

キリン UGC活用

キリン社インスタグラムの「KPI」と「UGCの活用方法」

-加藤さんは、インスタグラムのどういう数値をKPIにして運用されているのですか?

加藤氏:今、インスタグラムのKPIはきょうのキリンのハッシュタグの発話量も指標の一つです。

-実際に、どのようにUGCをインスタグラムで活用いただいているのでしょうか?

加藤氏:最近ではお客様の投稿を使わせていただき、1度に複数枚投稿しています。例えば、テーマを「ビアガーデン」にしたり、「野球×ビール」「焼き鳥×ビール」「餃子×ビール」などの写真をまとめて投稿しています。

お客様が「あー!その組み合わせわかる!」というテーマの投稿をすると反応がいいんですよ。新商品の告知のためにすごく頑張って撮影して投稿しているんですけど、やっぱりエンゲージメントの数字はお客様の投稿画像には勝てないんです。もうずっとそんな感じですね。

UGC活用 エンゲージメント率大幅改善

-複数枚投稿では、投稿してくれたお客様の@メンションを付けているんですね。この@メンションをつけることで、投稿した人が「あ、キリンさん投稿してくれた」って気づいて、またちょっとテンションが上がると。

加藤氏:そうそう、そうなんですよ。そして、その投稿をまたストーリーズに上げてくださったりとか、スクリーンショットを撮って「私の投稿がキリンさんのインスタグラムで紹介されました」みたいなことを言ってくださるので、すごくいいなぁと思っています。

-ありがとうございます。もう1つ、担当者が無理をせずに運用を継続することもポイントですよね。

加藤氏:そうですね。継続運用はすごく大事なことだと思います。実は、私が担当になった当初、インスタグラムに張り付いてお客様の投稿にいいね!をたくさんしていたんですけど、すぐに息切れしてしまって(笑)。 きつくなってくるので、「気づいたときにやればいいかな」というテンションに変えました。そうすると無理なく緩やかに続けられるので良かったなと思っています。

あと、コメントを返すのも一つの手だと思うんですけど、コメントが増えてくるとやりきれないのと、「何でこの人に返してこの人に返してないの」ということにもなってしまったりもします。なので、「#きょうのキリン」をつけてくれた人の投稿には、ちゃんと見に行っていいねしますよというスタンスです。

キリン株式会社 加藤氏 セミナー対談

-いいねをしにいくのは地道ではありますが、UGC の数を増やしていくためには重要なんですね。

加藤氏:そうですね。私は、例えばエレベーターを待っている間にいいねをしに行ったり、コンビニのレジに並んでいるときとか、そういうタイミングでやっていますね。やっぱり「このハッシュタグで投稿してくださいね!」と言っておいて、何もリアクションしないのは人としてどうかなって思うので。できる範囲でちゃんと返すようにしています。

ここ最近はUGCも増えてきたので、今後はUGCをもっと商品のマーケティングに使えたらなと思っています。広告に使うのでもいいですし、商品の開発や、コミュニケーションのネタとしてマーケティング部と連携できたら。というのも、弊社はBtoBtoCの商材なので、直接日常的にお客様とコミュニケーションが取れるのはSNSの担当だけなんです。お客さんの反応が分かったり、リアクションがあったり、UGCを通してお客様がすごく見えるので、連携を深められたらいいですね。