2023.10.3
InstagramやX(旧Twitter)をはじめとするSNSは、いまや企業の販促活動になくてはならないツールです。ただ、商品やサービスを大勢にアピールできる一方、SNSには常に炎上のリスクがつきまといます。
SNSの炎上を軽視し、対策を怠ることは、企業のイメージダウンに繋がることはもちろん、不買運動による大損害、対応のための支出など致命傷にもなり得ます。
そのためSNS運用のリスクヘッジとして、炎上対策は欠かせません。
本記事では
「SNSで炎上しないためには、どうすればいいのか?」
「もし自社のSNSアカウントが炎上してしまったら、どうすればいいのか?」
と悩むSNS運用担当者を対象に、炎上が起こるメカニズムや、実際に起きた過去の炎上事例、やるべき炎上対策、炎上した場合の適切な対応について解説していきます。
炎上とは
「WEB上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」
「特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる」
状態のことを指します。
企業が発信した配慮に欠けるメッセージがユーザーの反感を買う場合、店舗スタッフが不適切な動画を投稿した場合、画像の盗用や無断使用に対するバッシングなど、炎上の事例はさまざまです。
時には、他社の炎上騒動が飛び火して巻き込まれることもあります。
日本国内における炎上発生件数を示したデータでも、モバイルとSNSが普及し始めた2011年を境に炎上件数は急激に増加しており、個人・企業を問わず炎上の対象となっています。
また、株式会社エルテスが発表した最新の調査データでも、2023年上期のネット炎上件数は前期と比べて9.4ポイント増加したとの結果が出ています。
参考:2023年上期「ネット炎上レポート」を発表|株式会社エルテス
では、企業SNSはなぜ簡単に鎮火できないほど炎上してしまうのでしょうか?炎上が加速する流れと、バッシング拡散のメカニズムを確認しておきましょう。
1. 企業SNS上で問題となるメッセージ、画像、動画などが投稿されます。
2. その投稿を見たユーザーたちにより、批判の投稿が繰り返され、拡散されます。
3. 拡散と同時に、投稿に関する「まとめサイト」などが立ち上がります。
4. インターネット上のニュースサイトで炎上騒動が記事化され、時にはメディアで大々的に報道されることで、より多くの人の目に触れるようになります。
炎上が発生した際、企業は対応を迫られることになりますが、もしその対応が不適切であった場合、さらなる炎上騒ぎに発展してしまいます。
これが「二次炎上」ですが、二次炎上にまで発展してしまうと、簡単には鎮火できず、企業へのダメージや損害も計り知れません。
炎上を起こさないことはもちろん、適切な対策により、できるだけ早く鎮火させること、二次炎上へと発展させないことが重要です。
過去に起こったSNSの炎上事例を元に、企業SNSの代表的な炎上パターン5選をまずはチェックしていきましょう。
セクシュアリティ・宗教・政治に関する投稿は、物議を醸すテーマは批判を誘発するため、炎上しやすいパターンの一つです。
過去には、企業のSNSアカウントで発信された「女性スタッフの容姿や年齢に関わるメッセージ」が、女性を性的対象とみなすジェンダー差別と捉えられ、批判を浴びました。
この企業は自社のWEBサイトで謝罪文を掲載し、再発防止策を策定しました。
ジェンダーはもちろん、年齢で偏見・差別するエイジズム、容姿だけで評価するルッキズムは社会問題になっており、投稿においては特に注意すべきポイントです。
企業側が顧客を軽視したつもりがなくとも、消費者の一部に「馬鹿にされた」と捉えられると炎上する可能性があります。
例えば、企業のX(旧Twitter)アカウントにおいて、自社の商品を購入する女性を誇張してイラスト化したところ、「馬鹿にされているみたいに感じる」と不快感を示す声が殺到し、炎上しました。
「もう買いません」と不買を表明する声も多く、企業にとって大きなイメージダウンとなりました。
企業は「ユーザーに親しみを感じてもらうため」と釈明したものの炎上は収まらず、その後SNS上で謝罪し、該当の投稿を削除しました。
投稿の文言だけでなく、ハッシュタグも炎上につながる一因です。
社会全体で不快に捉えられる可能性がある言葉は、できるだけ使わないようにしましょう。
実際、日用品などを扱う店舗のSNS投稿に、犯罪を軽視するような不適切なハッシュタグが付けられていたことで炎上に発展しました。
企業側は「面白いネタ」のつもりで投稿したものが、ユーザーにとって不快感を抱く内容だったためです。
当時、このSNSアカウントは自由な発想力を期待して、運用をインターン生に任せていました。経験の浅い若手に一任していたこと、属人化によりチェック体制が不十分だったことで起こった炎上といえるでしょう。
「これを飲めば◯◯が治る」などといった薬事法・景品表示法違反も炎上するパターンの一つです。
LPや広告のクリエイティブにおいては薬事法をチェックしていたとしても、SNS投稿までチェックできていますでしょうか。
実際、ビューティーケアブランドのSNSアカウントで、自社販売のサプリメントを紹介する際、「薬事法に違反する表現」を使用したことで炎上しました。
商品パッケージや広告においてはリーガルチェックを行い、薬事法・景品表示法への配慮がなされていても、SNSは気軽さ故にチェックが甘くなりがちです。
たとえSNSでも企業が発信する公式なメッセージであることを認識しておく必要があります。
特定の個人・団体を、投稿者の主観で傷つける発言内容は炎上につながります。
仮に批判対象の名前を出さずに発言したとしても、フォロワーが詮索し、火種になるでしょう。
過去には、企業の人事担当者が、個人のSNSアカウントで「特定の採用希望者を誹謗中傷するようなメッセージ」を発信し、炎上しました。
個人アカウント名に所属企業名が入っていたため、投稿者だけでなく企業自体への批判にまで膨れ上がる事態となりました。
問題の投稿をした人事担当者は「あくまで個人の見解」と釈明しましたが、アカウントから所属している企業が特定できる場合、ユーザーは個人の見解とは受け取ってくれません。
社員一人ひとりのネットリテラシーを高めていくことも、企業に求められる対策の一つです。
SNSの炎上騒動は、一度起こってしまうと、鎮火はスムーズにはできません。
そのため日々のSNS運用において、炎上を予防する対策をきちんと行っておくことが大切です。
SNSの炎上事例でも挙げた通り、年齢や容姿、ジェンダー、LGBTQなどの性的マイノリティに触れる内容は、特に炎上しやすいコンテンツの一つです。旧来的な家族感や、“家事をする女性・外で働く男性”といった固定的な性的役割分担意識も避けましょう。
当然、特定の企業や店舗、人物を批判・侮辱することも絶対にNGです。誰か一人にでも不快感を与えるような内容であれば、投稿には不適切と判断します。
こうしたコンテンツの内容に加えて、気をつけたいのが投稿のタイミングです。大規模な災害や事件が起こった場合、ユーザーは普段以上に投稿内容へ過敏に反応しがちです。今発信することは適切かどうか、タイミングもきちんと見極めるようにしましょう。
SNS運用における炎上対策を策定する上で、過去に起こった他社の炎上事例は格好の教材です。
どうして起こったのか、当時の対応は適切だったのか、過去の事例を自社に置き換え、炎上対策を固めていきましょう。
大切なのは、チームメンバー全員で学びを深めていくことです。
チーム一人ひとりが炎上への知見を高め、強い危機意識をもって日々の運用業務にあたることが何よりも大切です。
過去に起こった炎上事例でも、運用が属人化しており、チェック体制が不十分だったために炎上を引き起こしたケースは少なくありません。
SNS運用担当者が一人しかおらず、誰のチェックもなく投稿できてしまう状態はとても危険です。万が一、炎上が起こってしまった際に、運用担当者一人が責任を負うことにもなりかねません。
SNS運用はチーム体制で取り組み、投稿内容に問題がないか複数人でチェックできる体制を整えましょう。
できるだけ性別、年齢、価値観に偏りがない人員でチームを構成することで、より炎上リスクを軽減できます。必要であれば、リーガルチェックの体制も構築しましょう。
さまざまな対策を行っていたとしても、炎上が起こってしまう可能性はあります。
炎上が起こった際にどう対応するべきかも、あらかじめ整理しておきましょう。
投稿が炎上し、どんどんと拡散していくさまを目の当たりにすると、冷静な判断ができないことも多々あります。
「どの投稿が問題となっているのか」「なにが良くなかったのか」「どこまで拡散しているのか」など、まずは現状を把握し、炎上の段階を冷静に確認しましょう。
「なぜ炎上したのか」もわからないまま、その場しのぎの謝罪をすることは鎮火させるどころか、炎上は膨れ上がるばかりです。
できるだけ早い対応がベストではあるものの、焦って対応を間違えることのないようにしましょう。
謝罪をする場合は、謝罪後にユーザーからどのような反応が返ってくるか、先の展開もあらかじめシミュレーションしておきましょう。
そうすることで、先手を打った対応が可能となります。
多くのユーザーは、企業へ「誠実な対応をしてほしい」と感じています。
なぜ問題となるような発信をしてしまったのか、どうしてそれが起こってしまったのか、その経緯や意図をきちんと説明することが大切です。
責任の所在を明らかにした上で、必要であれば誠意をもって謝罪します。
炎上に対して講じている措置はもちろんのこと、今後取り組むルール・チェック体制の整備、一人ひとりへのコンプライアンス研修など再発防止策もできるだけ具体的にユーザーへ示すことで、より誠実さが伝わります。
炎上した際に、もっともやってはいけない行動が「該当の投稿やアカウントを説明もないまま削除すること」です。
こうした”逃げ”の行動は、企業への不信感をさらに高め、失望や落胆を生みます。
一度、失墜した企業イメージは簡単には元には戻せません。
なかったことにせず、冷静かつ誠実にきちんと説明、対応することを心がけましょう。
SNS炎上が起こるメカニズムや、実際に起きた過去の炎上事例、やるべき炎上対策、炎上した場合の適切な対応について解説しました。
炎上の予防策や発生時の対応策をあらかじめ整備しておけば、SNS運用は決して怖くはありません。
SNS運用のポイントを押さえながら、炎上リスクを回避した効果的な販促を目指しましょう。
SNS運用ノウハウについては、以下の記事もぜひご覧ください。
▶【事例で解説】TikTok企業アカウント10選!動画作りのポイントは?
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記事公開日:2023.10.04