【最新版】DX人材とは?知っておくべき課題や育成・採用のカギ

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DX推進が遅れた場合、2025年以降年間最大12兆円もの経済損失が予測されているのをご存じでしょうか。 (通称2025年の崖)

独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)の調査によると、約9割の企業がDXに未着手もしくは部門単位での実施にとどまっています。
参考:DX 推進指標 自己診断結果 分析レポート (2020年度版)|IPA

企業がDX推進に足踏みする理由の一つは「DX人材の不足」です。

DX人材とは一体どのような人材を指すのか、日本企業が抱える課題や採用・育成のカギについて本記事では具体例を挙げながら解説します。

DX人材とは?具体的な職業やスキルを解説

DX人材について理解するためには、まずDXについて認識を揃えることが大切です。

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用してビジネスを変革し、顧客に新たな価値を提供することを指します。

その本質は、デジタル技術を駆使した新しいビジネスモデルがあらゆる市場で台頭する中、企業が勝ち残るために競争力を付けることです。

▼DXについてさらに知識を深めたい方はこちらの記事もおすすめです。
【最新版】DXとは?動画と事例で分かりやすく解説!デジタル化との違いは?

DX推進のプロセスは大きく3段階で、局所的なデジタル化である「デジタイゼーション」、業務プロセス全体のデジタル化を指す「デジタライゼーション」、そして新たなビジネスモデルや価値を生み出す「DX」です。

上記プロセスから、新しいデジタル技術への理解・知識があり、社内でデジタルを浸透させる推進力と事業開発力を兼ね揃えた人材が理想だと言えるでしょう。

実際に経済産業省はDX人材を以下のように定義しています。

自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材
引用:D X レポート 2 中間取りまとめ|経済産業省

一方、全てを兼ね揃えた理想のDX人材の獲得は不可能に近く、自社のDXの段階ごとに必要なスキルを持った人材を採用・育成していくことが重要です。

独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)はDX人材を7つの職種に分けています。

dx人材職種一覧表
引用:デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査|情報処理推進機構

では上記人材に必要とされるスキルにはどのようなものがあるでしょうか。
重要なスキルのうち5つ解説します。

① ビジョンを言語化し、組織を主導するスキル

主にプロダクトマネージャーやビジネスデザイナーに必要とされるスキルです。

DXの進んでいない組織では以下のような状況が散見されます。

・業務がアナログで、非効率な業務を行っている
・部門ごとに使っているシステムが異なり、データ連携が上手くいっていない

このような課題を解決するために、部署を横断してデジタル化を進めるリーダーシップが求められます。

自社の目指すべき姿 (ビジョン)を言語化し、チームを主導するため、必然的に経営層に近い人材となるでしょう。

② デジタルを用いてビジネスを構築するスキル

主にビジネスデザイナーに必要とされるスキルです。

ITツールを導入するだけや他社のDX事例を真似るだけでは、企業の競争力強化にはつながりません。

なぜなら、企業ごとに組織文化や提供しているサービスの価値・機能、保有しているデータの量 / 質が異なり、上手く言っている事例と前提条件が異なる場合が多いからです。

既存のビジネスモデルとテクノロジーを組み合わせて、新しいビジネスを生み出す能力が求められます。

加えて、企画したビジネスモデルを形にするために、エンジニアやデザイナー、営業など各方面とコミュニケーションをし、プロジェクトを進めなければいけません。

技術に明るくない方にも分かりやすく伝えられるプレゼンテーション能力、会議を進行するファシリテーション能力も同時に求められるでしょう。

③ システム全体の設計や構築をするスキル

アーキテクチャ設計能力とも呼ばれ、ビジネスデザイナーの企画をシステムに落とし込む能力で、テックリードに求められます。

家づくりの住宅設計を担う建築家のような役割で、局所的なプログラミングではなく、全体を設計する必要があります。

④ データを正しく把握し、分析するスキル

主にデータサイエンティストに必要とされるスキルで、データを正しく把握するための統計の知識や数学的思考が求められます。

「データがどうやって、どこに蓄積されているのか」を知ることも大切です。

例えばBtoB企業の場合、セミナーに参加した企業のデータ・過去名刺交換した方のデータ・商談につながった企業のデータ・企業の購買データなど、ビジネスの各プロセスで様々なデータが浮かび上がってきます。

⑤ システムを具現化するスキル

主にUI / UXデザイナーやエンジニアに必要とされるスキルです。

データ分析やビジネス構築を進めても、それを形にするスキルが無ければ絵に描いた餅になってしまいます。

一方、ソフトウェア・ハードウェアどちらの開発をするのか、ユーザーが本当に使いやすい仕様にするためにはどうすれば良いのか、など幅広い知識が求められるため、採用の難易度も高いと言えるでしょう。

DX人材に関する現状と課題

単に「デジタルへの知識・理解がある人=DX人材」ではないことが前項にて分かりました。では、一体どのくらい人材が不足し、どのような課題があるかを見ていきましょう。

経済産業省によると、8年後の2030年には約45万人のIT人材不足が見込まれます。
※)国勢調査を基に、IT 企業及び、ユーザー企業の情報システム部門等に属する職業分類上の「システムコンサルタント・設計者」、「ソフトウェア作成者」、「その他の情報処理・通信技術者」を IT 人材として試算

dx人材に関する調査
引用:IT人材需給に関する調査(概要)|経済産業省

さらに、企業の業態や地域によって、DX人材の偏りがあることもDXを阻む課題となっています。
例えば日本では、IT人材がIT関連企業 (ベンダー企業)に就業する割合が高く、ユーザー企業は慢性的なIT人材不足となっています。

dx人材の偏り1
引用:我が国におけるIT人材の動向|経済産業省

また、東京にIT人材が集中しており、地方企業のDX推進が進みにくい状況です。

dx人材の偏り2
引用:我が国におけるIT人材の動向|経済産業省

日本のDX人材の採用・育成の現場で起こっている課題として、次の4つが挙げられます。

① 人材の流動性と給与の低さ

日本企業は長期雇用を前提にしている企業が多く、法律上解雇をしづらいため、人材の流動性が低いです。

年功序列多を採用している企業も多く、スキルを持った若手人材に高い給与が支払われにくい状況となっています。

その結果、雇用環境や報酬の点でテックベンチャー・外資IT企業にハイレベルな人材が偏る事象が起きています。

給与体系の課題は地方自治体にも波及し、大阪府がIT業務民営化を検討しているニュースも話題です。

大阪府は公務員の給与体系で高度なスキルを持つ人材の確保は難しいと考え、新会社設立を視野に入れています。
好待遇で専門人材を迎えることによって、デジタル改革を加速させる狙いです。
参考:<独自>大阪府、IT業務民営化検討 5年度にも新会社設立|産経新聞

② ビジネスモデル上の課題

下請け型ビジネスモデルにより、IT事業の利益率が下がり、技術者に高い報酬が支払われないという課題です。

例えば、A社がB社というIT企業に依頼した開発を、さらに下請けの開発企業が担うといったように多重下請構造が指摘されています。

その他、中小規模のIT企業が「人材派遣型」のビジネスモデルから脱却しにくい等も挙げられています。

自社開発のサービスを作ろうにも財政面的に課題があり、キャッシュフローに余裕を持たせるためには上記ビジネスモデルに依存せざるを得ないという背景です。

高い報酬を得られない職種としてIT技術者が認知されると、人材不足につながるおそれがあります。

③ 経営層がDXに対して理解が足りず、現場に丸投げ状態となっている

経済産業省の実施した有識者ヒアリングによると、経営層がDXを推進するよりも短期的な利益を優先する傾向にあり、それがDXを阻んでいるようです。

経営層がDX推進を現場社員や外部のコンサルティング会社に頼っていることが問題視されています。

DXの「X」はTransformationで「変身」という意味です。
経営層自らがデジタルについて知識を深め、企業をどう変えたいのか、その必要性と戦略を提示する必要があります。
参考:デジタル人材に関する論点|経済産業省、みずほ情報総研株式会社

④ デジタル人材と従来型人材のスキルアップ状況・意欲の違い

先端IT従事者 (デジタル人材)と先端IT非従事者 (従来型人材)に対して、IPAが実施した調査によると以下のことが分かっています。
※)先端的なIT領域とは:データサイエンス、AI・人工知能、IoT、ブロックチェーンなどを指します。

i)先端IT非従事者の9割が、先端的なIT領域のスキル取得に対して消極的
ii)先端IT非従事者と比べて先端IT従事者は約3倍の時間と費用をかけている

先端IT非従事者がスキルアップに消極的な理由として、「学んでも活かす場がないこと」や「今後も現在と同じスキルが通用するという認識があること」が挙げられています。

dx人材のスキルアップ状況
引用:我が国におけるIT人材の動向|経済産業省、みずほ情報総研株式会社

DX人材の育成・採用のカギとは?

DX人材を急激に増やすのは難しいですが、各企業が今できることとして「DX人材が活躍しやすい風土の醸成」「既存社員のリスキル」が挙げられます。

DX人材が活躍しやすい風土の醸成

失敗を許容し、チームとなって助け合う土壌作りが重要です。

DX推進では、新しい事業の実証実験を繰り返し行います。
開発したサービスやビジネスが本来の目的の効果を得られるものかどうかを確かめるためです。(PoC / Proof of Conceptと呼びます)

「失敗したらすぐに降格」といった穏やかでない環境の場合、局所的なデジタル化やPoCをひたすらに繰り返し続け、DXが進まない恐れがあります。

実際に、IT人材の就職・転職の応募が増えた企業が持つ共通の強みとして次の3つが挙げられます。

  • ① 助け合う土壌、リスクをとってチャレンジする
  • ② 社内の風通しがよく、多様性を重んじている
  • ③ 柔軟なワークススタイル (週3~4勤務や自宅勤務)

参考:これからの人材のスキル変革を考える~DX時代を迎えて~|IPA

既存社員のリスキル

リスキルとは、企業が従業員に対して新しいスキル、技術を身に着けさせることで、新たな価値、サービスの創出や生産性の向上、ひいては従業員の市場価値の向上につなげることを指します。

従業員にデジタルの最新技術などを学ぶ機会を与え、最終的に自社の新たな価値創出につなげいくという取り組みです。

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長期雇用を前提にしている日本では、DX人材の不足に備えて既存社員のデジタル知識のアップデートが重要となるでしょう。

「何をリスキルするべきかを明確に従業員に提示する」「学んだことを実践する場所を提供する」ことがリスキル推進のポイントです。
参考:デジタル人材に関する論点|経済産業省

実際にリスキルに取り組んでいる企業の事例を2つ紹介します。

① 日立製作所グループ

日立製作所グループは「株式会社日立アカデミー」を創設し、IT人材を育てるための研修を社内外に提供しています。

講座は「DXとは」「課題の定義」「実行計画の立て方」「計画の進め方」の4つで構成されるeラーニング形式です。

日立アカデミーでは国内グループ企業の全社員約16万人を対象に、DXの基礎教育を実施しています。
参考:日立、国内グループ企業の全社員16万人に4講座のDX基礎教育|日経クロステック

② Amazon

世界的なECモールを展開するAmazonは、2025年までにアメリカの従業員10万人を対象に、1人あたり7000ドルを投資してリスキリングすると発表しています。

非技術者を技術者へと移行する「アマゾンテクニカルアカデミー」や、IT系エンジニアがさらに高度なAI技術を身に着けるための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」などの取り組みが進んでいます。
参考:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|リクルートワークス研究所

まとめ

DX人材の職業やスキル、日本企業が抱えている課題について解説しました。

  • ・DX人材が活躍できる組織文化作り
  • ・経営層によるビジョン / 戦略の策定
  • ・リスキル環境の整備

上記含めて様々な施策を実践し、DXを少しずつ前に進めていきましょう。

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