2021年6月のサービス開始からたった1年半で累計販売数300万食を突破し、急成長中のD2Cブランド「三ツ星ファーム」。競合がひしめく食品D2C業界において、大きな注目を集めています。
今回は、「三ツ星ファーム」を運営する株式会社イングリウッド D2Cストラテジー事業部 フードチーム長の金澤 裕之氏に、急成長ブランドの商品開発やマーケティングの裏側、成果につながる施策として現在注力している「UGC運用」についてお話を伺いました。
課題
解決策
成果
ーまずは事業概要と商品の特徴を教えてください。
金澤氏:三ツ星ファームは2021年6月にスタートした冷凍惣菜のお届けサービスです。管理栄養士の監修と独自の三ツ星基準によって栄養バランスの取れた低糖質おかずをサブスクリプション形式でご提供しています。
サービスをローンチした当時はコロナ禍の真っ只中で、世の中が大きく変わっていくタイミングでした。食事を自宅に宅配して食べる文化も急速に浸透する一方で、本来楽しいはずの食事がどこか重荷や課題になっている場面が多いのではないかと感じていました。
あったかいスープを飲んだらホッとするように、本来食事はポジティブな行為のはず。それを解決できるサービスとして、食品に関するD2Cブランドの着想を開始しました。
金澤氏:サービス設計を進める中でコアターゲットに置いたのは、ライフスタイルが目まぐるしく変化する世代である30-40代の女性です。仕事や子育てで多忙な日々を送りつつも、健康的な食のセルフケアを課題に感じている方に、食事を楽しめるサービスを提供したいと考えました。
ただし、食事はごく日常的なものであり、宅配サービスだけでなくスーパーマーケットでの買い物や外食も含めて、無限に選択肢があります。そのような中でも選ばれるサービスになるために、食事そのものの提供だけではなく、「サービスを通した一連の体験価値」をお届けすることを大切にしてきました。
サービスローンチから約1年半が経過した現在(2023年1月時点)、私たちのそのような心意気をご評価いただいているのか、累計販売数が300万食を突破する規模に成長できています。
ー次に、商品開発の考え方・やり方について教えてください。
金澤氏:プロの料理人から、味や美味しさに関する評価をいただきながらメニュー開発をしています。現代の食のサービスにおいて「健康」は外せない要素です。三ツ星ファームは健康に関して「タンパク質15g以上」「糖質25g以下」「カロリー350kcal以下」という独自の「三ツ星基準」を定めています。
例えばトレーニングをしている方にとっては、もっと数字が厳しいものが欲しいかもしれません。ただ、そうするとターゲットが狭まってしまいますし、選べる食材や味付け、調味料も限られてきてしまいます。食の美味しさを担保したうえで健康を維持できる水準はどこかを考えて、このような基準を設定しました。
サービスローンチ時はメニュー数が30種類程度でしたが、現在はスイーツ等も含めて常時70~80種類程度のラインナップを取り揃えています。
金澤氏:商品開発でもう一つ重要なポイントと考えているのが、「冷凍食品はまずい」という概念を払拭することです。私自身、サービスを立ち上げるにあたってさまざまな冷凍食品や宅配サービスの食事を研究したのですが、これを日常的に食べるのは厳しいなと感じる場面がありました。「冷凍食品なのに美味しい」と言っていただけるために、大きな熱量を持って商品開発に取り組んできました。
飽きられず、選ばれ続けるサービスであるために、お客様の評判をもとにしたメニューや味の改変も度々行っていますし、激辛のカレーや台湾のタピオカドリンクなど、遊び心を大事にした少し変わったメニューも取り入れています。
ー「販促・プロモーション」や「売り場づくり」で大切にしている考え方や、具体的にどのような取り組みを行ってきたのか教えてください。
金澤氏:当初30-40代の女性をターゲットに立ち上げましたが、ふたを開けてみると、男性のお客様や70-80代の高年齢層も含めて幅広い層に支持いただけることが分かりました。
そのため、Google/Yahoo!のリスティング広告・ディスプレイ広告から、各種SNSにおける公式アカウントと広告運用(ブランディング/ダイレクトレスポンス)、テレビCM、インフォマーシャルまで、大規模なクロスメディアによるプロモーションを行っています。
ターゲット層がかなり幅広く、お客様のお悩みもさまざまなので、全員に刺さるような情報発信をしても逆に誰にも刺さらないという現象が起きてしまいます。大規模なプロモーションを行う中でもしっかりとセグメントして訴求することで、お客様の自分ごと化を促せるように工夫しています。
このような背景がある中で、相性が良い施策はSNS上でのコンテンツマーケティングですね。インフルエンサーの方に、その方のフォロワーに合う形で三ツ星ファームを紹介いただく施策の効率がとても良いです。美味しさだけでなく、「共働きの方は、こんな場面で便利」「子供と一緒に食べられる」など、生活の中のどのようなシーンでお使いいただけるかを伝えられると反響が良いと感じます。
また、広告のクリエイティブもチーズハンバーグに湯気が立つシズル感のある動画形式にしてみたり、カレーフェスを開催して期間中に注文してくださった方にプレゼントする形式のキャンペーンをやってみたり…SNS上で目に留めていただきやすく、話題になりやすいコンテンツ発信を意識しています。
金澤氏:売り場づくりとしては、カスタマイズオーダーが可能な仕組みを取り入れています。お客様がご自身の好みでメニューを組み合わせたり、ライフスタイルにあわせて個数を選択いただけるなどサービス利用の自由度を高めることで、長く続けていただけることを目指しています。
今までのサブスクリプションサービスは、売り手都合であることが多かったように思います。それをどうしたらお客様都合にできるかを追求しています。
ー現在、御社が「成果が出る施策の一つ」として注力している「UGC運用」について、開始の背景をお聞かせください。まずはスタートした背景を教えていただけますか?
金澤氏:美味しさやクオリティに自信をもって商品をご提供していますが、企業側がいくら自分たちで「美味しいですよ」とお伝えしても、お客様にそのまま信じていただくのは難しいと思っています。やはり、実際に利用いただいているお客様=第三者の声で「美味しい」「便利だった」と伝えていただくことが必要だと考えました。
ー「UGC運用」のパートナーとして、Letroをお選びいただいた理由をお聞かせください。
金澤氏:従来からお客様が投稿したInstagramやレビューをユーザーボイスとしてブランドサイトや新規顧客向けLPに掲載していましたが、Web上のデザインとしてただ貼り付けているだけの状態になってしまっており、第三者が発信するコンテンツの強みを上手く活かせている状態とは言えませんでした。
やはり、同じUGCでも食事そのものを写したもの、子供が食べている様子、電子レンジで温めている様子など、さまざまな種類があります。どのようなUGCが求められるのかは、お客様の状態によって異なりますし、データで検証してみないと分かりません。
そこで、UGCを掲載する「ツール」としてではなく、UGC運用・UGCの最適化に伴走してくれる「パートナー」としてLetroにお願いすることにしました。
ー現在行っているUGC運用の具体的な内容を教えてください。
金澤氏:ブランドサイトや新規顧客向けのランディングページ(LP)にUGC(Instagramの投稿とテキスト形式のカスタマーレビュー)を掲載しています。
まずは三ツ星ファームの強みの一つである「メニューの多さ」を訴求するInstagram投稿を戦略的に抜粋し、新規顧客獲得向けLPに動的に表示するところからスタート。その後、LPにおけるUGCの掲載位置や、UGCの上に表示するバナー、UGCの表示デザインの検証~運用を順に実施していきました。
さらにより大きな改善を実現するために、テキスト形式のカスタマーレビューの運用にも着手しました。三ツ星ファームの商品の特性上、家族構成やライフスタイルに応じて感じる価値や課題が大きく異なりますので、それらを表現するレビュー項目を設計しレビューを収集し、掲載中です。
三ツ星ファームのブランドサイトと新規顧客向けLPにUGC(Instagram投稿とテキスト形式のカスタマーレビュー)を掲載&運用
ーUGC運用により得られた成果を教えてください。
金澤氏:ブランドサイトではCVR(LPからカートへの遷移率)が1.2倍に、LPでは1.86倍にまで向上しました。ただUGCを掲載するのではなく、Letroの担当の方にUGCの内容や掲載位置などの検証をしていただいたことで、ここまでの成果につながったと考えています。
また、最初は良く見られているUGCでもだんだん摩耗していくため、継続的に検証を重ねて入れ替えていく作業も必要です。UGCを掲載するだけのツールは海外のものも含めてたくさん存在しますが、やはりこうしてしっかり運用することで成果につながるのだと実感しています。Letroさんには深く入って手厚くフォローいただいており、感謝しています。
どんな施策にも言えることだと思いますが、こうした良いパートナーさんとの「ご縁」はブランド成長に欠かせないものです。他社がやって上手く行っていることを自社でも取り入れてみて、あまり成果が出せずに止めてしまうことってありますよね。やはり、成果を出すためには一つ一つの施策を実行する質の高さと深さが必要で、良いパートナーさんとのご縁はその解決策になるのではないでしょうか。
LPにおけるUGCの掲載位置や、UGCの上に表示するバナー、UGCの表示デザインの検証~運用を順に実施したことで、CVR(LPからカートへの遷移率)が1.86倍に向上。現在さらに検証を重ねてCVRを継続改善中。
ー最後に、今後Letroに期待することや、UGC運用において取り組んでいきたいことをお聞かせください。
金澤氏:今後は新規顧客向けの活用はもちろんですが、既存のお客様により継続していただくためにもUGCを活用していきたいと感じています。サービスを実際に体験して生まれたUGCは、信頼できる情報源であり、サービスを提供する私たちにとっても、お客様のリアルなお声を聞くことができる大切な財産です。長く愛され続けるサービスを提供するために、これからはUGCの分析にも力を入れ、より幅広くマーケティングやサービス改善、製品開発などに活用したいと思っています。
記事公開日:2023.03.03