介護事業を基盤とする株式会社SOYOKAZEは、“食事がおいしい”と評判の介護施設「そよ風」を全国で展開し、地域社会に大きく貢献してきました。そこで培った食のノウハウを活かし、2019年には在宅での栄養サポートを目指して宅食ブランド「食のそよ風」を立ち上げ。介護の現場で得た知見と、管理栄養士による献立設計をもとに、健康的でおいしい冷凍弁当の開発に取り組んでいます。
今回は、フードサービス部主任の佐野恵規氏と、同部署でプロモーションを担当する泉奏絵氏に、「食のそよ風」シリーズの「kanau」について、ブランド価値を高めるマーケティング戦略や、介護事業から新たな市場に進出した背景やブランドへのこだわりについてお話をお伺いしました。
ー介護事業から新たに宅食市場に参入した「食のそよ風」の立ち上げ背景を教えてください
佐野氏:
「食のそよ風」は、“おいしい食事で健康を支える”というSOYOKAZEの食事への強い想いから生まれました。介護施設で長年、自社で専任の管理栄養士が献立をつくってきた経験を活かし、在宅向けにも「手軽に食べられる栄養バランスが整った美味しい食事」を届けたい──そうした想いが形となったのが本ブランドです。
当初は高齢者を主なターゲットとして想定していましたが、コロナ禍を機に若年層の利用も拡大。現在は20~50代の幅広い層に選ばれるサービスへと進化し、ライフスタイルに寄り添う“日常使いの食事”として支持されています。
ー食のそよ風シリーズ「kanau」においてブランド作りで大切にされていることはありますか?
佐野氏:
前提として、私たちの部署は管理栄養士を中心に構成されています。ですので、栄養バランスを重視した健康的な食事の提供にこだわっています。例えば、マーケティング目線で、糖質や油分をカットしたダイエット系のメニューを作りたい、といったアイデアを出した場合でも、管理栄養士から栄養バランスが保てるか、お客様が継続的に美味しく続けることができる食事か、という視点をかけ合わせて考えています。
「kanau」に携わっている管理栄養士は元々病院などで栄養指導を行っていたので、実際の現場の経験から、「困っている方々が継続的に・日常的に食べられる健康的な食事を作りたい」という思いがありました。病院での指導経験を通じて、多くの方が健康のためのアドバイスを受けても実行できない・続けられない現実を目の当たりにしていたからです。お腹を満たすだけでなく、将来の健康にもつながる食事を作りたいという想いが「kanau」商品企画にも活かされています。
また、メニューのラインナップは、当初ターゲットで想定していた40~50代の男性に向けて、ボリューム感と親しみやすさを意識。ハンバーグや八宝菜など、満足感のあるメニューを中心に構成し、社内での試食を重ねながら、主菜・副菜のバランスや味付けも細かく調整しました。健康を気遣う世代に、無理なく“毎日食べられる”冷凍弁当として「kanau」は誕生しました。
ーなるほど、確かにECを拝見すると食欲そそるメニューが多いことが印象的だったので納得です。
貴社にとってEC事業は初の試みだったかと思いますが、当初大変だったことはありますか?
佐野氏:
EC事業として「kanau」を立ち上げた当初、さまざまな課題に直面したのですが、まず最大の課題は、会社の事業転換に伴う影響で宣伝費用が想定通りに確保できなかったことです。そのため、本来予定していた雑誌広告やインフルエンサーの活用といったプロモーション戦略を大幅に縮小せざるを得ませんでした。なので、まずは小さく実施できるWeb広告から開始したのですが、それだけではやはり消費者の購買に結びつかず、CPAを抑えるのに苦戦しました。
そして、新しいブランドという部分もあり、消費者が「kanau」に興味を持っても、口コミが少なく、購入を躊躇するケースが多くありました。合わせて、元々立てていた顧客に対する仮説が本当に受け入れられているのかの検証にも苦戦してましたね。
これらの課題を解決するために、口コミやUGCの重要性を再認識し、こうしたコンテンツを集めるために「Letro」を導入しました。
株式会社SOYOKAZEフードサービス部主任佐野恵規氏
ー口コミやUGCの重要性について、「kanau」ではどのように考えていますか?
佐野氏:
やはり、商品開発においてはペルソナ設定が重要なので、誰をターゲットにするかによって味付けや量などの細部までが変わってきます。なのでお客様からのお声は、この基本を支える要となります。
「Kanau」のリリース当初は、仮説に基づいて商品を開発し、その後アンケート調査を通じて顧客ニーズとの整合性を確認しましたが、実際にお金を払って購入してくださる顧客の声とは異なることがあるのではと考え、そのギャップを埋めるために、具体的な口コミやレビューを収集・掲載ができる「Letro」を活用しました。
結果として、口コミが、消費者の購買判断に大きな影響を与えていることがわかり、「Letro」を導入することで、これらのコンテンツを収集・掲載することが実現できました。
ー具体的にどのように「お客様の声」を収集・活用されたのか教えてください
佐野氏:
レビューにおいては、アンケートを通じて3つの視点を意識して設問を設計しました。
1つ目は、アンケートを通じて「kanau」の強みをお客様に伝えることができる内容にすることです。
2つ目は、「Letro」で得た口コミをブランドサイトやLPに掲載したいという思いもあったので、購入検討のお客様の背中を後押しできるような「これなら買ってみようかな」と感じられる情報を引き出すことを重視しました。
3つ目は、立ち上げ当初に設定した仮説が実際に消費者のニーズにあっているかを確認するための検証ができる設問を入れ込みました。
その結果、お客様は「kanau」の栄養面での強みを一定理解してくださっている一方、本来お伝えしたかった他の魅力や特徴がまだ十分に知られていない・正しく伝えることができてないということにも気づくことができました。
こうして得たお客様のインサイトは、LPやSNSなどの情報発信において、それまで伝えきれていなかった「kanau」の魅力をコンテンツ化するなど、あらゆる媒体での情報発信で役立てています。
あと、アライドアーキテクツ社と実施したインサイト分析の結果は、私たちにとっては「お客様の視点」に常に立ち返る良いデータとなっています。
どうしてもメーカー目線になってしまいがちではあるので、とても有効に活用しております。
ーお客様のお声の掲載についてはいかがでしょうか?
泉氏:
まず、現在はブランドサイトやLPだけでなく、購入ページにも掲載しています。また、パンフレットやInstagramの投稿にも、実際のお客様のリアルな声を反映させて活用しています。
例えばInstagramでは、特にお客様の口コミを定期的に投稿しています。実際に投稿すると他のものよりお客様の声を投稿したほうがリーチが伸びているので、お客様の関心を引くことができているのではないかと感じます。また、お客様へのSMSやメルマガにおいても、口コミを積極的に取り入れ、CRMの一環として活用しています。
掲載についても工夫しています。特にリテンションにおいては、お客様の声を使って、他の利用者がどのように「kanau」を使っているかを提示し、「他の人はこういった使い方をしているんだ」といった気づきを与え、解約防止につながる効果を狙っています。具体的には、「健康管理のため」「ランチとして」などの用途を他の顧客の声を通じて伝えることで、商品の価値を再認識してもらっています。
このように、お客様の声をさまざまな場所で活用することで、「kanau」の認知度や利用継続意欲が高まりやすくなるよう工夫しています。
株式会社SOYOKAZEフードサービス部プロモーション担当泉奏絵氏
ー実際に「Letro」を活用していただき、どのような成果を得ることができましたか?
佐野氏:
まず、LPのCVRが約1.33倍、ブランドサイトでは約1.75倍に向上しました。さらにLP・ブランドサイトどちらからも経由するカート内では1.18倍の改善を実現することができ、全体としてCVRを大幅に改善することができました。
また、社内の評価も非常に高く、上司から「入れて良かったね」との声をいただきましたし、改善や成果についても「Letro」がファクトになってくれているので社内への報告もしやすくなりました。
そして、お客様からは実際に「○○の口コミがあったから購入しました」というフィードバックも得られ、SNSやメルマガを通じてさらなる購入につながっています。
特に驚いたのは、3回目のお届け時に口コミを送ることで、3回目時点での解約率が劇的に下がったことです。成功事例として、他の食のそよ風シリーズでも同様のアプローチを行っています。
宅食系サービスにおいて、新規のお客様の獲得だけでなく、既存顧客の解約防止に関しても成果をだすことができたので、これらの経験が他のEC事業者さんにとっても有益な情報になると嬉しいです。
ー素敵なお話をありがとうございます。御社の今後の展望や挑戦についてもお伺いさせてください
佐野氏:
まず、会社全体としてメイン事業の介護への宅食サービスの展開が求められているので、既存の資産を活かしつつ、どのように販売を強化できるかが新たなチャレンジになると思います。
加えて、「kanau」に関しては、タンパク質と食物繊維の特長を活かし、フィットネスジムや健康関連企業との協働を模索しています。今後はこれらの市場との相乗効果を狙い、製品の位置付けをより明確にしていきたいと考えています。例えば、ダイエットモニター企画などで、消費者に具体的な結果を示し、「kanau」での、健康管理や理想のボディ作りをサポートする食事としてのポジションの強化なども考えています。
このように、日々の食事提供の枠を超えて、健康管理に重きを置いた訴求にシフトすることで、他社との差別化を図っていきたいです。
ー最後に、一連のアライドアーキテクツの支援についてご感想をいただけますか?
佐野氏、泉氏:
正直にお伝えすると、もっと早く導入したかったなという思いがあるほど、導入して成果が出ているのでここまで一緒に立ち上げてくれたことに感謝しています。
アライドアーキテクツ社の「Letro」のサポートにより、お客様のインサイトを発見することができただけでなく、お客様が共感しやすい訴求ポイントも明確になったので他の施策にも展開できたことは大きな資産となりました。
今後も引き続き、お客様の視点を大切にしながら「Letro」を活用し、さらなる成長を目指していきたいと考えています。
今後の展望について「新しい施策を行うときはインサイトデータに立ち返るようにしています」とお話する佐野恵規氏と泉奏絵氏
記事公開日:2025.07.28