UGCが必須のWeb広告時代|ファンケルが『体験価値』で実現したブランド価値向上戦略

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無添加化粧品のパイオニアとして40年以上愛され続けるファンケル。コロナ禍後のWeb広告競争激化により「今までと同じ手法ではお客様にブランドの魅力が伝わらない」という課題に直面した同社は、CVR最適化プラットフォーム「Letro」を活用したUGC・レビュー戦略で、獲得効率改善とブランド価値向上の両立を実現しています。

今回は、広告宣伝本部 課長の片桐真智子氏とドージェップ・ジャバオ氏に、導入背景から具体的な運用方法、今後の展望まで伺いました。

研究開発から顧客の声まで。ファンケル流の一貫したブランドづくり

ーまずはお二人の現在の業務内容と、ファンケルが目指すブランド価値について教えてください。

片桐氏:
「私たちは化粧品のレスポンス広告運用に携わっており、主なKPIはお客様の獲得数と継続率です。
ファンケルの強みは、研究開発から商品の設計、マーケティング・販売までを自社内で一貫してできる体制にあります。「toiro(トイロ)シリーズ」「エンリッチプラス」「アクネケア」など、お客様のお悩みに合わせた複数の商品ラインナップを展開しています。

ドージェップ氏:
いずれの商品も、肌あれやニキビ、乾燥といった”肌不調”にアプローチしていく点で、ファンケルのブランドコアである「お客様の肌状態を健やかに保つ」ことを体現しています。

また、自社の通販サイトを持っているので、お客様の声を集めやすく、広告のクリエイティブにも活かしています。顧客の声こそが、ファンケルのブランド価値向上につながる重要な要素だと考えています。

ファンケル

「安心感」だけでは勝てない時代。無添加の価値をどう伝えるか?

ー「無添加化粧品」の先駆者として40年以上の歴史を持つファンケルさんですが、現在のマーケティングにおける課題について教えてください。

片桐氏:
ファンケルは1982年から無添加化粧品の発売を開始し、添加物による肌の不調を解消することを大切にしてきました。

ただ、化粧品市場に多くの競合がひしめく中で、無添加の価値が分かりづらいという課題があります。ターゲット層からすると「肌に優しいのは分かるけど……」という程度の認識で、無添加だからこそ肌調子がよくなることが伝えられていないと感じています。

実は、学生時代にファンケルを使っていたお客様が、一度他のブランドに移っても、肌の調子が悪くなったときに「やっぱりファンケルだったかも」と戻ってきてくださる方が本当に多いんです。そういった肌悩みに寄り添えるブランドの魅力を、もっと多くの方に伝えられるようになりたいと思っています。

片桐氏

株式会社ファンケル広告宣伝本部課長の片桐真智子氏

コロナ禍で一変したWeb広告環境。従来手法の限界を痛感

ーLetro導入のきっかけとなった、当時の広告運用における具体的な課題について教えてください。

片桐氏:
2023年頃、コロナ禍以降各社がWeb広告出稿に力を入れ始めた中で、Web広告の効率が日に日に悪化していく状況でした。「今までと同じことやっていても同じような成果が出せない」という状況で、広告効率が求められる部門としては本当に苦しい時期でした。

でも効率が低迷する中で、よりファンケルのことに共感をしてくださるお客様としっかり繋がっていきたいという思いがありました。

ドージェップ氏:
バナー広告や検索連動型広告が中心の中で、LPに来訪したお客様の体験価値を向上できるような取り組みは正直あまりできていませんでした。コンバージョン率改善のためにLPをブラッシュアップしたり、コピーを変えてみたりはしていましたが、体験価値を伝えるという観点では手つかずの状態だったんです。

そこで、LP に来てくださったお客様により良い体験価値を提供し期待感・信頼感を醸成することで、それが結果的に購入の後押しにつながることを期待してLetroの導入を決めました。単純に効率だけを追い求めるのではなく、商品やブランドを理解して購入してくださるお客様を獲得したいと考えたんです。

ドージェップ氏

株式会社ファンケル広告宣伝本部のドージェップ・ジャバオ氏

UGC生成とレビュー戦略で実現した「体験価値」の可視化

ーLetroをどのように活用されているのでしょうか?また、特に工夫されているポイントがあれば教えてください。

ドージェップ氏:
まずはABテストでLetroの有無による効率差を検証することから始めました。エンリッチプラスから開始し、効果が確認できたので、その後アクネケアとtoiroシリーズにも横展開しています。現在は、LPだけでなく、商品購入時の定期アップセル誘導ページにもUGCや口コミを掲載してLTV向上も狙っています。

特に工夫しているのは、季節に応じて、お客様にお見せするUGCのテーマを分けていることです。例えば、toiro バイタライジングは夏場に「重い」と思われがちなエイジングケア商品なので、夏に向けて「夏こそエイジングケアが重要」「エアコンによるインナードライ対策」といった、季節によってお客様が知りたい・不安の払しょくにつながるようなUGCを収集しています。

片桐氏:
レビューでは、継続利用者のお声もよく見られています。続けて利用される方のお声は、お客様にとってもなかなか目に触れにくいこともあるため、お役立ていただいているのかと感じています。また、お客様がアクセスしやすいようにタブ分け表示などのUIの工夫も行い、お客様の更なる体験価値向上を目指しています。

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実際のLPに掲載している顧客の声(一部抜粋)

期待を上回る改善効果の裏側。効果的な口コミに共通する3つの要素

ー導入後、どのような成果が得られましたか?また、想定していなかった発見や気づきはありましたか?

片桐氏:
当初の目的だったCVR改善は確実に見られています。ABテストの結果では、Letroありの場合で明確な改善が確認できました。また、定期アップセル誘導ページでも前後比較で効率が向上しており、副次的にLTV向上にもつながっています。

ドージェップ氏:
予想外だったのは、CVRが高い口コミには明確な傾向があることが分かったことです。例えば「テクスチャーの言及」がある投稿では、CVR向上の傾向がみられていました。

お客様は「使う時どうなんだろう?」という不安を抱えているんですね。化粧品は機能だけでは似通ってくるので、最終的には使用感がマッチしそうかが重要になります。テクスチャーへの言及があると、そうした不安を払拭できることが成果につながっているようです。

また、LP調査ツールで分析したところ、口コミエリアが最も読まれている箇所だったことも大きな発見でした。お客様にとって必要な情報を提供できている証拠だと思います。

商材拡大とブランド価値向上のネクストステップへ

ー今後、UGC・レビュー活用をどのように発展させていく予定ですか?

片桐氏:
まず短期的には、2年ほどの導入で知見も溜まってきたので、これまでのノウハウを活かして、他の商材への展開による全体効率改善を進めていきます。数字が見えているということは、やはりお客様にとって有益な情報になっている証拠だと思いますので、引き続きお客様目線でのLP作りの一環として活用していきたいです。

より広い視点では、ファンケルとしてのブランド強化の取り組みの中で、お客様が何に価値を感じてくださっているのかを改めて理解し、それを様々な広告活動で活用していくことで、良いサイクルを作っていければと思っています。

ドージェップ氏:
弊社もアライドアーキテクツさんのKaname.axという新しいサービスに注目していて、VOC分析のブランディング視点での活用に着目しています。これまでレスポンス広告のLP改善から始まった取り組みですが、ブランド全体での価値提供にどう活かせるかを模索していきたいです。

私たちの部署は化粧品広告宣伝部として、お客様にブランド価値を伝えていくことがミッションですから、レスポンス効率とブランド価値向上を同時に実現できる取り組みとして、さらに発展させていければと考えています。

片桐氏、ドージェップ氏