2023.7.7
X(旧Twitter、以降「X」とのみ記載)で「API呼び出しの回数制限を超えました」と表示され、ポストを閲覧できなくなる事象が発生しました。一時は関連のワードがトレンド入りするほど騒然としましたが、Xでは今何が起こっているのでしょうか。
本記事では、Twitter APIの回数制限が厳しくなった背景や対処法、企業への影響について解説します。
なお、ここでのAPIとは、有償化したサードパーティー向けのTwitter APIとは異なり、X内部のデータ受け渡しに用いられ、ユーザーが閲覧制限を受けた際にエラーメッセージとして表示されているAPIのことを指します。
2023年7月1日、Xで「API呼び出しの回数制限を超えました」と表示され、ポストを閲覧できなくなる事象が発生しました。
Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は、「インターネット上のデータ収集や処理における不正な操作の急増(スクレイピング)に対応するため、一時的に閲覧できるポスト数を制約した」と説明。これにより、ポストが表示される可能性のある項目(タイムラインのほか、検索画面や自身のプロフィール画面にも及ぶ)に閲覧制限がかかる事態となりました。
WebブラウザからXを閲覧しようとすると、ログインをしないとポストやプロフィールが見られなくなる状態になりました。
埋め込みポストはログインせずとも閲覧可能なものの、ポストをクリックし詳細を確認しようとするとログインが要求されます。
本件について、イーロン・マスク氏は一時的な緊急措置であると言及しました。
7月5日現在、ポストの単独ページに対してはこの制限は解除されているようですが、プロフィールページ、検索ページは依然としてログインが要求され、またWebサイトへのタイムラインの埋め込みは1件も表示がされない状態となっています。
一定のポスト数を超えて閲覧しようとすると「API呼び出しの回数制限を超えました」と表示され、ポストを閲覧できなくなる事象が発生しました。
イーロン・マスク氏は、「極端なレベルのデータスクレイピングとシステム操作に対処するための一時的な制限を適用した」と説明していますが、制限が緩和される時期については明言していません。
その後、数時間おきに少しずつ回数制限が緩和され、2023年7月5日現在も、以下が上限となっているようです。
認証済みアカウントとは、バッジを付与されたアカウントを指し、一般のユーザーは有料サブスクリプション「X Premium(旧Twitter Blue)」に登録することで認証を受けられます。Xでアカウントを発行したばかりの新規ユーザーと比較すると、閲覧可能な数に20倍程度の差があることが分かります。
XのAPI制限によってポストを閲覧できなくなった場合、1日経つと制限は解除されますが、「1日」の定義は不明瞭で、少し時間が経つことで閲覧制限が解除されるケースが多いようです。
Xは今回の制限について、公式ブログにて「1)AIモデルを構築するために人々の公開されているX上のデータをスクレイピングすること、2)様々な方法でプラットフォーム上の人々や会話を操作することを防ぐために、対応措置に取り組んでいます。」「現在のところ、この制限はプラットフォームを使用している人々のごく一部に影響を及ぼしており、作業が完了次第、最新情報を提供する予定です。私たちのお客様に関しまして申し上げますと、広告への影響は最小限です。」との声明を発表しました。
イーロン・マスク氏は7月16日、「認証済みユーザーのレート制限を 50% 引き上げます。数時間以内に効果が現れるはずです。」とポストしました。単純計算では、認証済みアカウントは1日あたり15,000件となると推測されます。なお、このポストの前には「何か間違ったことをしていない限り、制限に達するまで連続スクロールを続けると約 8 時間かかるはずです。」と投稿しており、今回の引き上げによって、「認証済みアカウントは、1日8時間を超えてスクロールしてもAPI制限エラーが出ない」仕様となることが分かりました。
Xは2023年6月15日に「従来の Twitter API アクセス層を廃止しました」とのアナウンスを発表し、サードパーティー向けのAPIを有償化しました。これにより、従来は無償のTwitter APIを利用してXデータを取得していた一部の企業・個人が、有償APIの利用を回避し、スクレイピングによるデータ取得を行い始めた可能性が指摘されています。スクレイピングとは、プログラムを利用してWebサイトを広く探り、特定の情報を抽出する手法を指しますが、Xではこの手法を利用規約で禁止しています。
イーロン・マスク氏は、新興企業から一部の最大手企業に至るまで、AIに取り組むほぼすべての企業が、膨大な量のXデータをスクレイピングしている点に言及しました。
スクレイピングが横行することにより、Xのサーバー負荷が急激に高まった状況を解消するため、また対策が完了するまでの間、スクレイピングを行いづらくするために今回の措置に至ったものと考えられます。
X Premium(旧Twitter Blue)の加入の有無により、XでAPI回数制限がかけられるポスト数に10倍~20倍の差があることから、間接的にX Premiumへの加入を促す狙いもうかがえます。
ただし、X Premium加入者であっても上限が設定されていることから、加入者から不満の声も挙がる可能性もあり、API回数制限に関する続報が待たれます。
今後、対策が進むにつれ、閲覧制限が緩和される可能性もありますが、現時点でAPIの回数制限を回避するにはどのように対応すべきでしょうか。
X上では、Xが提供しているポストの一覧表示サービス「TweetDeck」を利用する、リスト機能を使用してフォロー中のユーザーをリストに追加する、といった方法がさかんに投稿されていますが、Xは現在進行形で改修を行っているとものと見られ、完全に制限を回避できる方法は無くなるものと考えられます。
本件を含む一連の動向を見る限り、Xは、今後もさらなる仕様変更や機能拡充により、アカウントが認証されていないと不利益がある/認証されていると利益がある状態になっていくものと予測されます。Xの代替サービスは存在するものの、現時点では規模の面から同等の利便性を得ることは難しく、高頻度に利用しているユーザーは有償サブスクリプションに加入するか、利用頻度を落とすかの選択を迫られていると言えそうです。
公式ブログでは「広告への影響は最小限」とされていますが、実際のところ、閲覧制限による企業投稿のインプレッションの低下などは無いのでしょうか。
7月5日現在における弊社独自調査(同条件で6月下旬~7月上旬にかけて毎日応募形式のキャンペーンを実施した企業群における、1日ごとのキャンペーン投稿インプレッション平均を集計)では、変更があった当日に多少の減少が見られるものの、以降のインプレッションには明確な差分は見られていない状況です。
長期的には今後の動向をしっかりと見ていく必要がありますが、多くの企業にとって短期的な影響は限定的であると考えられます。※アカウントのフォロワー数やユーザー層の違いなどにより、影響度合いが異なる可能性があります。
一般にスクレイピングの手法は様々に存在することからその対策は容易では無く、閲覧制限の緩和には時間が掛かる可能性があります。Xの競合SNSとなるInstagramにおいても、未ログイン状態でのWebブラウザ閲覧については過去、段階的に制限されていき、現在も厳しく制限が掛けられたままとなっています。
ただし、7月6日にそのInstagramの基盤を活用した「Threads(スレッズ)」をMeta社が対抗サービスとして公開するなど、Xとしてもユーザーの不満が高まり続ける状況は避ける必要があるため、早期の対策・改善は図られると考えられます。
今後も、Xの動向に注目が必要です。アップデートがあれば、本記事を更新していく予定です。
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