株式会社クレディセゾン / セゾンカード
2024.3.12
生活者のライフスタイルの多様化に伴い、TVCMを中心とした従来のマスマーケティングの効果は低下しつつあります。この変化の中で、金融、通信、WebサービスといったtoC向け無形商材を扱う企業は、顧客とのデジタルコミュニケーションの重要性に注目し、オンラインでのサービス申込み完結型のビジネスモデルへと移行しています。このプロセスにおいては、Web広告による顧客獲得と、潜在顧客層へのサービス認知・理解を促進するSNSプロモーションの活用が鍵となります。
しかしながら、SNSプロモーションの成果は多くの場合、SNS上のインプレッションやフォロワー数、エンゲージメント指標に留まり、「サービスサイトへの訪問」「登録」「申込み」などの行動へと結びつかないことが多いと感じている担当者も多いのではないでしょうか?
今回は、約40万のX(旧Twitter、以降「X」とのみ記載)フォロワーを持つ株式会社クレディセゾン(@kaori_saison)デジタルマーケティング部 渡邉 ゆりえ 氏にインタビュー。
SNS上でインプレッションやエンゲージメントを獲得するだけでなく、ユーザーの行動を強力に促す効果的なプロモーション施策について深く掘り下げ、無形商材のSNSキャンペーンプロモーションにおける成功の秘訣を解き明かします。
※本記事は2023年12月6日(木)にアライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナー「フォロワー数約40万のクレディセゾン登壇!獲得にもつながる認知施策とは?~SNSプロモーションの勝ちパターン~」の内容を編集したものです。
-まずは御社の事業概要と、SNSの役割について教えてください。
クレディセゾンと言えば「セゾンカード」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
以前はカード事業に重点を置いていましたが、現在は総合生活サービスグループとして保険、資産運用、健康関連など、世代別のライフスタイルに合わせたさまざまな事業を展開しています。
私が所属するデジタルマーケティング部では、ファン拡大を目的にSNSアカウントを運用しています。 カード申込までのプロセスにおける、対面からデジタルメディアへのシフトに伴い、SNSは顧客とコミュニケーションする場として位置づけ、独創性を重視したプロモーションや、若年層・子育て層向けなどペルソナ別に最適化したSNSアカウント運用にも力を入れています。
これまでに実施したSNSプロモーション施策の一例として、セゾンカードの認知拡大を目的とした「セゾンのお月玉」キャンペーンがあります。 「毎月1万人に現金1万円が届く」というキャッシュバックキャンペーンで、当選した方の声がX上でUGCとして非常に多く拡散されました。従来は接点の無かった方にもアプローチできたことで、フォロワー数が約1万人から約21万人にまで大幅に増加しました。
-ペルソナ別に最適化したSNSアカウント運用というのは、具体的にどのように取り組まれていますか?
各アカウントをペルソナのライフスタイルに合わせて運用しています。例えば、Z世代向けの「Likeme♡カード」や、子育て世代向けの「maman(ママン)」はInstagram上で展開しています。
SNS運用チームは、デジタルマーケティング部の約10名で、各アカウントにつき2〜4名が担当し、クリエイティブも内製しています。
-無形商材を取り扱う企業様からは、「デジタルマーケティング系の部門と、商品・サービス系の部門との連携が難しい」といったエピソードをよく聞きます。SNSの投稿コンテンツにどう落とし込むかなど、なかなかうまくいかないといった話も聞きますが、デジタルマーケティング部門と、商品・サービス部門との連携はどのように工夫されていますか?
社内のさまざまな部門からの依頼に基づいて、SNSプロモーションを進めています。プロモーションに関する他部署からの要望を聞きつつ、デジタルマーケティング部門で考えたトンマナを維持してコンテンツ発信を行なっています。
-SNSのKPI設定についてはいかがですか?
ミッションは、セゾンファンの増加を図ることです。「セゾンのお月玉キャンペーン」を実施した2019年10月以降、フォロワー数が大幅に伸び、キャンペーンを通じて継続的な成長を遂げています。その実績を踏まえ、現実的な成長を考慮して目標を設定しています。
フォロワー数20万人を超えた頃から、他部門からもSNSチームの成果が注目されるようになり、連携の依頼が増えました。今後は2024年3月までにSNSのフォロワー数60万人、インプレッション数1.5億を目標としています。
-実際にどのような施策に取り組んだか、具体的なお話に入る前に、SNS運用の中で感じていた課題についてお聞きできればと思います。
最も大きな課題は、商品部への貢献度の可視化です。
フォロワーが増えるにつれ、他部門からのプロモーション依頼の機会が増えてきました。ただその中で、SNSは単なる認知獲得に留まらず、ユーザーの行動にどうつながるかを数字で示すことが重要と考えていました。
また、
といった点も課題でした。
-商品部への貢献度を重視されているんですね。とても重要な視点だと思います。
SNS運用チームではフォロワー数を重視し、メディアの価値を高めようと努めてきましたが、単にフォロワー数を追いかけるだけではなく、商品部と連携を強化して商品部の目標(申込みの獲得)にも一緒に取り組んでいきたいと考えています。
株式会社クレディセゾン デジタルマーケティング部 渡邉 ゆりえ 氏
2016年株式会社クレディセゾンへ新卒で入社。部門異動を経て2018年からSNSアカウント担当者となり、Xの運用企画/分析/キャンペーンなど自社内で運用を完結。1万フォロワーのアカウントを現在では約40万フォロワーにまで成長。Instagram/TikTokアカウント開設の立ち上げにも携わり、社内全体のSNSアカウント管理も行っている。SNSアカウント運用をはじめとして、インフルエンサー施策/Z世代向けのクレジットカードプロモーション企画/広告のインハウス運用など幅広く担当している。
ー先ほどお話しいただいた課題を踏まえて、実際にどのような施策に取り組まれたのか、お話しいただけますか?
最初に取り組んだのは、日本代表戦の放映中に流すテレビCMの動画を、スポーツと親和性の高いXでも活用する施策でした。
商品部からは「テレビを視聴せず、CMに接触する機会が少ない人たちにもコンテンツを届けたい、なおかつ予算に合った訴求をしたい」という要望がありました。
そこで、日本代表戦の試合中に広告を配信し、Xの拡散力を利用してCM未視聴ユーザーに対するリーチを図りました。
ー商品部から、施策に対する理解はどうでしたか?
かねてより連携してプロモーション施策を行っていたので、基本的に理解を得られていましたが、アライドアーキテクツ社のSNSキャンペーンツール「echoes」を利用することで、CM動画の完全視聴を促すことができる点がプラスアルファの価値として働きました。
ーキャンペーンの具体的な座組と成果について教えてください。
Xでフォロー&リポストでプレゼントが当たるキャンペーンを実施しました。フォロー&リポストして終わりではなく、ブランドサイトへ誘導し、CM動画の視聴を促す形式です。
あくまで認知拡大を目的に動画視聴数を指標としていましたが、CM動画をしっかり観てもらったうえでブランドサイトを閲覧していただき、結果的にカード申込みにつながったのは非常に嬉しい成果でした。
商品部も予想外の申し込みに驚いていました。認知拡大やCM動画視聴促進にとどまらず、コンバージョンにもつながったことは思いがけず良い成果となりました。
この施策によって、SNSユーザーの顧客体験を重視し、コンバージョンにつなげるストーリー設計に取り組むことが大切だと感じました。
-もう一つの施策についてもお話しいただけますか。
カード事業部からの提案で、「SAISON GOLD Premium」の一周年を記念して、カードの認知拡大を目的としたXキャンペーンを実施しました。「純金が当たる」というインパクトの強い企画です。
-このキャンペーンは、先ほど紹介いただいたCM連動施策の成功を受けて決定されたのですか?
はい、先ほどのCM連動施策でコンバージョンを獲得できた成功例を共有したことで、同様にブランドサイトへ誘導する形式のXキャンペーンに興味を示してくれました。
CM連動施策と同じように、Xでフォロー&リポストした後にブランドサイトへ訪れてもらうフローで実施しました。
今回も認知拡大が目的でしたが、過去最大の参加者数となっただけでなく、キャンペーン期間中のブランドサイト表示回数の79%がXキャンペーン経由となるなど、大きな反響を得ることができました。
大量に拡散されたことで非会員にもリーチでき、ブランドサイトを閲覧してもらうことでカードの魅力も知ってもらえたことが大きな成果でした。
このように、SNS上だけでなく、ブランドサイトへの誘導を通じてコンバージョンにつなげる施策を提案いただけたことは、私たちのやりたいこと・目指す施策と非常にマッチしていたと思います。
Xキャンペーンツールを提供いただくだけでなく、運用面のアドバイス等もいただけるため、貴重な機会と捉えています。
▶記事で紹介した、クレディセゾンのXキャンペーンの詳細なフローを知りたい方は、以下のセミナー本編のアーカイブからご覧いただけますので、ぜひご活用ください!
-Xキャンペーン施策によって得られた成果を整理すると、リーチの拡大、ブランドサイトへの大規模送客、そしてサービス申込みへの寄与も見え始めています。今後はさらに施策の精度を高めてPDCAを回し、コンバージョンに貢献できる施策を増やしていけると良いですね。
はい、今後、SNS施策がいかに事業貢献できるか、その価値をより高めていく必要があると考えています。
過去5年間のSNS運用では、フォロワー数の拡大に注力してきましたが、今後は商品・サービス部門との連携を強め、よりコンバージョンにつながるプロモーション提案をしていきたいです。
SNS上の指標を追いかけるだけでなく、自社サイトのコンテンツへの誘導や、申込みへの貢献といった観点を持ちながら、商品部との連携をどう強めていくかが重要なポイントです。
これからの取り組みも楽しみです。
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