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投票数約72万!「カルビー総選挙」に学ぶ、店頭販促の成果を高めるSNS戦略

カルビー株式会社

消費財メーカー企業では、SNS広告やアカウント運用、UGC創出といったSNSマーケティングが積極的に展開されていますが、SNSと売り場が離れていることから、売上貢献の可視化が困難で投資判断しづらい、という課題を抱えている企業は少なくありません。
SNSを活用し購買転換・売上向上を図るには、どのような戦略に基づいた施策設計が適しているのでしょうか?

今回は、テレビCMや「カルビー大収穫祭」「カルビー総選挙」をはじめとする全社キャンペーンなど、複数のブランドを横断して数々の広告・宣伝企画に携わる、カルビー株式会社 マーケティング本部 CXプランニング室 松井 章氏にインタビュー。

フォロワー数60万超えのX(Twitter)アカウントの規模拡大に至る変遷や、約72万もの投票があった「カルビー総選挙」のマストバイキャンペーンにおけるSNS戦略について詳しくお聞きしました。

※本記事は2023年7月25日(火)にアライドアーキテクツ株式会社が開催したセミナー「フォロワー数60万超のカルビー登壇!【売上を拡大するSNS販促戦略】Twitterから自社サイトへ44万もの送客を実現したマストバイ施策の裏側とは?」の内容を編集したものです。

生活者のライフスタイル多様化に合わせて、拡散性が高く幅広く接点を持てるX(Twitter)活用にチャレンジ

-まずは、カルビーの商品情報について教えてください。

カルビーは、「ポテトチップス」や「堅あげポテト」、「じゃがりこ」などのポテトスナック、「サッポロポテト」や「かっぱえびせん」といった小麦粉を使用した商品、「miino(ミーノ)」などのそら豆を使用した商品、シリアルの「フルグラ」などを提供しています。

最近では、商品を提供するだけでなく、お客様と関わりを持ち続けるために、自宅に商品を届ける「OMA MESI」や、お客様に合わせたグラノーラをカスタマイズする「Body Granola」といった商品にもチャレンジしています。

お菓子だけでなく、食事にも置き換わるような"食品"を目指しています。

-松井さんは、ブランド横断のPR担当として、直近はどのような点を課題と感じていましたか?

主に3点が挙げられます。

✓ お客様との接点の複雑化

従来の価値観にとらわれない多様な暮らし方・働き方が普及する中で、生活者の接触メディアも多様化しマスメディア中心の発信だけでは届かない人が増えてきたことで、新たな手法にチャレンジする必要性を感じていました。

✓ マス施策のコストとスピード感

テレビCMの制作には8~10ヶ月ほど要しますが、世の中のめまぐるしい変化により、半年前に考えていたことを変えなければならないケースも出てきます。よりスピーディーに実施できる施策を必要としていました。

✓ 一方通行のコミュニケーション

カルビーから発信するだけでなく、お客様の反応を見ながら、思いに応えるようなコミュニケーションにシフトしていきたいと考えていました。

松井氏

カルビー株式会社 マーケティング本部 CXプランニング室 松井 章氏
2017年カルビー株式会社へ中途入社。以降、広告・宣伝部署に在籍し、TVCMの企画やカルビー大収穫祭を始めとする全社キャンペーンなどを担当。2019年カルビーPR部【公式】Twitter、2020年スマートフォンアプリ「カルビールビープログラム」の立ち上げ、企画を推進。

-では、どのような経緯でX(Twitter)アカウントを開設されたのでしょうか。

実は、ピンチな状態から立ち上げた経緯があります。
2019年に創立70周年を迎え、「もっと、ワクワク70プロジェクト」という企画を実施しました。”一年(3月~翌年4月)を通じて70個のワクワクを届けよう”という取り組みです。

開始当初はモチベーション高く取り組んでいたものの、9月~10月には中だるみし、予算も使い果たしてきてしまいました。コストをおさえて自分たちでできる施策を模索した結果、X(Twitter)活用にチャレンジすることになり、10月にアカウントを新規開設しました。
SNSの中でもX(Twitter)を選択したのは、多くの人に創立70周年であることを知ってもらうために「拡散性の高さ」が重要と考えたためです。

✓ アカウント運用方針

ブランド別にもX(Twitter)アカウントがありますが、会社全体のPRを目的とした本アカウントでは、ブランドの制限無く、そのときどきにカルビーが盛り上げたいブランドを取り上げています。

フォロワーに楽しんでいただくためのプレゼントキャンペーンを毎週実施しているほか、公式スマートフォンアプリ「カルビー ルビープログラム」へ送客する役割も担っています。
X(Twitter)は、興味関心が薄い人とも「広く接点を持てる場」として、アプリは、よりカルビー商品に興味がある人と密なコミュニケーションをすることで「満足度を高める場」として、すみ分けを図っています。

✓ 体制

CXプランニング室の4名で運用し、各ブランドチームと連携し投稿を作成しています。テレビCMや販促企画など幅広く担う中で、X(Twitter)アカウントもチーム内で運営しています。

✓ KPI

フォロワー数です。100万人を目指しています!

X(Twitter)での取り組みで最も注力したのが、「70日間連続で手書きで商品担当からメッセージを送る」プレゼントキャンペーンです。ただ商品が当たるだけでなく、各商品担当が商品開発の裏側や商品に込めた想いを手書きで届けるというもので、70周年記念ならではのユニークな企画となりました。

手書きメッセージ

各商品担当による手書きメッセージの数々。

-アカウント開設から約3年半で、フォロワー数は60万を超えていますが、どのように規模を拡大されてきたのでしょうか。また、社内で評価されるためにどのような点を重視していますか?

まず、先述の70周年企画で約10万フォロワーまで増えました。そこからは、店頭でなかなか手に入らない商品を中心にプレゼントキャンペーンを実施し、2022年8月には、アライドアーキテクツ社のSNSキャンペーンツール「echoes」を導入し、より勢いをつけながらフォロワー数を伸ばしています。

グラフが垂直に伸びているので分かりやすいと思いますが、導入当初から急激にフォロワー数を増やせたことと、短納期でも運用しやすかったことから、現在も大型プロモーションで活用しています。

グラフ

フォロワー数の推移と主要プロモーション。キャンペーンを活用してフォロワー数を伸ばしていることが分かる。

フォロワー数だけを追うことが大事ではないものの、社内でブランド担当を巻き込んで大規模な施策展開につなげていくには、存在感を高めていくことが重要です。また、社内はもちろん社外でも規模感を分かりやすく伝えられる指標であると考えています。実際に、50万フォロワーを超えてから、コラボでお声がけいただく機会が増えました。
業界トップクラスのフォロワー数になることで、より社内外へインパクトを与えられると考えているので、現在もフォロワー数をメインKPIとしています。
フォローしていただくことで交流を深め、今後注力するファンマーケティングにつなげていける点もメリットです。

第二の大型販促企画「カルビー総選挙」の立ち上げのため、企画の認知拡大と店頭での想起を狙い、X(Twitter)を活用

-「カルビー総選挙」の実施に至った経緯やお取組み内容について詳しく教えてください。

企画のポイントは3点あります。

①秋の「カルビー大収穫祭」に次ぐ、春の販促企画の必要性

北海道のじゃがいもが10万名様に当たる定番企画「カルビー大収穫祭」を毎年実施し、多くの反響をいただいていますが、流通担当の方と会話する中で、売り場を盛り上げるためには春にも販促企画が必要という話になりました。

②ファンとのコミュニケーションを重視

「カルビー大収穫祭」との差別化として、よりお客様の声を反映するとともに、参加しやすさの点からも、”総選挙”の企画が望ましいと考えました。

③幅広い商品を知ってもらうきっかけに

“総選挙”として多くの商品を取り上げることで、まだ認知度が高くないブランドでも多くの方の目に触れる機会となり、今一度幅広い商品を知ってもらうきっかけとなり得ると考えました。

このような経緯で実施した「カルビー総選挙」は、今まで多くの商品を発売してきたカルビーが、各商品の魅力を様々な形でPRし、お客様に好きな商品に投票して盛り上げていただくという企画です。

カルビー総選挙

2023年3月~7月に開催された投票企画「カルビー総選挙」。総投票数は723,358票と、多くの反響を得た。

-企画の認知拡大や盛り上げのために、どのような工夫をされましたか?

まずは、初めての企画となるため露出を最重視しました。SNSだけでなく、商品パッケージや店頭の什器、マス広告、アプリに至るまで、あらゆるタッチポイントで告知しました。

また、より参加したくなるよう、商品担当総勢25名によるPR動画を作成しました。あえてプロではなく社員が体を張ることで、親しみやすさを感じてもらえたのではないかと思います。

X(Twitter)活用の観点では、”総選挙”の企画自体が取り上げやすいメリットがありました。参加者の投票コメントを投稿で紹介したり、ライブ配信で中間発表をしたりなど、過程を小分けに切り出しコンテンツ化しやすい”総選挙”の企画だったからこそ、X(Twitter)でも盛り上げを加速できたと考えています。

-「カルビー総選挙」は、オープンキャンペーンとマストバイキャンペーンで構成されていましたよね。

はい、商品を購入して応募いただくマストバイキャンペーンだけでなく、X(Twitter)上でオープンキャンペーンもあわせて実施しました。100日間連続で毎日カルビー商品が当たる企画で、とにかく広く拡散し多くの方に「カルビー総選挙」を認知していただくためです。

X(Twitter)上でオープンキャンペーンに参加した方が、店頭で商品を見かけた際に手にとるきっかけとなり、購買していただけるような動線を意識して設計しました。

オープンキャンペーン×マストバイキャンペーン

✓ オープンキャンペーン 概要

応募方法:X(Twitter)でアカウントフォロー&対象の投稿をリツイートや引用ツイートをして応募(企画により異なる)
応募期間:2023年3月14日~2023年6月22日
当選商品:各日異なる商品・当選数

✓ マストバイキャンペーン 概要

応募方法:対象商品を購入し、はがき応募の場合は応募券、アプリ「カルビー ルビープログラム」のルビーを使用して投票
応募期間:2023年3月13日~2023年7月22日
対象商品:応募券が付いているカルビー全商品
当選商品:カルビー商品50個詰め合わせセットを10,000名様に

マストバイキャンペーンページへの送客数約44万!フォロワーによる店頭購買へのインパクトを実感

-X(Twitter)を活用したオープンキャンペーンでの成果について教えてください。

100日連続企画のうち、最初の27日間は「echoes」を使用したインスタントウィンキャンペーンを実施しました。アカウントフォロー&対象の投稿をリツイートすると、抽選で50名様に堅あげポテト1ケースが50名様に当たる企画です。

手軽なフォロー&リツイートの応募形式と、その場で抽選結果が分かるインスタントウィン形式により参加モチベーションを高める工夫をしました。さらに、抽選結果を確認するためにマストバイキャンペーンのWEBサイト上に遷移するフローを取り入れることにより、マストバイキャンペーンへの大規模送客を狙いました。

フォロー&リツイートで拡散してもらえるだけでもありがたいですが、実際に約44万もの送客が実現できたことに驚きました。さらにそこから商品を購入いただき、マストバイキャンペーン応募までたどり着いた方は総応募者の18%*と、X(Twitter)キャンペーンから店頭までの誘導を実現できた点も大きな成果です。

「echoes」を活用したX(Twitter)キャンペーンの主な成果

✓ X(Twitter)キャンペーンからマストバイキャンペーンページへの送客数:約44万
✓ カルビーアプリ経由のマストバイキャンペーン応募者のうち、X(Twitter)施策をきっかけに応募した人の割合:約18%*
*スマートフォンアプリ「カルビールビープログラム」から応募した方のうち「カルビーPR部公式アカウントをきっかけに応募した」と回答したユーザー

キャンペーンの主な成果

-X(Twitter)キャンペーン開始当初、約52万ものフォロワーをストックされていたことで、認知を拡大しながら購買までつなげられたのだと思いますが、18%という数値はどのように評価されていますか?

今までは、店頭でのマストバイキャンペーンとX(Twitter)キャンペーンは分断されており、きちんと連携したのは今回が初めてだったため、18%の送客が可視化されたこと自体、社内では評価の声が挙がっています。

X(Twitter)での施策は、一過性のものにすぎないと捉えられがちかもしれません。今回アンケート調査したことで、X(Twitter)で企画を知って店頭に行き、商品を手に取って購入し、応募までしていただいた方が一定数いらっしゃった事実が可視化されたことに価値を感じています。

今回は約52万フォロワーから開始しましたが、今後さらにフォロワー数を増やし、企画やクリエイティブでマストバイキャンペーンサイトへの遷移率の歩留りを高める工夫にも両輪で取り組むことで、より購買への貢献度を高めていけると期待しています。

また、キャンペーン応募の条件ではないものの、「#カルビー総選挙」のハッシュタグをつけて応援メッセージや商品の感想を自主的にツイートいただく方も多くいらっしゃいました。
“総選挙”の企画と、気軽に発信できるX(Twitter)との相性のよさも、成功の要因のひとつだったと言えます。
購入いただいた方がUGCを投稿することで、そのUGCを見た方がキャンペーンを知り、店頭で商品を手に取るきっかけにもなったのではと思います。

「フォロワー」「UGC」「購買」それぞれの施策を連携し、売上貢献・可視化につなげていく

-「echoes」では、「フォロワー」「UGC」「購買」それぞれの成果を高めて循環させ、売上貢献・可視化につながる運用型サイクルを生み出すX(Twitter)活用を提唱しています。今回の「カルビー総選挙」では、まさにこのモデルを体現していただけたのではないでしょうか。

フォロワー-UGC-購買

お客様とは様々な接点があるので、どれか1つの施策を実施するのではなく、各施策をつなげていかないと購買につながらないのでは、と感じていました。そのため、今回「カルビー総選挙」を通じて各施策を連携し、購買につながっていく循環を一部可視化できたことは大きいです。
秋の「カルビー大収穫祭」でも、提唱されている成功モデルを意識して設計していきたいと考えています。

-今後の展望を教えてください。

引き続きフォロワーを増やしつつ、フォロワーになっていただいた方を飽きさせない工夫もあわせて取り組んでまいります。
ファンの方との双方向のコミュニケーションを活性化するライブ配信や、リアルな接点で熱量を高めていくファンミーティングなど、ファンマーケティングにも力を入れていきます。ファンのみなさんとの取り組みを通じて、さらにカルビー全体を盛り上げていけたらうれしいです。