ネスレ日本株式会社 / ネスレアミューズ
2023.1.19
生活者のメディア接触時間が上げ止まりし、WEB、SNSともにコンテンツ競争が激化する中で、オウンドメディアとSNSはどのような役割で使い分け、活用していくことが求められるでしょうか。
今回はネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部 デジタルマーケティング部の中通 康太氏に、オウンドメディア運営において重視すべきことや、SNSの中でもTwitterに注力する理由、「echoes」で得られた成果について聞きました。
-まずは、中通様のご担当領域と「ネスレアミューズ」のお取組み内容について教えてください。
我々ネスレ日本は、コーヒーの「ネスカフェ」やチョコレートの「キットカット」をはじめ、調理食品、栄養補助食品、ペットフードなど、様々な製品・ブランドを取り扱っており、それぞれのブランドが売上の責任を負い、マーケティングやプロモーションを行なっています。
その中で、私はひとつのブランドには属さず、横断的な役割をもつ「マーケティング&コミュニケーションズ本部デジタルマーケティング部」という組織で日々デジタルを活用した施策、運用をしています。
ネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部 デジタルマーケティング部 中通 康太氏
大手通販企業にてアナリストとECのコミュニケーション領域全般(4マス+Digital広告/CRM/SNS/App/サイト etc.)を経験。
その後、テーマパーク運営会社に移りApp開発のグローバルプロジェクトのリーダーとしての活動に加え、CRM&Owned Media責任者として戦略・プラン設計、推進を中心に活動。
2021年5月より現職。SNS、Owned Media集客全般、およびデジタルマーケティング全体の戦略設計、DX推進を担当。
我々がデジタル施策の一つとして重視してきたのが、「ネスレアミューズ」というオウンドメディアです。「ネスレアミューズ」は、各ブランドのWEBページや自社ECサイトへのブリッジを行う役割を担い、また「ネスレアミューズ」独自でもコミュニケーションを行うコンテンツで構成されています。
各ブランドのページやECサイトはそれぞれの部署が独立して運用していますが、我々のマーケティング&コミュニケーションズ本部では、この「ネスレアミューズ」独自のユーザーコミュニケーション領域のコンテンツを運用して、単体ブランドでは実施しにくい、横断組織だからできるプロモーションを行なっています。
-現在の事業課題・マーケティング課題をどのように捉えていますか。
「ネスカフェ」や「キットカット」といったブランドごとに持っている課題は市場がそもそも異なるので、課題もそれぞれ異なります。ただ、ネスレの会社全体として言えることは、我々はマーケティングを「生活者の課題を発見し解決すること」「その解決策を世の中に広めることで付加価値に転換すること」と捉えており、
最も重要である「どこに課題があるか」を見つけることは、生活者が日を追うごとに常に変遷していく中においては、これは永遠の課題と考えています。
また、ネスレのパーパス(存在意義)は「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます。」と定義されています。
世の中の人たちが抱えている潜在的・顕在的な課題と、その課題を解決できるネスレのプロダクトやサービスをマッチングさせることが「生活の質を高める」ことにつながり、ネスレの価値を体現する一つの手段になります。共通の課題を見つけ、そういう人たちがどこにいるのか見つけ、どうアプローチするか?がコミュニケーション課題であり、我々の使命だと言えると思います。
-会社としてのパーパスやブランド・プロミスを大事にされていて、それこそが取り組むべきマーケティングということですね。「ネスレアミューズ」は、そのような課題においてどのような役割を持っているのでしょうか。
「ネスレアミューズ」はネスレが持っている各ブランドサイトやECサイト、コーポレートサイトなど様々なコンテンツを連携し、これらを有機的に横につなげていくハブの役割を担っています。
「ネスレアミューズ」に集客し各ページに送客することで、プロダクト認知、ブランド理解、EC購入といった成果に何かしらつながります。
この役割は継続しつつも、最近は生活者へのアプローチ方法を見直しています。生活者の情報の探し方や受け取り方が多様化してきているためです。
かつては、「有名なブランドで信頼できるから」「ほかの誰かが買っているから」といった理由で購入するケースが多くみられました。今もこれが消滅したわけではないですが、一方で、昨今は毎年のように新しく強いメディアが登場し、それに伴って発信者が増え、受信者も受け取る情報の幅が広がったことで、自分自身の価値観を大事にする傾向が生まれています。そのため、きちんとプロダクトを理解してもらう必要性も高まっています。
そのため、例えば「ネスカフェ」であればコーヒーやそれに準ずるものに興味がある、日常的に飲んでいるといった、そのプロダクトのカテゴリーに”関連”のある人をどのように引き込んで、どう自社ブランドを理解してもらうか、という発想の重要度が大きくなりつつあります。
具体的な施策としては、分かりやすいのはSEO対策ですが、SNSでも“タグる”への対策、つまりハッシュタグ検索がされた際きちんとひっかかるようなコンテンツを発信していくことや、SNSキャンペーンでも商品理解につながる企画・インセンティブを設計することも、そのうちの一つです。
また、提供するコンテンツ内容の面においても、例えばレシピのように、触れてもらうことで製品理解が深まったり、消費につながるようなコンテンツに注力する必要もあります。
ー「ネスレアミューズ」の公式SNSアカウントの役割についてはいかがですか?
SNS施策の中心に置いているのは公式Twitterアカウントです。Twitterは拡散性に優れたメディアであり、また他のメディアと比べると比較的多くの投稿を行っても許容されるメディアのため、ブランド横断のコンテンツを配信する「ネスレアミューズ」としては相性が良く、商品やブランド、コンテンツを知ってもらう目的で運営しています。
InstagramはDAU、ユーザー数などにおいて魅力的ではありますが、現時点で「ネスレアミューズ」はアカウントを開設していません。現時点で「ネスレアミューズ」が解決したい課題や、ターゲット、リソースなどを総合的に考えてTwitterを優先しています。目的が不明確なままアカウントを持つと、いざアカウントを作った後に何をして、何を軸に活動にすればいいか分からなくなりますし、結果が本当に良かったのか悪かったのか判断できないので、「やったほうが良さそうだからなんとなく開設する」ということはしないです。
ユーザー数や世の中の温度感=流行っているという事実もターゲット次第では一つの検討材料としては非常に重要なことですが、目的を明確にし、それを達成するために何をするべきか、それをするには何を使うと最も良いのか、という視点でメディアを選定し、目的にあったメディアとKPIを設定していくべきだと考えています。
-一方で、SEOでもSNSでも、コンテンツ競争が激化していますよね。企業のSNSアカウントが直接的に売上につながらず投資対効果が見えづらいと言われている中、どのように社内で推進されたのでしょうか?
まず、説明変数が多すぎるため、一つひとつの施策で売上への貢献度を測ることは困難であることが大前提です。
例えば自宅で過ごしている人に「キットカット」を買ってもらうためには、まず何かの衝動に駆られ、外出の支度をし、コンビニに行ってもらい、チョコレートが食べたいと思ってもらい、「キットカット」を認識し、見つけてもらい、数多ある競合に打ち勝って手に取ってもらい、レジ横の他のチョコレートの誘惑に勝ってレジを通してもらう、などの段階があります。これらのハードルをSNSの投稿一つで全て解決することはとても難しいです。
今実施している施策がどの段階にあたるもので、どのような意識変容・行動変容を起こすものなのかを丁寧に紐解いていきます。そして、なぜ売上が上がるのか?その説明変数は?どの意識変容・行動変容にあたるものなのか?という観点で売上への貢献度のロジックをたてるほかないと考えています。
もし何かのSNS投稿一本で売り上げが上がったとしても、それがなぜ上がったのか?お客様はなぜ買ってくれたのか?を説明できない限りは、再現性がありませんし、同じことをやり続けると効果は低減するためサステナブルな施策にならないと思います。
Twitterアカウントも、購買に対する直接的な寄与を見ているのではなく、メディアの特性などを鑑み、マーケティングファネル(ダブルファネル)における最上部と最下部、つまり認知拡大とエンゲージメント向上を担う役割で運用しています。
-では、オウンドメディア・Twitterそれぞれ具体的に重視しているKPIを教えてください。
日常的に見ている数字としては、現時点で「ネスレアミューズ」では、情報を伝えられる幅としての会員数、集客数と、ハブの役割としてのブランドサイトやECサイトへの送客数を見ています。
Twitterアカウントでは、インプレッション数とエンゲージメント数の両方を見ていますが、”いいね”やRTを獲得することはインプレッション増にある程度帰結するため、最上位の指標はインプレッションです。
そのため、Twitterの投稿から「ネスレアミューズ」上のコンテンツへの誘導は積極的には実施していません。
SNSからサイトへの誘導数よりも本当に大切なことは、Twitterでもオウンドメディアでも、どこでもいいので自分たちの届けたい、伝えたいことが伝えられたか?ということなので、閲覧されるユーザーにかかるストレスを考慮し、無理に遷移させることはせずにできる限り各プラットフォーム内で完結させています。
-Twitterキャンペーンの活用目的と、今回Twitterキャンペーンツール「echoes」で得られた成果や社内での反響について教えてください。
通常、Twitterキャンペーンは、Twitter活用目的である認知獲得とエンゲージメントを、より強化するために行うことがほとんどです。
その中で今回新たに「echoes」の活用にチャレンジしたのは、オウンドメディアとTwitterアカウントの両方で能動的にブランドに関わってもらえれば、よりエンゲージメントやLTV向上につながるのでは、という視点です。よくデータマーケティングの世界のあるあるで起こる、複数のチャネル登録者がLTVの高い顧客になりがち、という考え方と同じです。
前述の通り弊社はユーザーの使い勝手を優先して、コンテンツはできる限りそれぞれのプラットフォーム内で完結させています。この弊害として、各メディアを使い分けているユーザーに届かないコンテンツ、物理的な制約によって伝達しきれないコンテンツが発生しています。これを補填するためには、能動的に両方のメディアに関わってもらうことがベストです。キャンペーンという形できっかけを作り、その後の両メディア上でのコンテンツに触れてもらい、エンゲージメントを高める足掛かりにする狙いです。
結果、新規・既存会員含めオウンドメディアに4万もの送客を実現でき、両メディアでのアクティブ化に寄与できたと思います。
また、こういったことは継続的に取り組んでいくことでさらに成果を得られると思いますが、一方で社内リソースは限られています。今回「echoes」が非常に良かったのは、一度導入してスキームを組んでしまえば、それ以降に実施する場合にかかる手間を大きく削減できたことです。
-今後「echoes」に期待することや、Twitter活用における展望を教えてください。
今回の施策により既存のお客様だけでなく新規のフォロワーも獲得できたので、新規フォロワーがその後Twitterとオウンドメディア両方でどういう行動をしているのか?Twitterフォロワーではないオウンドメディア会員よりもアクティブになっているのか?といった、質の部分がTwitterとオウンドメディアをまたいで可視化されると施策の透明度が上がり、価値を証明しやすくなるのではと思います。
今後も、ネスレのパーパス(存在意義)である「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていく」をより体現するために、世の中の人たちが抱えている課題と、ネスレのプロダクトやサービスを通じた解決のマッチングを、オウンドメディアとSNSをより効果的に活用して推進していきたいと思います。
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あらかじめご了承ください。