2019.11.13
月間利用者が8100万人、そのうちの86%が「毎日使っている」コミュニケーションツール、LINE(※1)。
その企業向け主要サービスの1つが生活者と直接接点をもつことができる「LINE公式アカウント」です。2019年4月にサービス体系が変更され、より気軽に利用できるようになった一方、「なぜ今LINEを活用すべきなのか」「どのようにマーケティング施策に活用していくのか」など疑問をお持ちのご担当者も多いと思います。
今回は、生活者を巻き込んだ「生活者マーケティング」を提唱するアライドアーキテクツが主催し、LINE株式会社とLINE公式アカウントの活用で成果をあげている株式会社AKAISHIのご担当者にご登壇いただいたセミナー、「成功企業が語る、成果が出たLINE公式アカウント運用手法」のレポートをお届けします。
(※1)LINE紹介資料 媒体資料 2019年10月-12月期より
Topics
およそ8100万人の月間利用者をかかえ、コミュニケーションツールとして私たちの生活に浸透しているLINE。その企業向けの主要サービスのひとつであるLINE公式アカウントは、LINE上で企業が一般生活者と直接的な接点をもち、定常的にメッセージを配信できるサービスです。そんな生活者との定常的なつながりをもつLINE公式アカウントの活用が、今、なぜ必要なのでしょうか?
最初のセッションではアライドアーキテクツ株式会社 亀田 明日花氏が、生活者と接点をもち生活者を巻き込むマーケティング施策を実施すべき理由について語りました。
現代社会では、情報デバイスやメディアの多様化によって「生活者と情報との接点が多様化」し、情報が溢れかえっています。そのため、生活者自身「どんな情報を信用すれば良いかがわからなくなって」おり、その結果、口コミなどより身近な人、自分と同じ立場の人から発信された情報の存在感が増しています。加えて、生活者が何を判断軸に商品を購入するのかも多様化し、企業は生活者の「十人十色の判断軸」に対応することが求められているのです。
アライドアーキテクツ株式会社 亀田 明日花氏
こうした状況下、企業が生活者に「信頼されるための情報発信」と「多様化する価値観に対応するための訴求」を行なっていくための効果的な手法として亀田氏が提案しているのが、「生活者を巻き込んだマーケティング」です。
たとえば、「UGC(※2)の活用」もその1つです。おもにSNSなどのインターネット上に発信された口コミコンテンツであるUGCは、生活者目線の情報として信頼度が高く、購買行動へ影響も与える存在です。
出典:Olapic 「Facebook&Instagram Advertising with UGC:A Plactitior’s Guide」
亀田氏は、企業が企業の立場でマーケティング施策を思案するより、施策を考える段階で当事者である生活者を巻き込むことで効率的にかつ効果的な情報発信ができると言います。亀田氏は、企業が生活者と定常的に接点をもち、その力を借りていくような関係を築いていく重要性が今後ますます増していくとまとめました。
亀田氏の提案する「生活者と定常的に接点をもち、関係を築いていくための施策」の1つがLINE社の企業向け主要サービスであるLINE公式アカウント運用です。2つ目のセッションでは「LINE公式アカウント」の活用メリットについて、LINE株式会社 三節草 昴大氏が講演を行いました。
LINEは、月間利用者が8100万人、そのうちの86%が「毎日LINEを使っている」と回答しているコミュニケーションツールです。家族や友人とのコミュニケーションには欠かせない存在として、サービスの提供開始から8年、月間利用者数が増加し続けていると言います。
LINE株式会社 三節草 昴大氏
三節草氏の話から、LINEの主要サービスである「LINE公式アカウント」を活用するメリットには、大きく以下の3点があります。
LINEのユーザー層の男女比は女性が少し多めですが、ほぼ半々となっており、年齢も40歳以上のユーザーが半数以上を占めるなど、他のSNSと比べてユーザー層の幅広さが特徴です。加えてユーザーの居住地も日本の人口分布比率とほぼ同様の分布となっており、全国各地のユーザーと接点を持つことができます。
また日本で利用されている主要SNSの中でユーザー数は群を抜いて多く、アクティブ率も高いことからリーチ力の高さに定評があります。
2018年12月に発表された新料金プランにより、無料でアカウントの開設ができるようになったことも「LINE公式アカウント」の活用メリットの1つです。料金体系の改定でメッセージの送信数による従量課金体系が採用され、LINE公式アカウントはスモールスタートが可能となりました。また、これまで有料プランでの利用に限られていた機能がすべてのプランで利用可能です。
LINE公式アカウントでは大きく「メッセージ配信」と「タイムラインへの投稿」を行うことができます。メッセージ配信には特定のユーザーにのみメッセージをおくる「セグメントメッセージ」や、メッセージの画像をタップさせることで外部サイトへの遷移を促す「リッチメッセージ」などの機能があり、目的に応じて様々な取り組みが可能です。また「チャット機能」を利用して、ユーザーとのコミュニケーション効率化も実現できます。 さらに、「タイムライン投稿」を活用し、投稿についた「いいね数」によってクーポンを配布し、高いクーポン利用率で店舗への送客に成功した事例もあり、LINE公式アカウントは活用の仕方によって様々な効果を得ることができると言えます。
また、LINE公式アカウントでは今後も、様々な機能をリリース予定だと言います。生活者との定常的な接点をもつためのものとして、同施策はますます需要が高まりそうです。
では、実際にLINE公式アカウントの運用をマーケティング施策に取り入れて成果をあげている企業はどんな手法をとっているのでしょうか? 今回はLINE公式アカウント運用で成果を出している企業として、株式会社AKAISHI 小林宏紀氏が登壇しました。
AKAISHIは静岡県静岡市に本社を置く婦人向けの靴メーカーです。商品コンセプトは「足の悩みを解決する靴」。足にまつわる様々な悩みを解決できるような婦人靴の開発と販売を行なっています。
そんなAKAISHIでは2018年1月からLINE公式アカウントの運用を開始しました。その背景には、同社の主要売り上げの1つであるECサイトでの売り上げ構成比で、スマホサイトの割合が増加してきたことがありました。今後売り上げを伸ばすためにはスマホサイトでのCVRの底上げは必須であり、その対策がLINE公式アカウントの運用でした。
また小林氏は、メルマガリストの拡大に限界を感じていたとも言います。スマホやタブレットの普及でメールを受信するデバイスが多様化するなか、ドメインだけではどのデバイスでメールを受信しているのかが判別できず、受信デバイスによるセグメントが難しくなりました。さらに、店舗でメルマガの登録を促す際も、その設定が煩雑化しオペレーション上の負担がありました。
こうした背景からLINE公式アカウントの運用を開始したAKAISHでIは、効果的なアカウント運用のポイントとその成果について以下のように振り返ります。
株式会社AKAISHI 小林 宏紀氏
LINE公式アカウントの運用にはある程度のスケールメリットがあると考えた同社では、まず自社サイト、店舗の店頭やメルマガなど、あらゆる顧客接点を駆使して積極的に友だち獲得施策に取り組みました。その結果4ヶ月で2000人1年半で1万人、現在は13000人弱まで友だちを増やしています。実際に売り上げの変化を感じたのは友だち数が2000人を超えたあたりだと小林氏は言います。事業規模等によってその数は異なりますが、ある程度の友だち数を確保する施策は行なっていくべきと言えるでしょう。
AKAISHIのLINE公式アカウントでは、友だちの獲得時から積極的な「優先予約」や「優待割引」といった施策を行い、「LINE公式アカウントをフォローするとお得である」というPRを行なっています。一方、こうしたセール情報だけではなく同社では「リッチメッセージ」機能を活用しながら商品情報も定常的に発信してきました。その結果、ECサイトへの送客率としてはメルマガの2.8倍、そこからの購買率はサイト平均のおよそ1.5倍という成果を出しています。
また、月単位でみると、アクセスの3分の1くらいはセール情報から発生していますが、残りの3分の2は新商品のご案内など商品の情報をお伝えするメッセージから発生しています。同社にとって、「値引き」などは友だち登録を促進する時や、アカウントのブロックを防ぐための手段となっています。
当社の施策においては、LINE公式アカウントの友だちは送客率と購買率が高い傾向にあり、いわば「購買意欲が高い顧客」と捉えることができます。そのため購買意欲が高い顧客の声を商品に反映させる施策として、AKAISHIでは新商品を発売する際に新商品の色の希望についてのアンケートをLINE公式アカウントから配信しました。そうして選ばれた商品は売り上げも好調で結果を残しており、LINE公式アカウントの友だちを巻き込むことで、商品開発の精度やスピードもアップすることができました。
当初、メルマガ登録ユーザーをすべてLINE公式アカウントの方へ移行しても構わないという覚悟でLINEへの誘導施策を行なっていたAKAISHI。しかし、友だち数が増加し、成果が出始めてからもなおメルマガ経由からの売り上げは下がらなかったことが一番の驚きだったといいます。この結果をうけ同社では、「LINEしか見ない」という顧客の掘り起こしに成功したと施策を評価しています。
最後は、会場からの質問についてアライドアーキテクツ株式会社 藤田佳佑氏をモデレーターに小林氏と三節草氏にトークセッションを行われました。ここでは、そこでの質疑応答の一部をご紹介します。
小林氏:店舗のスタッフからは、お客様への友だち追加の案内がとても簡単でやりやすかったという声があがっています。また、お客様からも「LINEならやり方がわかなくても娘に聞ける」などという声も頂いています。ユーザー数の多さとユーザー層の幅広さが特徴のLINEだからこその効果だと思います。
小林氏:我々の場合は最初からメルマガのお客さんを取り込んでいく覚悟を決めてやっていたのでメルマガでも「LINE始めました。LINEの方がお得ですよ」といったメッセージを送っていました。まずは、すでに他の接点を持っている既存のお客様から集客を始めると増えやすいのかなと思います。
またLINE経由限定でセールスができるなどといった施策も効果的でした。「LINEではお得なことをやっている」と印象づけるようなコミュニケーションで、LINEへお客様を集約していきました。
三節草氏:店舗のポップやポスターでのご案内は有効です。またECのお客様ですと、配送注文書や同梱状にラインのQRコードを入れていただくのも効果的な施策です。 LINE公式アカウントはある程度初期に友だちを増やすことで効果を実感することができます。効果が見えずに途中で運用をやめてしまうことが一番勿体無いと思いますので、友だちの獲得施策についてはなるべく注力していただきたいです。
(写真左)アライドアーキテクツ株式会社 藤田 佳佑氏
(写真中央)株式会社AKAISHI 小林 宏紀氏
(写真右)LINE株式会社 三節草 昴大氏
小林氏:平均的にエンゲージが高いのはセール情報の配信ですが、LINEの友だち先行で限定色の商品をご案内したときはかなりエンゲージが高い結果となりました。
「LINE友だち先行」や「限定販売」など、LINE公式アカウントをフォローしているユーザーさんが「特別扱いされている」と思うような配信を行っていけばブロック率もさがるのかなと思います。EC事業者ですとどうしても値引きをして売り上げを作っていくかということに頭がいきがちですが、値引き施策がなくてもいかにお客様に満足してもらえるか、値引きをしすぎないコミュニケーションも大切だと考えています。
また、メッセージの送りすぎは失敗でした。メッセージの配信は多くて週2回だと言われていたのですが、それを破ってしまったためにブロックされたことがあります(笑)。
三節草氏:やはりユーザーさんにとっても、企業からのメッセージは普段の普通のお友達とのやりとりの中にお邪魔させていただいているという形になります。友達とのやりとりの間に企業様の広告色の強いメッセージが毎回入ってくると煩わしく思うユーザーさんも多いと思いますのでバランスを考えた運用を行なっていただきたいです。
いかがでしたか?今回は「成功企業が語る、成果がでたLINE公式アカウント運用手法」のセミナーレポートをお送りしました。
LINE公式アカウント運用をご検討中のご担当者様、アカウント運用にお悩みのご担当者様もぜひご参考いただければ幸いです。