1933年、広島県みはら港町に和菓子屋として創業した株式会社八天堂は、時代の変化とともに洋菓子、パン、スイーツパンを展開し、店舗を拡大。現在は、「くりーむパン」を代表とするスイーツパンの専門店として国内20カ所、海外5カ国に店舗を構え、EC事業やカフェリエ事業などを展開するまでに大きく成長しています。

その大きな成長のカギとなったのが、ファンによる口コミの存在です。今回は、八天堂EC事業部の吉田有希氏に、同社が取り組むファンマーケティング施策や今後の戦略についてお話を伺いました。

八天堂 ファンマーケティング 事例インタビュー(右)株式会社八天堂 EC事業部係長 吉田有希氏
(左)アライドアーキテクツ株式会社 モニプラファンブログ事業部 小林由依

Topics

八天堂の86年の歴史は、広島県みはら港町の一軒の和菓子屋から始まった

-まずは御社の事業内容と商品について教えてください。

株式会社八天堂の創業は昭和8年、今年で86年目を迎えました。まだ人々の生活が苦しい時代に「甘くておいしい和菓子を通じて、少しでも周りの人たちを元気づけたい」という想いから、広島県みはら港町に一軒の和菓子屋を開いたところからスタート。二代目は洋菓子屋、三代目はパン屋と、時代にあわせて変化しながら成長してきました。

現在の弊社の代表商品は「くりーむパン」ですが、実はまだ誕生から11年しか経っていません。その背景には、会社としての大きな方向転換があります。

三代目から始めたパン屋が拡大し、店舗数が10店舗を数えるまでに成長するにつれて、いつしか「良いパンを」という当初の想いから離れ、「売れるパン」を作るように。気付いたら100種類ものパンを製造するようになっていました。そしてその拡大とは裏腹に徐々に業績が落ち込んでいったのです。改めて「お客様の笑顔のため」、「関わっていただける人たちの笑顔のため」という原点に立ち戻ることとし、一点集中しようと100種類以上あったパンの中から一つに絞った結果がくりーむパンでした。

それから11年、ふんわりと口の中で生地とクリームが溶けていくくりーむパンは、おかげさまでお客様から大変評判をいただき、口コミを通じて多くの方にご支持いただけるようになりました。現在では、広島県内だけでなく日本全国や海外へも拡大、また店舗展開のみならず、百貨店などを通じたカタログ通販や、EC事業なども展開しています。

八天堂 くりーむパン誕生から11年、八天堂を代表する商品「くりーむパン」

芸能人からの紹介をきっかけにファンの支持がじわじわと広がり全国規模へ

-くりーむパンが全国に支持を拡げたきっかけは口コミだったとのことですが、具体的なエピソードを教えてください。

一番最初にくりーむパンを全国の方に知っていただいたきっかけは、芸能人の方が「お気に入りの手土産」としてテレビ番組やブログなどで紹介してくださったことです。それをきっかけに、もともとくりーむパンが商品として持っていた「何か人に共有したいと思わせる要素」と、世の中のSNSの普及の流れがあいまって、じわじわと全国に支持を拡げていくことができたと考えています。

また、事業拡大の中でさまざまな企業さんとコラボしたことにより、それまで八天堂を知らなかった色んな層の方に商品を手に取っていただけるようになりました。例えば、アイドルとコラボした時には、そのアイドルのファンの方がTwitterなどでたくさん広めてくださり、SNSの力ってすごいな、ファンの力ってとても強いんだなと思うようになりました。

八天堂 EC事業部 吉田有希氏
株式会社八天堂 吉田有希氏

ファンの顔が見えるマーケティング施策を

-そのような経験から、現在御社はファンマーケティングに力を入れているとお伺いしました。具体的にどのような内容に取り組んでいらっしゃるのか、また実施の体制などを教えてください。

実は弊社が本格的にマーケティングそのものに取り組み始めたのは、まだ今年に入ってからなのです。

私たちの原点は「商品作り」です。当初販売やマーケティングのノウハウはなかったため、広島から始まり、次の展開として東京に出るときも、販売についてはパートナー会社と組んで株式会社八天堂リテイリングという別会社を作り、「製販分離(製造:八天堂、販売:八天堂リテイリング)」の体制でスタートしました。このような状態なので、今まで八天堂では、市場調査をしたり、それに基づいた戦略的な施策を展開したり、…などのマーケティング業務は全く行えていませんでした。

商品は口コミでどんどん広まっていく一方、私たちはその方たちのことを何も知らない。本当のファンはどんな方なんだろうか、日常のどんなシーンでどんな風に使っていただいているのか、お召し上がりいただいているのかを知りたい、という想いが強くなっていきました。また、それまでは冷蔵で販売していたくりーむパンを冷凍でも配送できる取り組みを開始し、通販やECにより力を入れていくタイミングだったこともあり、今年になって本格的にEC事業部でマーケティングへの取り組みを開始することにしました。

現在は、その第一弾としてモニプラファンブログ(モニログ)を活用したファンマーケティングを開始、生活者の方に実際に商品をお召し上がりいただき、感想をインスタグラムやブログに投稿いただく取り組みを行っています。

八天堂 くりーむパン ファンのインスタグラム投稿モニプラファンブログのファンによるインスタグラム投稿例

-マーケティングにも色々な方法がありますが、御社がモニログを活用したファンマーケティングをその第一歩に選択したのはなぜでしょうか?

短期的な売上だけ伸ばすのであれば、ウェブ広告をたくさん出稿したり、新商品をどんどん出したりなどの方法も有効だと思います。しかしながら、今後もっと商品の認知を上げ、長期的に着実に伸ばしていくのであれば、やはりファンの方から自然に発信いただけるようなサイクルを作っていくことが大切です。

そのためにはまずは私たちがファンの方一人一人のことをよく知ること、そして私たちが自らの意思をもって、よりファンの方にクチコミを拡げていただけるような取り組みを進めていく必要があると考えました。でも、それまでメルマガやDMくらいしかできていなかった当社が具体的にどのようにファンマーケティングを進めていけるのか…そんなことを考えていた時に出会ったのがモニログでした。

モニログであれば、私たちが考える「顔の見えるファンマーケティング」が実践できると思いました。また、私たちのような中小企業でも導入しやすい費用であること、また管理画面が大変使いやすく、他業務と兼任しながらでも簡単にファンマーケティングが実践できることも導入のポイントになったと思います。

アライドアーキテクツ 小林アライドアーキテクツ株式会社 小林由依

モニプラファンブログでファンとのつながりを実感中

-実際にファンマーケティングを開始されてみていかがですか?具体的な成果や、それに対する感想を教えてください。

最初は、生活者の方が本当に反応してくださるのか、写真や感想をSNSに投稿してくださるのか、そして商品のサンプリングを通じて弊社の商品を好きになってくれたり、ファンになっていただいたりすることが可能なのかなど、色々と心配していました。

でも実際に取り組みを開始してみたら、本当にたくさんの方が参加してくださり、とても質の高い素敵な投稿をしてくださったり、投稿のコメント内で「私もこの商品知ってる!」と盛り上がっていたり…と嬉しい驚きがたくさんありました。ファンの方から、モニター商品が届いたことに対する喜びのメッセージをいただくこともあります。

モニログに登録している方は、多数のフォロワーを持つインフルエンサーというわけではなく、いわゆるマイクロインフルエンサーのカテゴリに属する方が多いですが、興味を持っていただいている方に話題にしていただき、着実に広まっている実感を持てています。また、実際に最初のサンプリングをきっかけにその後ウェブで購入いただいたり、お中元にご利用いただいたりしたファンの方もいらっしゃいます。

さらに、弊社の商品が店舗だけでなく通販でも販売されていることや、くりーむパン以外の商品もあることを知っていただくきっかけにもなっています。特にくりーむパン以外の新商品は、「八天堂=くりーむパン」のイメージが強いため、一番最初に手に取っていただくのが難しいという課題がありました。ですので、サンプリングを通じて新商品を体験いただくきっかけを作れることや、「食べてみたけど美味しかった」などの感想をSNSに投稿いただけるのはとても大きいですね。弊社がホームページを綺麗に作りこんでコピーを並べるよりも大きな何かが、口コミにはあると思います。

八天堂 EC事業部 吉田有希氏株式会社八天堂 吉田有希氏

インスタグラムの運用にファンの投稿を活用

-御社ではインスタグラムの公式アカウントを積極的に運営しているようですが、この狙いをお聞かせいただけますか?

インスタグラムも最近始めた施策の一つです。弊社の商品は写真を見て「美味しそう」と思っていただけることが多いため、数あるSNSの中でもインスタグラムが一番相性が良いのではないかと考え、まずはここからスタートすることにしました。また、インスタグラムは自身で撮った写真を掲載することが前提になっているため、あまりネガティブなコメントは発生せず、基本的にはポジティブでプラスの側面が大きいのではないかな、と思ったことも理由の一つです。

インスタグラムでは、八天堂が行っているさまざまな取り組みについて発信しています。商品についてもくりーむパンの情報だけでなく、食パンやスーパーマーケットだけに卸しているメロンパンなどの情報を発信したり。工場見学についての情報や、カフェリエというカフェ事業、そこでのパン作り体験などについての情報も発信したり。どの投稿の反応が良いかなどの数字も追いながら、日々運営を行っています。

八天堂公式インスタグラム
八天堂公式インスタグラムアカウント @hattendo_official(https://www.instagram.com/hattendo_official/)

モニログのファンの方からの投稿も、インスタグラムの素材の一つとして活用しています。「#hattendo_fan」というタグをつけて投稿いただいているのですが、その投稿をストーリーズに流してみたところ、本当に多くの方に見ていただくことができました。現在はプロフィールページのハイライトに「モニター会員様投稿」をまとめて掲載しています。

この「#hattendo_fan」というタグはもともとはモニターさんの投稿用に作ったものなのですが、今ではそれが徐々に浸透し、モニターではない一般のファンの方もこのタグをつけて投稿してくださってるんです。そして、そのタグをつけていただいた投稿を、私たちがまたインスタグラムで紹介させていただく…というとても素敵な流れが生まれています。

八天堂公式インスタグラム ストーリーズ投稿
「#hattendo_fan」のタグがついたファンからの投稿を毎月まとめてストーリーズで紹介

ファンから愛される八天堂ブランドを目指して

-モニログやインスタグラムでファンから投稿された写真は、その他にどのように活用されていますか?

ファンの方からの投稿をスライドにまとめ、社内で月に1回全社員を集めて実施している誕生日会で共有しています。

弊社は社員数130名程度ですが、そのほとんどが普段は工場で働いているスタッフです。私自身も入社1年目は工場にいたのですが、やはりお客様の顔が見えないんですね。でも、こうしてファンの方の投稿を通じて、お客様が喜んで食べてくださっている様子を見ると、とても嬉しいですし、励みになります。EC事業部が普段何をやっているかの理解にもつながっているかな、と思います。

また、モニログのファンの方の投稿の質がとても高く、商品をよりよく見せるためのアレンジやコーディネートを工夫してくださっていて、私たち自身も大変勉強になっています。

-最後に、今後御社がファンマーケティングとして挑戦してみたいことについてお聞かせください。

ファンの方一人一人とお会いしてじっくりお話ができるファンミーティングをやってみたいなと思っています。また、弊社が運営するカフェや工場見学に来ていただくなど、商品だけにとどまらない、八天堂のブランドそのものを体験いただけるような機会を増やしていきたいですね。

弊社は、「良い品、良い人、良い会社作り」を経営理念に掲げており、人づくりをとても大切にしている会社です。ただの食品メーカーではなく、くりーむパンを通してお客様に優しさをお届けしていきたい。片手で持つことができ、人と目を合わせながら召し上がっていただけるくりーむパンには、私たちのそんな想いが込められています。また、くりーむパンは今でも工場で一つ一つ手作りしているんです。手焚きで作ったクリームを、焼いたパンに、機械を使わず一つ一つ手作業で注入しています。

私たちのそんな姿をもっと多くの方に知っていただき、商品だけでなく、八天堂全体のファンになっていただけるように努力していきたいですね。

八天堂 ファンマーケティング 事例インタビュー写真
(左)株式会社八天堂 吉田有希氏 (右)アライドアーキテクツ株式会社 小林由依