2019.12.26
ここ数年で劇的な変化を遂げ、もはや生活のインフラと言える存在にもなりつつあるインスタグラム。「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」をミッションに、インスタグラムは今後どのような方向に進んでいくのでしょうか?
今回は、2020年に必ず押さえておくべき「4つのインスタグラムマーケティングトレンド」と、それらに対して企業がどのように向き合うべきか、解説します。
サマリー
- -ユーザーにとっては、「インスタ映え」といわれる非日常感のSNSから、「チル」といわれるリアルな日常を映し出すコンテンツが多く投稿されるようになった。
- -企業活用においては、「インタラクティブ」がキーワードになり、いいね稼ぎのコンテンツではなく、ユーザーとのコミュニケーションが生まれるコンテンツの用意が必要になる。 また、ユーザーからの認知から購入までをInstagram内でシームレス行うことができるようになる。
- -インスタグラム広告においては、発見タブに広告出稿が可能になるなど、広告メニュー幅が拡がった。
また、Facebook社はオーガニックリーチには限界があるとし、広告活用によりターゲットへのリーチも可能と呼びかけた。
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かつて「インスタ映え」という言葉が流行ワードとなったように、インスタグラムは若い女性を中心に「憧れ」を演出する場所として発展しました。しかしながら、ここ数年でその様子は激変、あらゆるユーザー層に普及し使われ方の幅が広がった今は、より「リアル」で日常感があり、生活に必要な情報が得られる場として機能しています。
以下の調査によると、生活者の好きな投稿は「リアルな日常生活の様子を伝える写真や動画」が48%でトップとなっています。現在求められているのは「作りこまれたおしゃれな写真」ではなく、「自分が実際に使う時の様子がイメージできるような写真や動画」であり、テキストも長めに添えられる傾向にあります。このような身近な投稿はChill(チル)投稿とも呼ばれています。
サムライト株式会社「20〜30代女性のInstagram利用実態を徹底調査!”見たい投稿”と”自分が投稿したいもの”は違う!?」(2019年7月度)よりアライドアーキテクツが作成
この流れにさらに拍車をかけているのが「ストーリーズ機能」です。日本は世界有数のストーリーズ大国であり、デイリーアクティブ利用者の70%がストーリーズを利用しています。日本で1日あたりに投稿されるストーリーズの数は700万投稿にも及び、これは映画1万本分より長い時間に相当するそうです。ストーリーズ機能の登場・ユーザーへの定着により、インスタグラムは「創りこまれた世界観」が表現される場所ではなく、むしろ「日常のリアルな様子」「飾らない姿」を表現する場所にシフトしていったと言えます。
これらの流れを受けて企業がまず取り組むべきことは、自社商品やサービスの「リアル」が伝わるコンテンツを用意することです。…と言っても、ブランドとして、企業の公式アカウントで毎回そのようなコンテンツを用意することは難しい面もあるのではないでしょうか。そんなときには「ストーリーズ」をうまく活用すること、そしてユーザー自身からの発信を促すことをお奨めします。それにより、現在のユーザーのニーズにマッチしたコンテンツが用意可能です。
・企業公式アカウントにて「ストーリーズ機能」を積極活用
ユーザーによるストーリーズ投稿だけでなく、ビジネスによるストーリーズ投稿もユーザーによく閲覧されていることが分かっています。最も見られたストーリーズ投稿の中でビジネスが占める割合は3分の1にも及ぶそうです。自社商品を紹介してくれているユーザー投稿をストーリーズで簡単に引用できる、ショッピングページへダイレクトに飛ぶ設定ができるなど、ビジネスに活用しやすい機能も続々と盛り込まれています。企業にとって新しいスタイルのクリエイティブであり作成が難しい面もあるかと思いますが、チャレンジする価値は十分にあります。
参照元:Instagram Day Tokyo 2019の公式スライド
・生活者の投稿を促す
ユーザーにブランドに関連するハッシュタグを付けて投稿してもらえるように促すことで、インスタグラム内に「リアル」な投稿がたくさんある状態を作るべきです。企業アカウントで特定のハッシュタグをつけた投稿を促す、ハッシュタグが付いた投稿を企業アカウントでも紹介する、ハッシュタグ投稿キャンペーンを実施するなど、ユーザーからの投稿が発生するように工夫しましょう。
(左)モニターによる投稿。日常生活で商品がどのように使われているかがリアルに伝わってくる。
(右)特定のハッシュタグが付いた投稿を企業のストーリーズで紹介している。
「何か気になる情報があればググるよりもタグる」行動が、特に若年層において定着してきました。これは、ユーザーが興味関心のある物事を、グーグルで検索するよりも、まずはインスタグラムのハッシュタグを用いて検索する現象のことを指しています。Facebook社の発表によれば、インスタグラムで商品やサービスを見つけるユーザーは全体の83%にも及んでいます。
参照元:Instagram Day Tokyo 2019の公式スライド
このようにインスタグラムで商品情報を検索する行動が一般化してきている今、次にインスタグラムが力を入れているのは購買行動とのシームレスな連携です。
2019年秋のBtoB向けカンファレンス「Instagram Day Tokyo 2019」にて、Facebook社は、「今後インスタグラムにて ユーザーに新たなショッピング体験を提供する。商品を販売、ローンチし、顧客とエンゲージメントを深めるところまで一気通貫で実現できるものになる。」と発表しました。
2019年3月にアメリカの一部ブランドから先行して開始された「Instagram Checkout(決済まで含めて全ての購買行動を完結させる機能)」でもユーザーの反応はとても良いとのことで、今後日本でも導入が予測されます。
参照元:Instagram公式ブログ「Instagramのショッピング機能が決済にも対応」
<Instagram Checkoutの画面遷移イメージ>
・Instagramの投稿内 商品タグをタップする(左)
・商品詳細ページが開き、その中に「Checkout on Instagram」ボタンが表示される。色やサイズを選んだうえで、同ボタンをタップする(中央)
・決済画面にて、名前、e-mail、請求先情報、配送先情報を入力して、「Place Order(注文)」する(右)
また、その他にも商品ローンチを補強する機能として「商品ローンチのリマインダー通知」をする機能の追加が発表されています。企業はこの機能を通じて、公式アカウントをフォローしてくれているユーザーに特別なメリットを提供でき、それによりユーザーとのエンゲージメントをさらに深められると期待されます。
参照元:Instagram Day Tokyo 2019の公式スライド
<ローンチリマインダー機能の画面遷移イメージ>
1.Instagram公式アカウントのストーリーズ投稿に、商品を発売する日を記したステッカーを表示できる
2.ユーザーがそれをタップすることで新商品の詳細や発売日を確認可能。さらにそれが欲しいと思えば「Set Reminder(リマインダーを設定する)」ができる
3.リマインダーが発売時間前(画面上では15分と表示)にプッシュ通知でリマインドすることで、ユーザーが発売と同時にいち早く商品を購入することが可能になる。
「ユーザーがインスタグラム内で商品情報を検索する」行動がすでに一般化しつつある今、ショッピング機能が日本に解放されれば「検索してそのままインスタグラム内で購入する」行動もやがて定着していくと考えられます。
まずはインスタグラムが今後正式ローンチすると考えられる「ショッピング機能」の情報をキャッチアップしておくこと、そして今からでも「ShopNow」機能を導入し、インスタグラム内でハッシュタグ検索された際の(ショッピング画面への)スムーズな導線を用意しておくことが大切です。
また、ストーリーズ機能を活用したリアルタイム性のある情報発信スタイルに慣れておくべきです。ブランドのファンに「新商品情報を得たければ、インスタグラム公式アカウントのストーリーズを見る」行動が定着しているような状態が理想的です。
2019年は、インスタグラムから「いいね!」数を非表示にするテストが開始されたことが一つの大きな変化でした。Facebook社は、いいね!数を非表示にする理由として「ユーザーがコンテンツを作るときに、いいね!数を気にするのではなく、心からそれを楽しんでほしいから」と説明しました。
今後、インスタグラムをマーケティングに活用する企業にとって最も大切なことは、目の前のいいね!数を稼ぐのではなく、よりユーザーと企業の間で、あるいはユーザー間でのコミュニケーションが生まれる「インタラクティブなコンテンツ」の提供に集中することです。それが結果としてアルゴリズムでの評価となり、多くの新規ユーザーへのリーチにつながっていきます。
インスタグラムのアルゴリズムは、エンゲージメントが高いほどフィードやストーリーズでも上位表示されるように組まれていると言われています。エンゲージメントの高さの評価は500以上のシグナルから構成されており、「コンテンツへの関心度の高さ」×「アカウントとの繋がり度の高さ」が重要視されています。具体的には、安定的に投稿が実施されているか、コメントやDMのやりとりがあるか、どれだけそのコンテンツを視聴しているかなどが評価されています。
また、インスタグラムは今後、興味関心に合わせてフォローしていないアカウントのコンテンツが表示される「発見タブ」に力を入れていくと発表しています。発見タブはインスタグラムユーザーが月に1回は訪れているとされ、Facebook社独自のリコメンデーションエンジンにより各ユーザーにあわせて異なるコンテンツが表示されています。
この発見タブのアルゴリズムについて、Facebook社は自身のブログで「一つ一つの投稿レベルではなく、そのアカウント全体レベルの興味関心がいかに類似していると判断できるかを重視している。その上で、より多くの人に関心があると思われる情報、新鮮な情報から優先順位づけしている」と説明しました。
参照元:Facebook社 Artificial Inteligence Blog「Powered by AI: Instagram’s Explore recommender system」
今後企業が追求するべき指標は投稿のいいね!数ではなく、ユーザーとのエンゲージメント数です。一方通行のコミュニケーションではなくインタラクティブなやりとりをすること、よりリアルで身近な生活者目線でのフィード投稿、イラストや動画などを活用したエンゲージメントが生まれやすいコンテンツ提供、質問やアンケートスタンプなどを活用したストーリーズ投稿など、今後はよりコミュニケーションが生まれるコンテンツ作りを意識してインスタグラムに向き合っていく必要があります。それによりアルゴリズム上での評価が高まり、結果として発見タブやハッシュタグなどを通じてより多くの新規ユーザーにもリーチすることが可能になると考えられます。
また、アカウントを「一つの統一されたテーマ」のもとに運用していくことで、インスタグラムのアルゴリズム上「興味関心が類似しているユーザー」と繋がりやすくなると考えられます。いいね!数を稼ぐために統一感のない投稿になってしまっていないかなど、今一度アカウントの全体方針を見直してみることも大切です。
これに伴いインスタグラマーの評価も今後変わっていくと考えられます。企業がインスタグラマーを起用する際は、そのインスタグラマーとファンとの関係性をよく見極め、ファンとの関係性がしっかり築かれているアカウントなのかを確認すること、そのインスタグラマーのアカウント全体のコンテンツが自社のリーチしたいユーザーの興味関心とマッチしているかをしっかりと確認することが大切です。
参照元:Instagram Day Tokyo 2019の公式スライド
Facebook社は、今後ストーリーズの質問スタンプやアンケートスタンプなどのインタラクティブな機能に注力していくと発表した。
ブランディング広告からダイレクト広告まで、2019年にインスタグラム広告のメニューの幅が大きく拡がりました。インスタグラムショッピング機能の投稿がフィード広告で配信可能に、発見タブにも広告出稿が可能に、ストーリーズ広告でアンケート機能が利用可能に、インフルエンサーが投稿したコラボコンテンツを広告主が直接広告としてプロモーションできる「ブランドコンテンツ広告」が開始…など、従来のフィード広告だけでないさまざまなタイプの広告が使えるようになりました。
また、Instagram Day Tokyo 2019にて、Facebook社は「オーガニックではリーチできるオーディエンスに限界がある。広告活用により本来のターゲットへのリーチが可能」と呼びかけました。
参照元:Instagram Day Tokyo 2019の公式スライド
参入企業が増えていることも加味すると、今後はオーガニック運用だけではリーチを拡げにくくなり、さまざまな広告を賢く利用していくことが効率的なインスタグラム活用のポイントになると考えられます。
さまざまな種類の広告のどれを何の目的で活用し、それに適したクリエイティブとしてどんなものを用意するべきなのか。難易度が上がると同時に、きちんとノウハウをもって適切に広告を利用した企業には大きなメリットも出てくると言えそうです。
新しい広告にもチャレンジし一つ一つノウハウを蓄積していくこと、また必要に応じて専門のパートナーを探して精度を高めていくことも重要になるのではないでしょうか。
以上、今回は2020年に押さえておくべき4つのインスタグラムマーケティングトレンドとその対策について解説しました。
※アライドアーキテクツでは公式アカウント運用、インスタグラム広告運用、ハッシュタグキャンペーン等を通じた生活者目線のインスタグラムコンテンツ作り、(自社サイトや広告クリエイティブへの)インスタグラムコンテンツの二次活用まで、企業のインスタグラム活用を幅広く支援しています。ご不明な点はお気軽にこちらまでお問い合わせください。