三井住友カード株式会社は、クレジットカード会員・V会員向けに旅行予約サービス「Vトリップ」をはじめ、「Vふるさと納税」、「Olive Healthcare」など複数のサービスを展開しています。
旅行予約サービス「Vトリップ」において、競合がひしめく旅行市場の中で「どう勝つか」が言語化されず、最も競争が厳しい価格訴求に終始してしまっていた同社が、Kaname.ax®のCEPsリスニング®を通じて「楽しさ・思い出づくり」という顧客の本音を発見した経緯は、前回のインタビューでお伝えしました。
あれから約半年。分析で見えた訴求軸はクリエイティブチーム「3℃1(サンドイッチ)」によって実際の広告へと落とし込まれ、認知・獲得の両面で成果が出始めています。さらに「CEPsが信じられる軸になる=お守り」という確信のもと、Vトリップを起点に次から次へと新たに事業展開される新規事業である、「Vふるさと納税」、「Olive Healthcare」へと取り組みの射程は広がっています。
今回は、その実行フェーズで何が起きたのか——データとクリエイティブ設計の考え方、実際に出た成果、そして見えてきた次の課題について、改めて三井住友カード株式会社マーケティングユニットビジネス企画チャプター プロダクトオーナーの福田氏にお話を伺いました。
ー前回のCEPs分析から、実際のクリエイティブ制作・配信へと進む中で、どんな課題がありましたか?
福田氏:
CEPsリスニング®の結果が出て、「どこで戦うか」の方向性は定まりました。ただ、分析結果をクリエイティブに落とし込む段階になって、改めて感じたことがあります。最近はCEPs分析を提供できる会社が増えてきていますが、出てきたCEPsから具体的な戦術実行に移せないパートナーが多いんです。
データの読み方は分かる。でも、そこからどんなクリエイティブをつくるかとなると、結局「このCEPsに対してクリエイティブを作りました」で終わってしまう。本来は自社の強みがあり、出てきたCEPsに対してアプローチができるのであればコミュニケーションとして成立するはずですが、その整理をせずに作ったところで、本当に成果が出るとは思えない、という感覚がずっとありました。
アライドアーキテクツに依頼したのは、Kaname.ax®による分析から3℃1によるクリエイティブ制作・広告配信まで、一気通貫で対応できる点が決め手でした。分析結果を「料理できる」チームが同じ目線で動いてくれる。自分たちに必要なのは、そういうパートナーだと思っていました。
三井住友カード株式会社マーケティングユニットビジネス企画チャプター
プロダクトオーナーの福田氏
「Vトリップ」「Olive Healthcare」「Vふるさと納税」等の新規事業のマーケティングを担当
ーCEPs分析の結果をクリエイティブに落とし込む過程で、どのような発見がありましたか?
福田氏:
まず分析結果を見て驚いたのは、カテゴリー便益とブランド便益のギャップが思った以上に明確に出たことです。ユーザーが旅行カテゴリーに入るきっかけと、Vトリップとして訴求すべきブランド固有の価値が整理されて、「ここで戦えばいい」という確信が持てました。感覚では「たぶんそうだろう」だったものが、データとして可視化されることで腹落ちが全然違う。
特に「キャンセル安心オプション」の重要性がデータから浮かび上がったのは大きな発見でした。この勝ち筋をデータとして持てたことで、クリエイティブの方向性を迷わず決められました。
ただ、データが出た後が重要でした。アライドアーキテクツが他と違うのは、分析結果をCoEPs(コミュニケーションエントリーポイント)——「どう見せれば思わず見てしまうか」——まで落とし込んでくれる点です。
最初に提案されたクリエイティブには正直「これでいいんですか?」と違和感を覚えました。でも押し切られて進めてみたら、驚くほど結果が出た。データの裏付けを持って「これでいいんです」と言い切れるパートナーがチームにいることが、自分たちにとっては大きな価値だと感じています。
カテゴリー便益「そのカテゴリーを買う目的」と
ブランド便益「そのブランドを買う理由」を示した図
ーデータ×クリエイティブを活かした施策を実施して、どのような成果が出ましたか?
福田氏:
まず獲得広告では、テストマーケティングとして3パターンの動画を制作し、実際に広告として配信しながら検証しました。その中で「キャンセル安心保障」を訴求したクリエイティブで圧倒的に成果が出ました。この勝ち筋を見つけられたことで、従来のクリエイティブと比べてCPAが約1/4にまで改善しています。
認知広告では、「一旅入魂」というコンセプトのショート動画を展開しました。視聴完了率は約30~40%台を記録し、クリック単価も低単価で安定的に推移しています。さらに広告を見たユーザーのVトリップの積極利用意向が139%向上するなど、認知から検討への橋渡しとしても機能しました。
一方で、施策を進める中で新たな課題も見えてきました。広告でしっかり興味を持ってもらっても、その後のサイト・プロダクトとの「接合面」にミスマッチがあると、そこで離脱が起きてしまう。CEPs分析はプロモーションの改善だけでなく、プロダクト自体の課題を発見するツールでもあると実感しています。マーケとプロダクトが一緒に分析結果を見て、改善を進めていくことが重要だと感じています。
ー他サービスへ展開しようとした背景と、そこで見えた新しい発見を教えてください。
福田氏:
Vトリップでの成果が確信になり、「どのサービスにもKaname分析を入れるべきだ」という判断に至りました。複数サービスを担当する中で、社内への説明にも代理店とのコミュニケーションにも使える「信じられる軸=お守り」が必要だと感じていたので、Vトリップで手応えを感じたことで、その軸を他のサービスにも広げていこうという流れは自然でした。
ふるさと納税ポータル「Vふるさと納税」では、CEPsに加えてCExPs(カテゴリーイグジットポイント)——なぜそのカテゴリーから離脱するか——も分析しました。昨年10月のポイント制度変更後、市場環境が大きく変わる中で、「やめた理由」を逆手に取った訴求へと転換しています。また分析結果はクリエイティブだけでなく、返礼品の開発やオウンドメディアの戦略にも活用しており、プロモーションの枠を超えた使い方が広がっています。
オンライン診療・無料相談ができるサービス「Olive Healthcare」では、「オンライン診療を受けたことがない人の参入障壁」に着目しました。日本人の9割以上がオンライン診療未経験という市場の中で、CEPs×CExPs分析を通じて「なぜやらないのか」を言語化し、その障壁を崩すコミュニケーション設計に活用しています。マーケとプロダクトが一体で動いているこの領域では、分析結果がプロダクト改善にも直接つながっており、うまく機能している手応えがあります。
サービスによって分析の切り口は変わります。対象カテゴリーをそのまま分析するのではなく、もう少し広い概念で捉え直すことで、より本質的なインサイトが得られる。その設計をアライドアーキテクツと一緒に考えられることが、複数サービスを横断して取り組む上で大きな強みになっています。
オンライン診療「Olive Healthcare」で実施した
Kaname.ax®による「CExPs(カテゴリーイグジットポイント)分析」レポート
ー今後のマーケティング展開と、アライドアーキテクツへの期待を教えてください。
福田氏:
CEPs分析の結果を広告クリエイティブだけに使うのは、正直もったいないと思っています。社内プレゼンの根拠にも、パートナー企業へのブリーフにも、プロダクト開発の議論にも使える。「なぜこの施策をやるのか」を説明するときに、データとして示せることで社内の意思決定が格段にスムーズになりました。
今後期待しているのは、広告の枠を超えたところへのCEPs分析の活用です。当初はマーケティング施策軸でのソリューションと捉えていましたが、プロダクトの再構築・再開発だけでなくブランドコンセプトの再定義等、CEPsをベースにした事業戦略の見直しにも利用すべきと考えています。そして、アライドアーキテクツ社は、事業成長の支援まで一緒に考えていただけるパートナーとしてあってほしいなと思います。CEPs分析で見えたインサイトを、事業全体に波及させていくことが次のテーマです。
そのための第一歩として、部全体でのCEPs勉強会も計画しています。「なぜこれが信じられるのか」をチーム全員が理解した上で動けるようになれば、施策の質も再現性も上がっていく。アライドアーキテクツにも、こういった場にぜひ一緒に入ってもらえたら嬉しいです。
今回の取り組みを通じて感じるのは、データとして腹落ちできる軸を持つことで、施策の判断も社内への説明も格段にやりやすくなるということです。それはVトリップでの経験が証明してくれました。まずは「信じられる軸=お守りをつくること」から始める——そのプロセスをアライドアーキテクツと一緒に進められたことが、今の取り組みの土台になっています。
今後の「施策の枠を超えたデータ活用」への期待を語る福田氏