顧客の声が「商品の世界観」と「新規獲得数1.3倍向上」両立の鍵に。トウ・キユーピーが実践したCEPs活用

株式会社トウ・キユーピーは、「ていねいに、美しく、生きる。」をブランドステートメントに、キユーピー株式会社独自の素材・技術を活かしたサプリメントやスキンケア商品をキユーピーグループの公式通販ショップ「キユーピーウエルネス」で販売しています。
同社が販売するサプリメント「ディアレプラス」は、キユーピーが50年以上研究を重ねてきた酢酸菌を機能性関与成分とし、花粉・ホコリ・ハウスダストなどによる鼻の不快感の軽減と免疫機能の維持に役立つことが報告されている機能性表示食品です。
商品の世界観を守りながら新規顧客の獲得効率も落とさない——そのふたつの命題に向き合った同社が取り組んだのが、「Kaname.ax®」を活用した顧客インサイトの発掘です。「Kaname.ax®」は自社顧客へのアンケート調査や、SNSなど生活者のリアルな声をAIで解析し、購買・継続のきっかけとなるCEPs(カテゴリーエントリーポイント)を可視化するデータプラットフォーム。その分析結果をもとに、ペルソナ設計から広告配信までを一気通貫で支援する形で取り組みが進みました。
今回は、通信販売部通信販売課でディアレプラスのWebマーケティングを担当する櫃本氏に、課題の背景からCEPs(カテゴリーエントリーポイント)の分析・活用方法、施策の変遷と成果に至るまでをお伺いしました。
サマリー
背景
- 商品の世界観のトンマナ整備と獲得効率維持という、両立が難しいとされていたふたつの命題を同時に抱えていた
- 花粉シーズン外でも継続するロイヤル顧客の「購入・継続理由」が掴めておらず、訴求軸の根拠を持てていなかった
- 担当者自らロイヤル顧客へのN1電話インタビューを実施し、「慢性的な鼻の不快感を体質から改善したい層」という仮説を捉えていた
内容
- 「花粉症、鼻炎、ハウスダスト」×「ケア」関連ワードの言及を含むX上のVOCを分析しCEPsを抽出
- 自社顧客へのアンケート調査も同時に実施し、市場トレンドと自社顧客のギャップを分析。さらに、自社顧客を愛用歴と継続意向を軸に4象限に分け、よりLTVの長い顧客の利用背景や満足ポイントを抽出
- 即効性・お試し価格訴求から、通年鼻の不快感があるユーザーに響く訴求軸へと転換。通年訴求・花粉訴求を切り分けて設計。インサイトをもとに、ペルソナ設計〜LP・バナー制作〜広告配信まで一気通貫で施策に反映
成果
- 広告費1.18倍の投資で新規獲得数1.3倍、CPO効率8%改善を達成
- 施策が本格化した該当月ではCPO30%改善、獲得顧客の3ヶ月継続率5%良化
- 分析データが社内説得の根拠となり、通年施策への継続投資という組織判断を後押し。また、菌活や腸活といった事前対策に関心を持つ30〜40代という新たなターゲット層を発見
商品の世界観を守りながら、獲得効率も伸ばす。そこから始まった挑戦
ーまず、ご担当されている業務内容と、ミッションついて教えてください。
櫃本氏:
通信販売部 通信販売課で、ディアレプラスをはじめとするサプリメントのWebマーケティングを担当しています。代理店との運用管理や数字の管理、クリエイティブ制作、既存顧客の継続率を高めるためのCRM施策まで幅広く見ています。KPIとして追っているのは新規獲得件数と定期CPO、つまり定期コースの顧客をどれだけ効率よく獲得できたかという指標です。件数だけでなく、続けていただきやすい質の高いお客様をいかに効率よく獲得するか、というところがチームとしてのミッションです。
ーディアレプラスのマーケティングにおいて、どのような課題を感じていましたか?
櫃本氏:
以前は、KPI達成を優先するあまり、派手な色使いや強い訴求表現を多用したクリエイティブが中心になっていました。7日分のお試しを低価格で訴求し、花粉が飛散する時期に集中的に広告を出すという戦略です。
数字はある程度出ていたんですが、マヨネーズをはじめとるするキユーピーの親しみやすいイメージと結びつかないという声が社内外からあがっていました。また価格から入り、即効性を期待されたお客様もいて、機能性表示食品の特性である、継続的な摂取が重要であるという実情とのギャップから早めに離脱しやすく、継続率の低下にも繋がっていました。
そこで会社から「商品の世界観を整えてほしい」という方針が出たんですが、単純にクリエイティブを整えるだけでは今度は獲得効率が落ちてしまう。商品の魅力を伝えることと獲得の両立が、最初の大きな壁でした。

通信販売部通信販売課 櫃本氏
“なぜ続けるのか”を掴むために。顧客の声と向き合うアプローチへ
ーその課題を解決するために、顧客理解のアプローチに舵を切った経緯を教えてください。
櫃本氏:
そもそもの訴求を変えるにしても、まず「どんなお客様が、何に価値を感じて買い続けてくれているのか」を正しく理解しなければ、何を変えても仮説の域を出ないと感じていました。
ディアレプラスは特に鼻の不快感で悩む方が多い花粉症シーズンを中心に訴求してきた商品ですが、シーズン外でも継続してくださっているお客様が一定数いる。その方たちがなぜ続けてくれているのかが掴みきれていなかったんです。そのインサイトを捉えられれば、商品の世界観を守りながら刺さる訴求が作れるはずだという確信がありました。
そこでまず自分で動いてみようと、花粉シーズン以外でも定期を継続している方を中心にロイヤル顧客数名に直接電話でN1インタビューを実施しました。
見えてきたのは、花粉による鼻の不快感だけでなく通年で鼻の不快感に長年悩んでいる方が多いということ。即効性はそもそも期待しておらず、時間をかけてでも体質を改善したいと考えているから継続してくれているということが分かってきました。
ただ、この仮説をより確かなものにして、施策まで繋げるにはさらに踏み込んだアプローチが必要で、それが「Kaname.ax®」の活用に繋がりました。アライドアーキテクツさんにお声がけしたのは、CEPs(カテゴリーエントリーポイント)の発掘だけでなく、ペルソナ設計からクリエイティブ制作・広告配信まで一気通貫で対応いただける点が決め手でした。

機能性表示食品「ディアレプラス」。
マヨネーズの主原料である食酢の研究から生まれた酢酸菌GK-1が配合されている。
「確信」と「新たな発見」。CEPs分析結果がもたらしたふたつのメッセージ
ー今回、Kaname.ax®のCEPs分析にて、X上のVOCの分析と自社顧客へのアンケート調査のお取組みをさせていただきました。その結果をご覧になって、どのような発見がありましたか?
櫃本氏:
まず、N1インタビューで仮説として立てていた「慢性的な鼻の不快感を抱える通年ユーザーが一定数いる」が、データとしてしっかり裏付けられました。自分の感覚として捉えていたことが、言語化・整理された形で出てきて、確信に変わった瞬間でした。感覚値のままでは「たぶんそうだろう」で終わってしまうんですが、データとして可視化されることで「やっぱりそうだった」と腹落ちできる。この違いは大きかったです。
また、Kanameの分析結果で意外だったのは、30〜40代の若年層の存在です。これまでWebでのメインターゲットは50〜60代を想定していましたが、分析結果から、菌活や腸活といった健康意識が高く、花粉症シーズンが来る前からスマートに予防したいと考える30〜40代の層が、まだアプローチできていない市場として存在することが見えてきました。自分たちでは気づけていなかった可能性が、データによって照らされた感覚でした。
"本当の悩み"を訴求に変えて両立した、「らしさ」と「ミッション」
ー分析結果を踏まえて、具体的にどのような施策を実行されましたか。また、その成果についても教えてください。
櫃本氏:
初めに取り組んだのは、通年鼻の不快感に悩んでいる人向けの訴求と花粉による鼻の不快感に悩んでいる人向けの訴求を切り分けて設計し直すことでした。それまで通年鼻炎訴求用のLPもバナーも存在していなかったので、ゼロから制作する必要がありました。バナーは「Kaname.ax®」で収集した通年鼻の不快感を抱えたお客様の声を直接反映させた内容にして、MetaやTikTokなどの媒体で展開しました。
クリエイティブのトーンも大きく変わりました。以前は商品の世界観よりも、広告色やインパクトが強く、ストレートに効果を期待させる、いわゆる通販的な強さを持った表現のクリエイティブでした。今回のCEPs分析を通じて、即効性を期待して花粉シーズンだけ試すお客様ではなく、長年鼻の不快感と向き合い続け、継続的なケアを求めているお客様の存在が明確になった。だからこそ、そうした方々の日常や悩みに寄り添う訴求軸へと転換し、キユーピーらしい柔らかさがある情緒的な表現へとクリエイティブが変わっていきました。社内でも「クリエイティブが変わったね」という声が上がるようになったのは、ひとつの手応えでした。

今回の調査を通じて収集したリアルな声をそのままコピーに落とし込んだバナークリエイティブ。
インサイトを直接表現に反映させることで、同じ悩みを持つ顧客への共感を生み出している。
成果としては、12月から3月の期間で広告費昨対1.18倍の投資に対して新規獲得数は1.3倍、CPO効率は8%改善しました。特に施策が本格化した1月は単月でCPOが昨対30%改善、さらに1月に獲得したお客様の3ヶ月継続率も5%良化しており、獲得の量だけでなく質にも変化が出ています。
この結果を社内に報告する場面でも、分析データが大きく役立ちました。「なぜ1月にこれだけ伸びたのか」という問いに対して、訴求軸を変えた根拠としてデータを示せたことで、通年での施策継続に向けた予算の議論もスムーズに進みました。感覚ではなく根拠を持って社内を動かせた、という点でも今回の取り組みの価値を感じています。

CEPs分析で明らかになった通年ニーズを訴求軸に取り入れたクリエイティブ。
花粉症シーズンの事前からケアしたいという顧客層への新たなアプローチとして制作された。
ディアレプラスで得た確信が、次の市場と次の商品を動かしていく
ー今回の取り組みを経て、今後のマーケティング展開についてどのようにお考えですか。
櫃本氏:
通年鼻の不快感に悩む方に向けた訴求については、花粉シーズンが明けた後も継続してテストを重ねていく方針です。これまでディアレプラスは12月から3月に広告費を集中投下する形をとっていたのですが、経営的に見ると季節への偏りが大きい。通年で一定の獲得ができる状態を作れれば、この商品の社内での評価にも繋がってくると思っています。
30〜40代の若年層へのアプローチは、花粉ピークの2〜3月ではなく、その前の10月から1月頃を狙い目として考えています。ただ、現在のLPは50~60代のユーザーを想定したつくりになっているので、若年層に向けてはLPのデザインから改修していく必要があります。今まさに動き始めているところです。
さらに、今回ディアレプラスでうまくいった「まずWebのお客様が何で買ってくれているのかを理解してから施策を組む」というアプローチを、同社スキンケア商品の「ヒアロワン」にも展開し始めています。新聞広告での購買層を想定した訴求をWebにも踏襲していたんですが、実際にN1インタビューをしてみると全然違うということが見えてきた。だからこそ、Webのお客様に向けてLPの戦略から組み直す必要があると感じています。ディアレプラスでの経験が、次の商品改善の起点になっています。
アライドアーキテクツさんには、継続的なインサイトの発掘・調査と、それに基づくクリエイティブの幅出しを期待しています。毎年同じことをやり続けるとクリエイティブは枯れていく。常に新しい訴求の幅を出し続けられる体制があると、一緒に取り組みやすいと感じています。
そして今回実感したのが、重要なのは顧客の声を集めて終わりにしないということです。またCEPsの分析のみならず、その結果を、ちゃんとクリエイティブや配信まで落とし込む。そこまでを一貫してやれる体制があって初めて意味を持つのだと、今回の取り組みを通じて、改めて確認できました。

「顧客の声を集めて終わりにしない。それを施策に落とし込むところまでやれて、
初めて意味を持つと実感しました」と語る櫃本氏
記事公開日:2026.05.19

顧客の声を「要」に、マーケティングAXを起動する
Kaname.ax®は、顧客の声(UGC・VOC*)をAIで解析。マーケティングコミュニケーション設計~実行支援までを一気通貫で支援するプラットフォームです。
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