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「地道な活動が5年後に花開く」ビックカメラが語るインバウンド戦略

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家電小売業大手のビックカメラでは、中期経営計画の成長戦略の一つとしてインバウンド事業を位置づけ、オフライン中心だった集客施策からオンライン施策へのシフトを進めてきました。SNS運用の強化をはじめ、国別・言語別での情報発信体制の構築など、デジタル施策を本格的に推進しています。

その結果、中華圏以外の国でも認知が徐々に広がり、売上にも貢献するなどオンライン施策の成果が表れています。なかでも台湾市場では、YouTuberとのコラボレーション施策を実施。クーポンを活用した成果報酬型の仕組みにより、動画公開から2年以上が経過した現在でも継続的に売上が発生しています。

本記事では、ビックカメラのインバウンド戦略の背景や具体的な施策、そして長期的な実践を通じて見えてきたインバウンドマーケティングのポイントについて、グループインバウンド室のお二人にお話を伺いました。

サマリー

背景



  • 訪日需要の回復を受け、ビックカメラでは中期経営計画の柱の一つとしてインバウンド事業を強化
  • 売上は中国・台湾・香港など中華圏のシェアが高く、国別バランスの最適化が課題となっていた
  • 東南アジアや欧米では「カメラ店」という認知が強く、幅広い商品を扱う店舗としての認知拡大が必要だった

 

内容


  • SNS専任チームを設置するなど、オフライン中心からオンライン施策へのシフトを推進
  • RED(小紅書)などSNS運用を拡大し、国別・言語別の情報発信体制を構築
  • 発信を強化する中で、台湾市場向けにYouTuberとのコラボレーション施策を実施
  • クーポンを活用した成果報酬型の仕組みにより、売上貢献を可視化

 

成果



  • 中華圏以外の国でも認知度が徐々に向上し、売上にも貢献
  • YouTube動画は継続的に視聴され、クーポン利用による売上が安定して発生
  • インバウンド売上は前年比で目標を達成し、中長期の取り組みが成果につながっている

成長戦略の柱、インバウンド事業

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グループインバウンド室 細山様(右) 陳様(左)

ー細山様と陳様の、ミッションとKPIを教えてください。

細山氏:
私たちが所属するグループインバウンド室は、ビックカメラグループの中で物販を行っているビックカメラ、コジマ、ソフマップの3社のインバウンド集客を担当しています。

具体的な取り組みとしては、オフラインとオンラインの両軸で展開しています。オフラインでは、海外で開催される旅行博などのイベントへの出展や、現地での営業活動を行っています。オンラインでは昨年から専任チームを発足させ、国別に各言語でSNSアカウントの運用などを行っています。

一昨年(2024年)には当社グループの中期経営計画が発表され、今後の成長戦略として大きく3つの柱が掲げられました。その1つがインバウンドです。
当社の店舗は駅近にあり、訪日観光客が利用しやすい環境にあります。政府も訪日観光客の増加を目指しているという追い風があり、インバウンド事業はさらに伸ばしていくべき領域として高い目標が設定されています。

インバウンド事業には売上目標があり、私たちのチームでは「いかに訪日客にビックカメラを利用していただけるか」という観点から、国別の来店客数をKPIとして追っています。また免税利用データから、どの国の方がどの店舗で何を購入したかを把握できるため、訪日客全体に対する利用率を指標としながら施策を進めています。

中華圏依存からの脱却。国別バランス改善と認知拡大の課題

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ー 市場の動きとして中国訪日客の減少などがありますが、市場変化にどのように対応されてきましたか?

細山氏:
コロナ以前から、当社のインバウンド売上は中国・香港・台湾など中華圏のシェアが非常に大きく、東南アジアや欧米のお客様をどう取り込むかは大きな課題でした。そのため、これらの地域への営業活動を以前から進めていました。

直近*は日中間の情勢もあり、中国からのお客様は減少しました。しかし、それまでの取り組みの成果もあり、台湾や東南アジア、欧米豪のお客様にもご利用いただけるようになっています。結果として国別バランスは改善しており、売上も前年比で目標をクリアしています。

ただし、新しい市場を開拓するうえでは別の課題もあります。それが「カメラ店」というイメージです。中華圏のお客様には、当社が家電だけでなく日用品など幅広い商品を扱っていることが認知されていますが、東南アジアや欧米では「カメラ店」という認識が強いのです。そのためSNSでの情報発信を強化し、各フロアで扱っている商品などを紹介しながら、「日本のビックカメラはこういうお店だ」ということを伝えています。

先日、フィリピンの旅行系イベントに参加した際、赤いベストを着て会場を歩いていると、後ろで「ビーック、ビック、ビック、ビックカメラ♪」と歌う方がいて、認知されていることに驚きました。少しずつ認知が広がっている実感はありますが、まだ初来店のお客様が多いため、地道な発信活動を続けています。

*2026年2月取材

RED運用を起点にSNS強化。専任チーム設置でオンラインシフト

ー インバウンド向けのSNSをどのように強化されてきましたか?

陳氏:
コロナ以前までは、中華圏向けにはWeChatを中心に活用していました。しかしコロナ後はSNSの状況も変化し、台湾など近隣国の訪日回復も早かったため、中国籍メンバーから「今はWeChatではなくRED(小紅書)」という声が上がり、REDのアカウントを開設しました。

ただ、当時の私たちにはREDの運用ノウハウがまったくありませんでした。そのタイミングでアライドアーキテクツさんに声をかけていただき、REDの特徴や運用方法について具体的なアドバイスをいただきました。結果として、支援をお任せすることにしました。

クーポン連動の成果報酬型YouTube施策。売上貢献を可視化

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ー台湾市場向けのYouTube施策について教えてください。

陳氏:
当時、アライドアーキテクツさんからの提案で実施したのが、台湾で人気のKOL、U1(ゆい)さんとのコラボレーションでした。U1さんを選んだ理由は、私自身がフォロワーだったことに加え、実際にビックカメラで商品を購入されている方だったからです。影響力もあり、この方なら適任ではないかと考えました。

また当社が大切にしているのは「お客様喜ばせ業」という企業理念です。YouTube動画を通じて、店舗の雰囲気や買い物体験を台湾や中国のお客様に伝えたいという思いもありました。

クリエイターとの取り組みは成果報酬型で実施しました。個別クーポンを発行し、その利用実績に応じて報酬をお支払いしています。クーポン利用数を把握できることで、売上への影響を定量的に確認でき、社内にも効果を明確に示すことができます。

当初は社内でも不安の声がありましたが、「まずは試して、結果が出なければ変えればいい」という助言もあり、チャレンジすることにしました。

一方で成果報酬型にはデメリットもあります。クリエイターによっては報酬が少ないと感じる場合もあり、固定費型と比べるとコンテンツへの要望を出しにくい側面もあります。そこで私たちは撮影に参加し、できる限りサポートするようにしています。

一本の動画が長期的な売上に。台湾市場の可能性

ーYouTube施策の成果と、想定外の結果や発見があれば教えてください。

陳氏:
YouTubeは長尺動画なので、最後まで見ていただけるか不安もありました。しかし実際には最後まで視聴してくださる方が多く、コメント欄でも「商品紹介が細かく、買い物前に安心感がある」といった声を多くいただきました。これは想定外の反応でした。

コンテンツでは、U1さん本人が実際に使っている商品を中心に紹介しました。KOLは芸能人とは異なり、日常生活を見せるクリエイターです。そのため広告感が少なく、視聴者に響きやすいと感じました。

成果としては、毎月安定してクーポン利用が発生しています。売上も大きく落ちることがなく、安定しています。さらに驚いたのは、動画公開から2年以上経った今でも、台湾のYouTubeで「ビックカメラ」と検索するとU1さんの動画が上位に表示されることです。長期的に視聴され続けていることがわかりました。

また、長尺動画だけでなく、ストーリーのような短尺投稿でも、その2日間だけ売上が上がるなど即効性のある反応も見られました。

「5年後に花開く」。インバウンド施策に必要な長期視点

ー今後のインバウンド戦略について、どのような展望をお持ちですか?

陳氏:
今後も中華圏以外の市場への展開を強化していきます。例えば韓国では、現状お客様のお目当てはほぼお酒ですが、徐々にコスメにも注目が集まっています。日本限定コスメを目的に来日される方も増えています。

家電だけでなく、美容や旅行グッズなども含め、ワンストップでショッピングできる魅力を伝えていきたいです。韓国ではNaverがよく見られているため、そこでの情報発信も検討しています。

細山氏:
11月からリファンド方式(免税制度改正)が始まるため、その対応も重要です。台湾のお客様からも「免税はどうなるのか」という質問が増えており、日本での買い物が不便になるのではないかという不安を持たれています。制度変更後は小売各社が異なるリファウンド会社と契約するため、場合によっては購入したお店ごとに個別申請が必要になります。その中で当社は、家電・ドラッグ・化粧品・酒などが 1店舗で揃い、手続きが一括で済むという利便性をしっかり訴求していく必要があります。

中長期では、旅ナカ・旅アトの施策強化は今後戦略的に強化していきたいことです。

ーこれからインバウンド施策に取り組む企業へ何かメッセージはありますか?

細山氏:
「地道な活動を続けること」だと思います。インバウンド施策は、すぐに結果が出るものではありません。費用対効果の議論もありますが、今やらないと5年後に成果につながらない取り組みが多くあると感じています。

当社に中国や台湾のお客様が多く来店されるのも、長年の営業活動が所々で成果につながっています。すぐに芽が出なくても屈せずに続けること。それが一番大切だと思います。

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まとめ

ビックカメラのインバウンド施策から見えてきたのは、長期的な視点で取り組みを継続しながら、施策や情報発信をアップデートしていくことの重要性です。同社では、オフライン中心だった集客に加え、SNS専任チームを設置しオンライン施策を強化。中華圏向けの情報発信も、従来のWeChatから、ユーザー行動の変化に合わせてRED(小紅書)へとシフトしました。

また台湾市場では、YouTubeクリエイターとのコラボレーションを成果報酬型で実施。クーポンを活用することで売上への貢献度を可視化し、動画公開から2年以上経った現在も継続的な売上につながっています。

インバウンド施策には短期的に成果が表れるものもありますが、長期的な取り組みによって成果が積み上がっていくケースが多いです。地道な施策の継続が、数年後の成果につながることを示す事例といえるのではないでしょうか。

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