創業60年を迎えるキューサイ株式会社が、VOC* データを事業戦略の中核に据えた本格的な組織変革に取り組んでいます。その根幹を支えるのが、アライドアーキテクツの「Kaname.ax」チームです。20年間培ってきたVOC分析ノウハウと「Kaname.ax」の独自AI技術を投入し、キューサイの事業特性に最適化した独自のVOCシステムを構築。20名体制で進むこのプロジェクトは、経営戦略レベルでの意思決定基盤として、老舗企業の新たな成長エンジンとしての役割を果たしています。
* Voice of Customer:顧客の声
キューサイ株式会社は、「まず〜い、もう一杯!」のキャッチフレーズで知られる青汁を中心に、「ウェルエイジングカンパニー」としてヘルスケア、スキンケアの領域でもブランドを展開する創業60年の老舗企業です。売上・利益ともに業績好調な近年ですが、裏では組織やマーケティングに潜む課題が顕在化していました。
同社が直面していたのは、インフォマーシャル中心の販売チャネル、特定商品への売上集中、限定的な既存顧客層という3つの依存構造です。これらの依存により、そもそも体系的なマーケティング活動が十分に行われてこなかったことが課題でした。
さらに、マーケティングを正しく実践しようとしても、顧客理解が不足しているため再現性ある施策を打てず、施策の効果をロジカルに検証できない状態が続いていました。また、従来の「じっくりプランニング」による業務スタイルが、市場変化に迅速に対応する足かせとなり、施策量を十分に投入できず、PDCAサイクルも回せない状況。結果として、組織全体の学習や若手育成も妨げられるという弊害も生じていました。
こうした課題を解決するには、感覚に依存せず、データと仕組みで再現性のあるマーケティングを実現することが不可欠と判断。これが、VOCデータを中心とした大規模プロジェクトの背景となっています。
「マーケティング会社への転換」を掲げ、VOC活用による組織変革を推進するキューサイ株式会社 山田氏
まず、データに基づいた仕組み化、という観点で着目されたのがVOCです。変化し続ける市場でいま、どんなことがトレンドになっていて、ターゲットとしている顧客はどんなものに興味関心があるのか、どんな悩みを持っているのか、そうしたことをいち早く捉えるためにVOCを捉え、その捉え方自体を固定化しようと試みました。
さらに、VOCデータとはいえただのソーシャルリスニングではなく、どのようなシーン(場面)・オケージョン(状況)・タイミング・深刻度で発せられているものなのか、そこまで深ぼったデータを取りたい、仕組み化したいと考えました。
「Kaname.ax」は、X等のSNS上の発話データ、ECサイト等のレビューデータ、アンケートなど、多様なデータソースからVOCを統合的に収集・分析、そして特許出願中の独自AI技術(※1)により、CEPs(カテゴリーエントリーポイント)や顧客インサイトを可視化することができるのが基本仕様です。
今回、このKaname開発の技術とノウハウを活かして、キューサイ社内の環境下にVOC分析プラットフォームを構築し、キューサイ社向けに独自の要件仕様を付加しました。
注目すべきは、高度なCEPs分析機能です。顧客が感じる課題の強さ、課題の発生頻度、競合の寡占度合い、自社商品の優位性(PoD)(※2)とのマッチ度合いなどの評価軸でCEPsをスコアリングする仕組みを実装します。
VOCを収集・蓄積・解析し、キューサイ社員がいつでも高解像度な顧客インサイトを得られる状態をシステムにより実現する
さらに、CEPs分析結果をもとにして、先ほどのVOCごとのオケージョンやシーンなどを掛け合わせた複数パターンのSNS広告を配信し、対応LPでの効果測定、購買行動の詳細トラッキングまで行うテストマーケティング体制の構築も「Kaname.ax」により実現します。このテストマーケティングサイクルをクイックに回せる環境を構築しようとしている点も大きな特徴です。
※1 2025年7月25日発表「アライドアーキテクツ、SNS投稿などから消費者インサイトを抽出するAI技術の特許を出願」
https://www.aainc.co.jp/news-release/2025/02616.html
技術概要:SNS投稿やレビュー、顧客アンケートから分析対象に関する情報を抽出し、AIによって複数のCEPs(カテゴリーエントリーポイント)を自動抽出・判定する技術
※2 Point of Difference:競合商品との差別化ポイント。自社製品が持つ独自の強みや特徴を指す。
キューサイが「Kaname.ax」を通じて実現を目指すのは、単なるマーケティング施策の改善にとどまらない、事業構造そのものの変革です。従来の感覚的判断から脱却し、VOCを中心とするデータに基づいた仮説検証サイクルを確立することで、施策の再現性を大幅に向上させ、新商品開発においても市場投入前にVOCデータから顧客反応を予測し、開発精度を高めることを目指しています。
この仕組み化と並行して、本プロジェクトを通じた組織全体でのマーケティング文化変革も重要な目標です。最初はシステムが「どの施策が有効か」をフォローしつつも、徐々に個々の担当者が「ロジカルに感覚を語れる」状態を実現することを目標としています。
そして究極的には、副社長の山田氏が掲げる「マーケティングの会社」への変革を実現することが最大の目標です。データと仕組みによるROI改善を継続的に実現し、新商品開発・ブランド立ち上げ時の成功確率を飛躍的に向上させることで、大幅な事業拡大を実現する成長基盤を確立したいと考えています。
まだ世の中に前例がない、想像以上に難易度の高いプロジェクトに挑戦しています。ですが、アライドアーキテクツさんをはじめ優秀な人材がこのプロジェクトに参加いただいているおかげで、順調に進捗しており非常に心強く感じています。
明らかにプロセスが形を表し始めており、この短期間でシステムを作りながら要件定義を重ね、確実な手応えを感じています。「多重タスクの中で、やってみて初めて見えてくるものがある」という実感があり、取り組みを通して私たち自身も進化していると感じています。
データと仕組み、マーケティングのプロセスがあれば、大幅な事業成長を実現できると確信しています。そのための基盤として『Kaname.ax』によるプラットフォーム構築は、私たちにとって必要な投資でした。データに基づいて顧客に最適な価値を提供し競争力を強化することで、真のマーケティング会社へとシフトしていくことを目標としています。
▶【キューサイ × アライドアーキテクツ対談】 60年企業が直面した事業成長の壁。キューサイがVOCデータ起点で見つけた突破口とは?