商品の魅力を伝えるために、様々なコミュニケーション施策を打っているが、いまいち反応がつかめない——そんな漠然とした手応えのなさを感じている宣伝販促のご担当者様も、数多くいらっしゃるのではないでしょうか。実はその原因、「何が伝わっていないか」を掴めていないことにあるかもしれません。では、生活者にとって魅力を感じるポイントはどこにあるのか。東武鉄道の販促担当者も、まさにそうした課題に向き合っていました。
東武鉄道株式会社が川越エリアで展開する「川越れとろトリップきっぷ」は、東武東上線の川越・川越市駅までの往復乗車券と市内を走る東武バスの1日乗車券のほか、市内有名店でのランチやお土産もセットになった、“小江戸”川越をまるごと一日楽しめるデジタルきっぷです。主にZ世代を中心とした若年層の新規顧客獲得をめざし、これまでInstagramでのアンバサダー施策や加盟店舗とのコラボ企画など、UGC獲得を狙った施策を重ねてきましたが、認知拡大・購買促進について更に改善を図る必要がありました。一方、同社が日光エリアで展開する「NIKKO MaaSフリーパス」でも、各種販売促進施策をとおして既存顧客層を中心に一定の売上成果をあげているものの、オウンドメディアを活用した若年層向けの情報発信を強化する必要がありました。
こうした課題に対し、同社が新たに取り入れたのが「Kaname.ax®」による生活者のSNS上の発話をAIで解析し、カテゴリーエントリーポイント(CEPs)を可視化する「CEPsリスニング® 」です。感覚的に捉えていた顧客理解をデータで裏付け、そのインサイトをショート動画クリエイティブに落とし込むまでを一気通貫で実施した本取り組みを3℃1が担いました。観光事業推進部の吉田氏・番塲氏に、課題の背景から施策実施・成果、そして分析データが社内にもたらした変化について語っていただきました。
ーまず、ご担当されている業務内容と、部署としてのミッションについて教えてください。
吉田氏:
私たちは、観光事業推進部に所属しています。部署はインバウンド担当・国内観光地域づくり担当・オープンイノベーション担当の3つに分かれており、そのなかの国内観光地域づくりのチームで、番塲が「川越れとろトリップきっぷ」を、私が「NIKKO MaaSフリーパス」の販促をメインで担当しています。
部署全体のミッションは、鉄道・ホテル・商業施設などグループ企業を横断的に連携させ、観光事業収入を最大化することです。単に鉄道の乗降客数を増やすだけでなく、沿線地域の観光資源を掘り起こし、訪れた方がプライベートでもまた足を運びたくなるような「関係人口」の創出にも力を入れています。
日々追っているKPIは、デジタルきっぷ・フリーパスの月間購入枚数とCVRです。どちらの商品も購入に会員登録が必要な仕組みのため、会員登録完了数と購入導線上のボタン押下数を主な指標として管理しています。
東武鉄道株式会社 観光事業推進部 吉田氏
「NIKKO MaaSフリーパス」の販促をメインで担当。
ー販促施策において、これまでどのような取り組みをされてきましたか。また、その中で感じていた課題について教えてください。
番塲氏:
「川越れとろトリップきっぷ」では、Z世代を中心とした新規顧客の獲得を目指し、Instagramのアカウント運用や公式アンバサダーの起用によるUGC獲得を軸に取り組んできました。地元川越の老舗飴屋さんとコラボしたお菓子をデジタルきっぷ利用者に配布したり、加盟店舗にぬいぐるみと写真が撮れるフォトスポットを設置したりと、話題性や拡散を狙った施策も実施しました。
ただ、これらは想定していたほどのUGC創出や購入促進には至りませんでした。SNSでデジタルきっぷの名称を検索しても、他社の乗車券類と比べて投稿数や口コミ数が少ない。アンバサダーさんの投稿以外の自然発生的なUGCがあまり生まれておらず、デジタルきっぷのお得さやメリットが十分に伝わっていないと感じていました。
吉田氏:
「NIKKO MaaSフリーパス」は、オンライン広告やキュレーションサイト等との販促活動をとおして、既存顧客層を中心に一定の売上成果は得られていました。ただ、SNSなどのオウンドメディアを活用した情報発信やショート動画の制作にはあまり取り組めておらず、特に若年層への認知拡大や販売促進にはまだまだ成長の余地が大きいと感じていました。
東武鉄道株式会社 観光事業推進部 番塲氏
「川越れとろトリップきっぷ」の販促をメインで担当。
ーそうした課題を踏まえて、生活者の声の収集・活用に着目したきっかけを教えてください。
番塲氏:
アライドアーキテクツさんのサービスであるUGC掲載サービス・Letroを利用していたことがきっかけです。Letroを通じて公式アンバサダーの方の投稿を「川越れとろトリップきっぷ」の公式サイトに掲載する取り組みを進める中で、消費者が商品を購入する際のタッチポイントに着目したCEPsリスニング®というものを知り、お話を伺ったことが依頼のきっかけとなりました。
吉田氏:
そもそもCEPsについても、ご提案いただいて初めて知りました。これまで、アンケートは行っていましたが、企業側が聞きたいことに偏りがちで、他社との比較もなかなかできないというのが課題としてありました。一方で、SNSで会話される内容は極めて現実的でバイアスがない。そういう意味で、今まで見えていなかったものが見えてくるという印象でした。
実際に分析結果を見て特に印象的だったのは、川越・日光それぞれで競合となる観光地との比較データです。他社との比較はアンケートからはなかなか見えてこなかった部分で、強みと弱みがより具体的に可視化されたことで、施策の方針を定めやすくなりました。
また、観光地としてのイメージは私たちの認識とユーザーの認識でおおむね一致していることが確認できた一方で、「川越れとろトリップきっぷ」というワードでのSNS投稿がまだ非常に少ないこと、「NIKKO MaaSフリーパス」については若年層のデータが取りづらいということも、客観的にわかりました。感覚的にそうだろうと思っていたことが明確になり、部内での施策説明や上司への報告の場でも根拠として活用できる内容になったと感じています。
川越エリアのCEPs分析結果。「需要が起こる時・きっかけ」
=CEPsを軸に、ユーザー主語の体験価値とブランド主語の機能的価値を整理した図。
ーCEPsリスニング® をもとに、実際に3℃1が制作したクリエイティブへの反応や、施策を通じて得られた成果について教えてください。
番塲氏:
特に反響が大きかったのが、川越れとろトリップきっぷのタイパ・コスパを訴求したショート動画です。交通費が割引になるだけでなくランチやお土産も付いてくるというお得さを、実際に川越を巡る体験の中で自然に伝える内容で、これまでのInstagram投稿と比べて保存数が2倍近く伸びました。広告を配信している投稿と比較しても上回る数字で、ユーザーの皆さんに刺さったと感じています。
また、川越といえば食べ歩きというイメージが強い中で、神社への参拝やうなぎといった多彩な楽しみ方も自然に盛り込めたことで、従来の食べ歩き以外の川越の魅力も訴求できたと感じています。
ショート動画に「川越ってそんなに近いんだ」というコメントがついたことも印象的でした。私たち担当者からすると川越は身近な場所ですが、ユーザーにとっては都心から遠いイメージがあった。届けたい訴求がちゃんと届いたひとつの例として、担当内でも気づきの多いコメントでした。
CEPsリスニング®をもとに3℃1が制作した、「川越れとろトリップきっぷ」のタイパ・コスパ訴求ショート動画。冒頭の映えるビジュアルと続きが気になるテロップで引きつけながら、実際の川越体験の流れの中で切符のお得さと利便性を自然に伝える。
吉田氏:
「NIKKO MaaSフリーパス」では、インフルエンサーの方にご参加いただいた施策で非常に高いインプレッションを獲得できました。日光のお出かけ情報を発信する東武鉄道公式アカウント「@tobu_nikko_trip」では、これまでUGCを中心に運用してきたため、自社でショート動画を1から企画・制作するのは初めての試みでしたが、「NIKKO MaaSフリーパス」というデジタルきっぷの内容をショート動画1本で把握できるという点が部内でも高く評価されました。有名インフルエンサーを起用した発信を通して、若年層への認知へも貢献していることを確認しており、一定の手応えを感じています。
東武ワールドスクウェアから温泉・カフェ・お弁当まで、NIKKO MaaSフリーパスひとつでお得にスマートに楽しめる鬼怒川エリアの魅力を、実際の体験の流れで伝えるショート動画。
ー今回の取り組みを経て、今後のマーケティング展開や3℃1への期待についてお聞かせください。
番塲氏:
今回の取り組みを通じて、デジタルきっぷのお得さや利便性を前面に打ち出すことがユーザーへの訴求として有効だという気づきを得られました。今後は「川越に行くならこのデジタルきっぷ」と自然に想起していただけるよう、引き続きその軸でのプロモーションを強化していきたいと思っています。
また、分析結果を参考に、ユーザーの声と向き合うことで、商品自体をより使いやすく、伝わりやすいものにしていくことにも繋げていきたいと考えています。
吉田氏:
分析結果は、今後の施策を考えるうえでの根拠として継続的に活用していきたいと思っています。認知施策でも獲得施策でも、どんな施策を考えるにあたっても参考にできる内容です。データをもとに「いま打つべきアプローチは何か」を考えられるようになったことは、大きな変化だと感じています。
3℃1さんへの期待としては、分析からクリエイティブ、配信までを一気通貫で対応いただける点が強みだと感じています。調査結果の理解がそのままクリエイティブに反映されるため、コミュニケーションロスが少なく、取り組みやすい。今後も他の分野での成功事例なども共有いただきながら、プロモーション施策を一緒に考えていきたいと思っています。
今回の取り組みを通じて改めて実感したのは、旅行商品においては誰に届けるかというターゲット設定はもちろん、旅行を検討しているタイミングでこのデジタルきっぷを思い出してもらえるかという「想起」の設計が非常に重要だということです。その視点を再認識できたことが、今回の取り組みの一番の収穫だったと感じています。
「旅行を考えた瞬間に、この切符を思い出してもらえるか。
それが一番重要だと実感しました」と語る吉田氏(左)・番塲氏(右)。
アライドアーキテクツでは、この課題を解決するために、生活者の声を起点としたクリエイティブ設計支援を展開する専門チーム「3℃1(サンドイッチ)」を発足しました。
「3℃1」は、企業と生活者の間にデータ・インサイト・クリエイティブという3つの温度を"サンドイッチ"することで、「おいしい関係」を創るチームです。データプラットフォーム「Kaname.ax®」から得られたインサイトを、生活者が"目に留め、共感し、行動へ移す"クリエイティブへと橋渡しします。
マーケティングコミュニケーション設計、生活者の声の分析、クリエイティブ設計、実行支援まで一気通貫で支援。データに基づくロジックと、感性に響く表現を往復させながら、見られるだけでなく、選ばれ、購買につながるクリエイティブを創出します。
ぜひ、クリエイティブチーム「3℃1」へお気軽にお問い合わせください。