Kaname.ax 導入事例

想定を覆す生活者インサイトで新たな飲用シーンを開拓 ~CEPsリスニングで通常投稿の50倍再生を記録。バスカーのInstagramリール動画施策とは?~

作成者: Kaname編集部|2025.11.17

株式会社ウィスク・イーが輸入代理店を務めるアイリッシュウイスキーブランド「バスカー」は、2016年に創業し2021年に日本上陸した比較的新しいブランドです。同社はこれまで、従来型のマーケティング活動を中心に展開してきましたが、より幅広い層への訴求と売上拡大を目指し、Webマーケティング施策にも本格的に取り組み始めたものの、SNSでの成果が思うように出ていない状況が続いていました。

そこで、あらためて生活者の理解を深めるため、「Kaname.ax」のCEPsリスニングを導入。その結果から見い出した新たな切り口でのInstagramリール動画を制作したところ、通常投稿の50倍再生を記録。

今回は、株式会社ウィスク・イーでSNSマーケティングを担当されている福島様に、CEPsリスニング導入の背景から具体的な成果、今後の展望についてお話を伺いました。

株式会社ウィスク・イー マーケティングデパートメント ソーシャルメディア担当の福島 晶子様

ブランドイメージと現実のギャップを埋める「バスカー」の挑戦

ーバスカーの特徴とターゲット顧客層を教えてください。

福島氏:
バスカーは2016年に創業し、2021年に日本に上陸した比較的新しいアイリッシュウイスキーブランドです。バーボン樽、シェリー樽、マルサラワイン樽の3種類を使用することで、華やかなフルーツアロマが特徴となっています。

ブランド名「バスカー」は、「大道芸人」「ストリートアーティスト」を意味していて、自由で情熱的な生き方を応援するブランドメッセージが込められています。斬新なボトルデザインも特徴の一つですね。

ターゲットは、20~30代の音楽やカルチャーイベントに興味のある男女と、30~50代の男性を想定しています。バスカーは飲食店を中心に注目されており、取り扱いも増えています。アイリッシュウイスキー市場には競合ブランドはいくつもありますが、バスカーはさまざまな取り組みが奏功し、売上が大きく伸び、カテゴリー全体の成長を牽引する存在となりました。

バスカーはブレンドの他、シングルモルト、シングルポットスチル、シングルグレーンも展開している

ーマーケティング活動での課題はどのようなものがありましたか?

福島氏:
当社では、ウイスキー、ジン、ラム、リキュール、ビールなど、複数の洋酒ブランドを取り扱っています。それぞれブランドメッセージが異なるため、SNS上で発信するコンテンツにもブランドごとの向き・不向きがありました。加えて、運用は基本的に私ひとりで行っていたため、生活者がどのようなシーンでバスカーを楽しんでいるのかといった具体的なインサイトを十分に収集できず、これも大きな課題となっていました。

同社では、バスカーファンを集めてのイベントも定期的に開催している

生活者の「リアルな声」を知るためのCEPsリスニング導入

ー「Kaname.ax」のCEPsリスニングを導入した背景を教えてください。

福島氏:
以前からアライドアーキテクツさんにはXのインスタントウィンキャンペーン実施の支援をいただいていたのですが、今年度のバスカーの認知施策を検討する中で、「『訴求軸はどこなのか』『実際にどんな風に語られているのか』を明確にしたい」という相談をしていたところ、その解決策として「Kaname.ax」を活用したCEPsリスニングについて提案をいただきました。

これまでも顧客の声を収集するツールは導入していましたが、分析には至っていませんでした。そのなかで、「Kaname.ax」では顧客の声をファクトフルに分析できるというご提案をいただき、何か私たちが気づいていない生活者の傾向が見つかるかもしれない、と期待が持てたため、お願いすることにいたしました。

特に、バスカーのようなブランドストーリーが強いブランドの場合、マーケティング側の思い込みと実際の生活者行動にギャップが生じやすいと感じていたので、客観的なデータで検証したいという思いもありました。

ー分析結果はいかがでしたか?

福島氏:
結果は本当に意外でした。私たちがこれまで想定していた飲用シーンと実際の傾向に大きな違いがあることが判明したんです。

例えば、これまではハイボールを前面に打ち出したマーケティングを行っていましたが、生活者はバスカーをハイボールとして飲んでいても、「ハイボール」という言葉をあえて使っていないケースが多く、バスカーとハイボールが結びついていないことが分かりました。この点は、訴求の方向性を見直す大きなきっかけになりました。

また、パーティやBBQ、キャンプといったイベントでの飲用シーンも想定より少なかったです。実際に多かったのは、「フレーバーを楽しむ」「週末自宅で晩酌を楽しむ」「1日の終わりにストレートで仕事の疲れを癒す」といった傾向でした。

特に『一人でゆっくり飲む』というシーンは想定外で、新しい可能性を感じました。これまでのアーティスティックでエネルギッシュなブランドイメージに加えて、リラックスして味わいを楽しむという新たな楽しみ方が発見できたことは大きな収穫でした。

アライドアーキテクツが実施したCEPsリスニングの結果

ー社内での反応はいかがでしたか?

福島氏:
私だけでなく、他の社員も同様の印象でした。メーカー側の担当者もフレーバーを楽しむ傾向が強いことにとても驚いていました。

反発は全くなく、むしろ「今知れてよかった」という反応でした。これまでの想定が間違っていたというよりも、新たな可能性を発見できたという前向きな捉え方をしています。社内でも新しいアプローチへの期待があり、新しい訴求軸を使った施策の実施にも前向きに取り組めました。

新たな切り口での動画制作が普段反応しない層にもリーチ

ー分析結果を踏まえて、どのような施策を実施されましたか?

福島氏:
CEPsリスニングの結果を踏まえ、「週末自宅で晩酌を楽しむ」「様々なフレーバーを楽しむ」の2軸でInstagramリール動画を構成しました。

制作プロセスとしては、まず分析結果をもとにコンセプトを練り直し、従来のパーティーやイベントでの飲用シーンではなく、自宅でのリラックスした飲用体験を中心に据えました。動画では、『帰宅したら夫がバーテンダーをやっていた』というインパクトのある設定で、家庭でも楽しめるバスカーの魅力を紹介するという構成にしました。

今までのブランドイメージとは異なる新しい見せ方で、社内でも好評でした。従来のアーティスティックなイメージとは異なる、一般生活者にも受け入れやすい形で商品の魅力を表現することで、新しいターゲット層へのアプローチを図りました。

「帰宅したら夫がバーテンダーをやっていた」という設定の実際のリール投稿

ー動画に対する反応はいかがでしたか?

福島氏:
結果は想定以上でした。投稿から1ヶ月で、通常投稿と比較して約50倍の再生回数を達成し、「トロピカルな味が気になる」「飲んでみたい」「今度チャレンジしてみたい」といったコメントが多数寄せられました。

特に印象的だったのは、普段反応がない層からの反応があったことです。従来のターゲット層とは異なる、ウイスキー初心者や女性からのポジティブなコメントも多く、新しいターゲット層にリーチできていることを実感しました。

エンゲージメント率も従来の投稿と比較して3倍以上向上し、コメント数も大幅に増加しました。これまでコメントがほとんどつかなかった投稿に多くの反響をいただけたことで、新しいアプローチの可能性を強く感じています。

普段反応がない層からのポジティブな反応が得られた

メーカー側のイメージと日本市場とのギャップから得られたもの

ー今回の施策から得られた学びはありますか?

福島氏:
動画制作の面では、社内では新しいものをやってみたいという気持ちはあったものの、やり方が分からず、リソースも限られていました。今までは、蒸溜所関係者のインタビュー動画や、メーカーが制作した動画に日本語キャプションを付けて公開するのが中心で、メーカーが設定したブランドメッセージをそのまま発信していました。

アイルランドでの飲まれ方がそのまま日本にも浸透しているだろう、という前提がありました。ただ、実際の分析結果は意外なもので、メーカー側のブランドイメージをそのまま日本市場に適用するのは難しいと改めて実感しました。

今回アライドアーキテクツさんの支援で、初めて日本の生活者に向けた動画制作ができ、やりたかったけれどできなかったことが実現できました。日本市場に合うコンテンツ制作の重要性を改めて感じています。

「日本に合うコンテンツ制作の重要性を感じた」と語る福島氏

「文化として定着する」ブランドを目指して

ー今後のバスカーのマーケティング活動の展望はいかがでしょうか?

福島氏:
アイリッシュウイスキーの可能性を広げ、市場を盛り上げていく存在でありたいと考えています。一時の流行ではなく、ちゃんとバスカーが定着するようなマーケティング活動をしていけたらと考えています。

今回のCEPsリスニングを通じて、私たちが想定していなかった生活者の楽しみ方があることが分かりました。海外でのブランドイメージをそのまま日本に当てはめることの難しさも実感しましたし、この発見を活かして日本の生活者に合ったアプローチを続けていきたいです。

ーアライドアーキテクツへ期待することをお聞かせください。

福島氏:
3年くらいのお付き合いになりますが、毎回私たちの課題からヒアリングしてくださり、課題解決に向けた最善の策をいつもご提案していただいています。社内からも「今回のアライドさんのキャンペーンよかったね」などという評価を毎回いただいており、信頼してこれからもご一緒できる会社だと思っています。

ここまで親身になって一緒に考えてくださる会社は貴重ですので、今後も継続的にお付き合いをお願いしたいと思っております。