「三ツ矢サイダー」「ウィルキンソン」「カルピス®」などの人気ブランドを展開するアサヒ飲料株式会社。同社では、これからの需要の中心となるZ世代へのアプローチが課題となっていました。
そこで同社が取り組んだのが、VOC(顧客の声)データ分析プラットフォーム「Kaname.ax®」を活用したSNS運用。分析結果をもとに制作したショート動画「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」は400万回再生のバズを記録。さらに、このバズ投稿を受けて、数時間後には店頭POPの制作が決定し、営業部門の商談ツールとしても活用されることになりました。
今回は、アサヒ飲料株式会社 マーケティング本部 プロモーション戦略部 戦略企画グループ(当時)の角田和哉氏に、VOCデータの分析を踏まえて戦略的に実施したSNS投稿から、購買につながる可能性を見い出したこの一連の取り組みについて詳細をお伺いしました。
ーアサヒ飲料のSNSマーケティングにおける組織体制やミッションについて教えてください。
角田氏:
私たちが所属しているプロモーション戦略部は、ブランドごとのプロモーションを企画・実行するグループと、テレビやSNSといったメディアを管理・運用するグループに分かれています。オンライン・オフライン問わず、プロモーションに関わる全ての領域をカバーしているのが特徴です。
SNSについては、ブランドごとに分けず、アサヒ飲料として統合されたアカウントを運用しており、三ツ矢サイダー、ワンダ、十六茶、ウィルキンソンなど、複数ブランドに関する情報を横断的に発信しています。
プロモーション戦略部のミッションは、SNSを通してお客様と接点を持ち、商品の認知・好意度向上を図りながら、ファンを増やしていくことです。特に、これからの需要の中心となるZ世代へのアプローチは急務の課題でした。購買に直接結びつけられれば理想的ですが、SNSの役割としては、まずお客様にブランドとの接点を持っていただく、その上層部分を担っていると考えています。
ーTikTok運用を始められた背景と、当時抱えていた課題について教えてください。
角田氏:
アサヒ飲料では、X(旧Twitter)やInstagram、LINE、メールマガジンといった複数のオウンドメディアを運用しており、実績も積み重ねていました。しかし、これからの需要の中心となるZ世代へのアプローチという点で、大きな課題を抱えていました。
既存のメディアでも若年層は一定数リーチできるのですが、限られた投資で効率的にターゲティングしようとすると、どうしても幅広い年齢層に配信されてしまうため、ピンポイントでのアプローチが難しいといった課題感がありました。そこで、Z世代が多く利用しているTikTokに注目したのです。
また、TikTokを始めるなら「TikTokでしかできないこと」をしっかり実現したいと考えていました。単にXやInstagramと同じようなやり方では、TikTokを始める意味がない。そのため、TikTokに特化した知見を持つプロ集団と取り組んだ方が良いのではないかという観点でパートナー企業を探し始めました。そんななか、アライドアーキテクツさんは担当の方が自身のアカウントでも投稿をされている経験をお持ちで、個人の知見と企業運用、両方の視点から考えられるのは非常に貴重だと感じ、これが決め手となりました。
アサヒ飲料株式会社 マーケティング本部 プロモーション戦略部 戦略企画グループ(当時)の角田和哉氏
ー今回の動画はどのような経緯で作成されたのでしょうか?
角田氏:
アライドアーキテクツさんにはTikTokアカウントの立ち上げから支援いただき、一緒にバズ投稿も多数生み出していたのですが、そんな中でより戦略的なアプローチとして、データプラットフォーム「Kaname.ax®」を使ったCEPs(カテゴリーエントリーポイント)分析を実施していただきました。
具体的には、「Kaname.ax®」を使って三ツ矢サイダーと競合他社のSNS投稿データの収集による、各ブランドのCEPsの分析です。
その結果を見た時に、三ツ矢サイダーでは「アレンジ用途」というCEPsが数値として明確に突出していることが分かりました。他社と比較しても明らかに上位にランクインしていて、これを見た瞬間に「腑に落ちた」というのが第一印象でした。
というのも、これまでもSNSの投稿で「フルーツポンチ作ってくれているな」「お菓子と楽しんでくれているな」「アイスと組み合わせている投稿があるな」といったことは定性的に把握していました。でも、あくまで定性で見ているだけだったんです。
それが今回、定量的な数値で示していただけたのは大きな価値でした。三ツ矢サイダーは、他の炭酸飲料とは異なり「いい意味で邪魔しない味」で、何にでも合うというカスタマイズ性の高さが、こうしたデータで裏付けられたことで、そこに強みをしっかり見出していけると確信できました。
さらに社内でマーケティング施策を提案する際も、定量データがあると説得力が全然違います。客観的な視点が大事で、「1ユーザーだけの反応なんじゃないの?」で終わってしまわず、根拠として活用できるのがありがたいと思いました。
ー「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」の企画提案を受けた時はいかがでしたか?
角田氏:
以前から、マーケティング施策を実施するうえで顧客との接点をどう作っていくか、どうやったらその接点がもっと効果的に形成できるかということは、常に頭の中で考えていました。CEPs(カテゴリーエントリーポイント)の概念も知識としてはあったのですが、正直「どう使っていいか分からない」状態で、業務レベルまでは落とし込めていませんでした。
今回、そのような状況下で、「Kaname.ax®」の分析により見出せた自社に優位性のあるCEPs「アレンジ用途」を用いて、「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」動画を企画提案いただいた際は、二つ返事で「やりましょう」とお返事させていただきました。
400万回再生のバズを生んだ実際の動画。
三ツ矢サイダーとフルーツをジッパー付きの保存袋に入れて凍らせ、保冷剤としてお弁当と一緒に持参。食べる頃には溶けてぷるぷるのゼリーに。
理由は至ってシンプルで、「アレンジ用途」のCEPsと、TikTokでZ世代のトレンドである「お弁当文脈」、そして「食べられる保冷剤」というライフハック要素が巧みに掛け合わされていたからです。単なるアレンジレシピではなく、TikTokで受けの良いライフハック系の要素も盛り込まれ、さらにお母さんと娘のストーリー性まで含まれている。複数の要素がうまく組み合わされた企画だったので、TikTokにふさわしい投稿だと直感しました。
加えて、アライドアーキテクツさんからは、こうしたライフハック系アプローチがZ世代に響きやすいというデータによる裏付けも含めて提案いただいていたことで、より確信を持つことができ、こういう組み立て方なら投稿の勝ち筋が体系化できると実感しました。
アライドアーキテクツでは、データ分析の結果をもとに、施策反応を得るための「コミュニケーションエントリーポイント」という「思わず反応してしまうこと」を、クリエイティブへブリッジ(橋渡し)させることを体系化している
今回の三ツ矢サイダーの例
ー動画のバズによってどのような反響がありましたか?
角田氏:
「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」の投稿は、TikTok、Instagram計400万回再生を超える大きなバズを生み出しました。再生回数もさることながら、特に印象的だったのはユーザーからのコメントの質の高さです。
単に「面白い」「すごい」といった反応だけでなく、「買ってやってみたい」「これは試してみよう」「今度お弁当に入れてみる」といった、明らかに購買意欲や行動意欲の高いコメントが多数寄せられました。これは、消費者が様々な場面で三ツ矢サイダーを思い出し、選択肢として想起する確率を高める「メンタルアベイラビリティ」の向上に大きく貢献していると実感できる成果でした。
従来のSNS投稿では、エンゲージメントは高くても「見て楽しむ」だけで終わってしまうことが多い中で、今回は「実際にやってみたい」「商品を買いたい」という次のアクションに繋がる反応が得られたのは大きな成果でした。データ分析に基づいて企画した投稿だからこそ、単なるバズではなく、ブランドと顧客の関係性を深める質の高いコミュニケーションが実現できたと思います。
ー社内ではどのような動きに発展していったのでしょうか?
角田氏:
投稿して間もなく「再生回数が伸びています!」という報告をアライドアーキテクツさんからいただくのですが、進捗を部内で共有したところ、上長から売場でこの情報使えないかと提案してくれました。
「せっかく今これがバズっていて、旬なネタを旬なうちに有効活用することができないか」「空中戦で動いているものを、現場・売り場で使えるようにしよう」という話になり、わずか数時間で「店頭POP制作」というリアルな販売促進施策への展開が決まりました。
動画のバズを受けて急遽制作した店頭POP
ー営業現場からはどのような反応がありましたか?
角田氏:
バズっていることを営業に話したところ、それを売場で訴求できるか、POPとか作れないか、との声が上がりました。定番商品は店頭で目を引く情報や、バイヤーとの商談フックを常に求めており、SNSでバズっているということが商談材料になるかもしれないと興味を持ってくれました。
本来、店頭と結びつきにくいSNS施策が、POPという制作物を通してSNS部門と営業部門の連携ツールになる可能性を見出した。つまり、「想起のされやすさ(メンタルアベイラビリティ)」の向上だけでなく、リアル施策への展開で「商品の手に取られやすさ(フィジカルアベイラビリティ)」の寄与にまで繋がったということです。この投稿で、SNSが購買に繋がる可能性を社内で証明できたと思っています。
ーアライドアーキテクツとの取り組みについて、率直な感想をお聞かせください。
角田氏:
この1年半を振り返ると、好反応を獲得する投稿を断続的に行えるのは、アライドアーキテクツさんの専門性があってこそだと思っています。
特に「Kaname.ax®」による分析は、今まで定性的にしか把握できなかった顧客インサイトを定量化し、それを実際の企画に落とし込むという、まさに理想的な流れを作っていただけていると感じています。データに基づいた投稿内容の提案は社内でも説明性を高めることができましたし、今回のように営業部門を巻き込むような展開にも繋げることができました。
戦略的なSNS運用により勝ち筋を増やしていきたいと語る角田氏
ーありがとうございます。最後に今回の取り組みの振り返りと、今後の展望についてお聞かせください。
角田氏:
今回の取り組みを振り返ると、データ分析を起点とした戦略的なSNS運用の威力を改めて実感しました。アライドアーキテクツさんとの取り組みでは、三ツ矢サイダーだけでなく、他のブランドでもバズ投稿を複数生み出すことができていて、横断的に様々なブランドをしっかり発信することで、TikTokユーザーにアプローチし続けられています。TikTokならではの特性を最大限活かしながら、狙ったターゲットに確実にアプローチできているのは大きな手応えです。
そして何より大切な気づきは、データを起点にすることでSNSが単なる認知向上の域を超え、実際の購買行動や営業活動まで結びつけられたということでした。今後は、「Kaname.ax®」の分析を他のブランドでも展開し、各ブランドの特性を客観的に把握することで、SNSを戦略的に運用し、さらに多くの勝ち筋を見つけていきたいと考えています。
マーケティング本部 プロモーション戦略部の皆さんとアライドアーキテクツ関係者