導入事例|グローバル事業 アライドアーキテクツ株式会社

美容機器ブランド「ヤーマン」が確信する 中国市場での“段階的な”KOC起点の拡大戦略とは?

作成者: グローバル事業編集部|Nov 17, 2025 5:37:43 AM

ヤーマン株式会社は、1978年の創業以来、美容機器のパイオニアとして日本国内で確固たる地位を築いてきました。2015年より、ヤーマンの美容機器は中国市場に参入し、その高い技術力と品質の高さから多くの中国のお客様に支持され、広く知られる存在となっています。近年では、「Hakase Beaute(ハカセボーテ)」や「mysé(ミーゼ)」などの傘下ブランドも中国市場で積極的に展開を進めています。

同社が中国市場向けの戦略で重視しているのが、在日中国人コミュニティを起点とした認知拡大です。中国本土での大規模なマーケティング投資の前に、まず日本在住の中国人の方々の口コミを通じて信頼を獲得し、つぎに訪日中国人観光客への訴求を経て、最終的に中国本土での認知・販売拡大につなげるという段階的なアプローチを実践しています。

今回は、ヤーマン株式会社の中国市場における課題と戦略、そして在日中国人KOC*を活用したマーケティング施策の成果について、盛(セイ)様と張(チョウ)様にお話を伺いました。

*KOC:Key Opinion Consumer(信頼性の高い口コミや体験をSNSで発信する一般生活者)

サマリー

背景



  • ヤーマンは傘下ブランドの「Hakase Beaute(ハカセボーテ)」「mysé(ミーゼ)」において中国市場でのさらなる認知・売上拡大に向け、信頼性の高い口コミを起点にブランド理解を広げる必要があった。

内容


  • 自然な口コミによる信頼獲得を重視し、段階的に中国在住者に認知を広げるアプローチを採用。
  • 在日中国人のKOCを旗艦店に40名招き、実際に商品を体験してもらう施策を実施。

成果



  • KOCによるREDへの口コミ投稿は多数上位表示され、想定以上のエンゲージメントを獲得。
  • REDにおけるブランド関連キーワードの検索指数は施策前の平均と比較し260%に増加。
  • 中国市場向けのEC「Tmall」でもエンゲージメントが向上し、ブランド理解と購買促進に貢献。
  • 段階的アプローチの有効性が確認され、リピート施策やKOL施策など次の展開にもつながる結果となった。

中国市場での展開における課題

ーお二人の業務内容、ミッションについて教えてください。

盛氏:
私たちの部署は個人営業を担当しており、対象商品は「Hakase Beaute(ハカセボーテ)」と「mysé(ミーゼ)」です。新規スキンケアブランドの中国市場開拓全般を手がけています。具体的には、ブランド戦略立案、商品企画・宣伝、販売まで、全般的に業務を担当しています。

張氏:
私は主にハカセボーテとミーゼのマーケティングを担当しており、中国国内における認知度を広げ、販売拡大につなげるというミッションを担っています。

KPIはブランドの売上で、ハカセボーテは売上拡大のフェーズ、ミーゼは認知拡大のフェーズにあります。

ー中国市場でのマーケティングにおける課題を教えてください。

張氏:
中国は市場が非常に大きく、お客様の認知を獲得するのが本当に難しいです。投資をしても何の成果も得られずに終わってしまうこともあります。

日本だとオフライン販売がメインのため、お客様が来店して、店頭で商品を手に取ることで良さを実感してもらうことができます。しかし、中国市場での主な販売チャネルはECであり、実際に商品を手に取ってもらえないため、どのように良さを知っていただくか、そこが最も苦戦しているポイントです。

ヤーマン株式会社 営業本部 国際代理事業部 国際第二事業部 張氏(左)盛氏(右)

在日中国人KOCを起点に信頼獲得を進める理由

ー在日中国人のKOCを複数名実際に店舗に招き、商品を体験していただく施策を実施しましたが、在日中国人を起点にした背景を教えてください。

盛氏:
中国市場を中心に展開してきたハカセボーテは、2022年にヤーマン傘下のブランドとして日本で誕生しました。しかし、日本国内ではあまり知られていないという状況でした。日本発のブランドなのに日本人が知らないというのは、中国市場ではブランドの信頼性において大きなマイナスです。

中国人は、広告やKOL*よりも、知り合いや友人の口コミをより信頼する傾向があります。だからこそ、まずは日本本土で在日中国人のコミュニティを中心にブランドの認知度を広げれば、中国本土でよりスムーズに展開できるのではないかと考えました。

*KOL:Key Opinion Leader(専門分野や特定ジャンルで強い影響力を持つ発信者・インフルエンサー)

張氏:
日本に住んでいる中国人はたくさんいます。実際、中国人が日本製品を購入する際は、必ずと言っていいほど日本に住んでいる友人に「これ、日本で本当に人気なの?日本人は本当に使ってるの?」と確認します。私も日本に住んでいるので、何度も聞かれました。

また、ミーゼは日本国内ではある程度知名度がありますが、中国市場への参入は昨年からで、まだまだ新規参入のブランドです。今回のKOC来店施策によって、「日本で実際に人気があるブランド」という認識を、中国のお客様に伝えていきたいと思っています。

 

ーKOLではなく、KOCを選ばれた理由を教えてください。

盛氏:
1名のKOLより、数十名のKOCの方が影響力があると考えました。

ヤーマン銀座旗艦店は2023年に開店し、ヤーマンの最新技術やブランドの世界観を紹介し、すべての商品を体験いただける店舗として運営しています。KOCの方々が実際に商品を体験して、率直な感想をわかりやすく伝える、それが一番良いプロモーションになると思ったのです。

今回、アライドアーキテクツ様が抱える在日中国人コミュニティ「BoJapan*」からKOCを40名起用しましたが、やはり広告感がないのがよかったです。もしKOL1名の起用であれば「これは広告だな」と思われ、今回の目的だった信頼構築にはつながりにくかったかもしれません。

*BoJapan:弊社が運営する日本有数の在日中国人コミュニティ

結果は想定以上のエンゲージメントと認知拡大

ーKOC来店施策に期待していた結果と、実際の結果について教えてください。

盛氏:
結果は期待以上で、とても良い結果でした。KOCの方々に商品を体験していただく際に、店員が丁寧に商品の説明をしてくれたので、わかりやすく商品の魅力を伝えることができました。

中国のTmallパートナーからも、「KOCの発信力のおかげで、ECサイトのエンゲージメントがすごく良い」という評価をもらいました。「ヤーマン」というブランドへの認知度を確実に広げることができ、当初の目的である認知拡大を十分に達成できたと感じています。

 

張氏:
今回、もともと想定していなかった成果もありました。ハカセボーテもミーゼも、KOC投稿への「いいね」やコメントなどエンゲージメントは皆同じくらいと予想していましたが、素晴らしい結果を出してくれた方が複数名いて、これは想像以上でした。

また、RED(小紅書)でハカセボーテやミーゼを検索すると、上位に今回のKOCの投稿が多数表示されるようになったので、社内でも良い反応を得ています。

KOCによる投稿のうちエンゲージメントが高かったものの一つ

KOCによる投稿でRED検索指数は施策前の平均と比較し、約260%に増加

在日中国人コミュニティ「BoJapan」を活用した理由

ー弊社以外にも支援先を検討されていた中で、弊社を選んだ理由を教えてください。

盛氏:
まずは御社の事業内容を見て、今の私たちのマーケティング課題に合致していると思いました。また、御社は2005年の設立以来、たくさんの日本企業と連携してきた実績があり、信頼できると感じました。そして実際にやりとりする中で、対応スピードや予算面も弊社の意向に合っていると思いました。

 

ー弊社が運営する在日中国人コミュニティ「BoJapan」についてどのように感じましたか?

盛氏:
はじめは「BoJapan」を知りませんでしたが、御社にご紹介いただいて非常に魅力を感じました。流れとしては、御社の担当者に商品を体験していただき、その後「BoJapan」でKOCを募集する際に商品を紹介、KOCが実際に体験して口コミを投稿する。そして、在日中国人の中で話題化させ、最終的に在中中国人にアプローチする。この流れは望んでいた方向性と完全に一致していました。

 

ー実際にKOCの来店施策を実施し、当初お持ちだった仮説に変化はありましたか?

盛氏:
今回の施策によって、想定以上の効果を得ることができ、我々の方向性は正しかったと確信しました。

今後の新たな挑戦は、リピート促進

ー今後は「リピート」に焦点を当てた施策も検討されているとお聞きしましたが、どのような背景がありますか?

盛氏:
クリームなどの化粧品は、もちろん1回の使用でも効果を実感していただけますが、やはり継続的に使うことでより満足していただける商品です。ですから、1回の来店より、家で毎日使ってもらう方が、口コミとして価値があると考えています。

張氏:
当社の商品はニードル商品という特徴があります。中国の方はニードル系の化粧品を使う機会が少なく、使用時に感じるピリッとした刺激や、チクチクする使用感に慣れないという方が多くいらっしゃいます。そのため、継続して使用できないという方が多いのが課題です。

しかし、続けて使用していけば効果があるということを伝えたいです。中国ではECで購入した商品は7日以内であれば理由なしで返品できるので、最初の違和感だけで続けられないという方にもぜひ続けて欲しいと思い、リピーター向けの施策を始めました。

新規ブランドに適したTikTok、今後の展望

ーECチャネルの中で、最も好調なものは何ですか?

張氏:
TikTokですね。TikTokは新しいブランドに適しています。

Tmallは検索型の販売がメインなので、ある程度知られていないと検索してもらえず、新規ブランドなどまだ認知度が低いフェーズではなかなか販売につながりません。しかしTikTokだと、検索主導ではなく偶然動画を見たり、ライブコマースを見たりして商品を知ってもらい、その場で衝動的に購入するお客様が多く、新しいブランドには適しているチャネルです。

 

ー今後のマーケティング施策について、どのようにお考えですか?

張氏:
今はKOCプロモーションを中心に取り組んでいますが、今後は例えば日本でポップアップ店舗を開設するなど、オフラインプロモーションでも認知を広げていきたいと考えています。

KOCプロモーションを継続的に実施しつつ、KOLや有名タレントを起用した施策も、機会があれば挑戦したいです。昨年、タレント2名をREDで起用したところ実際に効果がありました。

また、今後はハカセボーテが「効果を得られるニードルコスメ」というイメージを獲得できるようプロモーションを展開していきたいと考えています。効果を実感していただき、より認知を広げていきたいです。

在日中国人KOCを起点とした施策は、段階的な中国市場攻略の第一歩として、確かな手応えを感じています。

まとめ

ヤーマン株式会社の事例から見えてきたのは、いきなり中国本土で大規模投資をするのではなく、在日中国人コミュニティを起点に、段階的に認知と信頼を獲得していくという戦略の有効性です。

今後、ハカセボーテとミーゼは、この確信を基にさらなる認知拡大とリピーター促進に取り組んでいきます。ヤーマン傘下のブランドとしては、中国市場でどのような成長を遂げるのか、引き続き注目です。